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60.それは、空のように(3)
手を伸ばした先にあったのは、……父からの、手紙--。
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わたしは、微かに震える指先で、なんとか開こうとして、開ききれずに、そのまま下に落として。カタカタと、指先が揺れる。……ここまでのものを見せつけられて、……もう、殆どわたしの中で確信になっているものは、……その、手紙を読みたくはないと、……そう、告げていた……から。
……それでも、わたしは、震える指先で、手紙を掴み、……端正な筆跡である、父の手紙を手に取ると、備えつけのアンティークな椅子に座り、アンティークな机にそっと手紙を載せて、一度、目を閉じ、深呼吸をしてから、手紙を開いた。
………一文字一文字、呑み込むように……、わたしは、この手紙が、初めての生身の父との会話に思えた。
……それは、きっと、父との初めての会話だった。
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