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57.動き出した歯車を止めたいのですか?それとも、
ふらっと、わたしは、立ち上がると、ホテルの部屋へと戻り、全ての荷物を纏めた。
もう数時間もすれば夜が明ける。
ここをチェックアウトして、行く場所をわたしはもう決めていたから。
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眼を閉じながら、ずっと話していたから、まるで、そこにわたしが、居たような気分になった。
わたしは、そっと、目を開ける。
そこには、不安げに見つめる、小さな顔。
ユキ。
わたしの愛しい子。
ユキが入れてくれた苦いコーヒーに口をつけて、じっと見つめた。
「……ここまで。聞いてくれてありがとう。ユキ。わたしは、やっと見つけた。……君には、君だけには、その意味が解るだろう?……ごめんね、そして、本当に、ありがとう。もう、わたしは、大丈夫だよ」
ユキは、大きな目にいっぱいに涙をためて、きゅっと口をつぐむと、顔を俯ける。
ぽた、ぽたっ、と、ユキの大粒の涙が、ユキの小さな白い手にいくつも零れ落ちて、ユキの黒いチュニックのスカートに小さな丸い滲みをいっぱいつくる。
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