52.(偽物の愛情)(8)
--わたしを……殺そうと、した……?
わたしは、真っ青になり、その場所にへたり込んだ。足ががくがく震えて、喉奥がけいれんをして、目の奥が痛いほどに熱くなる。自然に涙が、目じりからこぼれ、鼻筋をとおって、唇をつたい、ぽたぽたと、地面に落ちる。
父が、生きているはずなどなかった。わたしは、落ちる瞬間、そして、そのあとの惨状まで目に焼き付けている。あの炎の中、幸せそうにほほ笑んだあの顔を目に焼きつけている。
亡霊だろうが、なにか別の存在だろうが、……そんなものは、どうでもよかった。……それよりも、ショックだったのは、殺そうとされたのかもしれないという事実。
……わたしが、生きていることが赦せないのだろうか……認めたくなかったどうしても浮かぶ考えに、よくわからない混乱と不安が押し寄せてくる。
わたしが、愛情だと思いたかったものは、なにひとつ実体などなく、母も父もわたしを認識などしていなかった。それどころか、殺そうとされている。
その事実を見せつけられたようで、心が寒かった。
--それとも、あれは、わたしの深層心理がみせてしまった幻影なのだろうか。
ふっと、急に自分を保っていたなにかが壊れたような、外れたような、空虚な感覚になる。
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