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51.偽物(7)
父にしか見えない虚ろな目をした男性は、ふっと後ろを振り向くと、立ち入り禁止とロープを張られたずっと先にいて、そのまま、木の陰に消えてしまった。
ここが危ない道だからなのかもしれない。ホテルの配慮なのか、足元を照らすライトがずっと先までぼんやりとひかり、小道を歩けるようになっていた。立ち入り禁止の看板の辺りには、より明るい白っぽい明りになっている。
わたしは、混乱しながらも、追い立てられるように父がわたしを見ながら立ち尽くしていた場所まで行こうとして……ぎょっと、足をすくませた。
--そこには、暗い穴
風が、下側から吹き抜けるようだ。
気づかなければーーここに、……落ちていたーー。
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