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47.偽物(3)
煤でよごれた人形を拾い上げる。
それは、ひんやりと、冷たかった。
わたしは、なんとも言えない気持ちのままに、その、ブリキの玩具を見つめる。
……なにか、言いようのない、悲しみが、心の奥底から、湧き上がってくるような気がして、わたしは、自然に涙をつたわせて
肉親をすべて、同じような状況で失ってしまったわたしにとって、手の中の小さな重みは、身に染みるほどに大切な重みに思えた。
何故、ここにこんなものがあるのか、とか、
何故、こんなにも、この玩具は、ボロボロなのか、とか、
先ほどの空いたドアの先に誰もいないことや、触れられた氷のように冷たい感触も
全て、頭の中から消去して余りあるほどの、安心が、その優しい重みにはあった。
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