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42.切れた糸
……わたしは、仕事を辞めた。
ぷつり、と、わたしをここ【現実に】に留めていた、糸が切れてしまったようだった。
目的も、なにか、大事だったような気がする目標も、……なにもかも。
意味などないような気がしていた。
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家を失ったわたしは、父がよく使っていた近くの高級ホテルに閉じこもるように生活していた。
大きく世間に報道されたせいで、わたしには、逃げ場がそこ以外には見つけられなかった。わたしは、表面上のみ親しくしているような友人、知人はいたけれども、どの人も……今のわたしのことを気にかけてくれているような人は居ないように見えた。
チェックインする際に、わたしへどのような人が訪ねてきたとしても一切を取り次がないで欲しいと頼み、わたしは、ルームサービスで食事をとり、ホテルの部屋に閉じこもる。
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