41.吹雪の中の大規模火災
吹雪の中、大規模と言える今回の火災はーー
家は、父が所有する森の中に建てられており、傍に住宅は一件もない。
けれども、父の所有する森が全て消失するほどの火災は、大きな恐怖とショックを周りの住人に与え、
大きく報道もされた。
……後の捜査で、出火場所は、父の書斎だったことが解り、わたしが、居た倉庫からの距離から考えて、
わたしの犯行は無理だと判明したようで、……ただ、様々なことが……未だ、闇の中だ。
……すべては、燃えてしまった。
父は生命保険に入っており、わたしには、父が遺した多額の遺産も合わせて……考えたくもないほどの金額が遺された。
--そう、考えたくもない。
……たった独りの肉親が遺した多額の……そのような、ことなど……苦い気持ちが広がる。
父との思い出など……心に残る良い思い出など、あったかどうかと聞かれてもすぐに答えられないほどにないも同然だった。
……それでも、それであっても、わたしの、最後の肉親だったのだ。……父は。
--母が、もう、生きていないのならば、……わたしは、ほんとうの、ほんとうの独りになってしまった。
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幼い頃、……そう、母が、……母の箱庭が、燃え、母が……消えてしまったとき、
あまりにも、辛く、かなしく、その事実を受け止めきれなかったわたしが、幼い頃に願った、
その時の願いがーーふと、よみがえった。
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ーー【……代わりに、代わりに、かまいませんから、他、たりなかったら、わたしの、渡せるもの、すべてと引き換えに……おねがいします、わたしは…… …… たい おねがいします】
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--【わたしの全てを引き換えにして、構いませんから、……消してください わたしは、もう、みたくない わたしは、もう、知りたくない …… わたしは、もう、 ……わたしは、 やりなおしたい
【ーーお母さん、会いたいよ どうして、いなくなったのですか どうして、どうしてっ!】
白百合の香りとともに、その記憶が、ふわりと広がる