29.意味
ぱんっ、と弾けた……怒涛のように、流れ込んできた閉じ込めていただろう記憶の渦が、わたしの頭の中を埋め尽くしていく。
同時に苦い思いと、わたしの中の後悔は、わたしの顔を歪めさせ、その恥ずかしさにわたしは、赤面する。
わたしは、子供の頃受けた両親との関わりを引きずり、後に様々な後悔を生む人生を歩んだ。
父は、わたしを娘のように育てようとし、わたしの性別からわたしの存在を否定し、母は、父に完全に依存状態だったのか、精神的な病なのかわたしには……今でも解らないが、父に箱庭のような部屋に軟禁された状態で、……生涯を過ごした。
彼女とわたしは、会わせてもらうこともなく、わたしは、母という存在を知らない。
母が、当時、わたしをどのように思っていたのか、果たして、わたしを自らが産んだ息子だと認識していたのかどうかすら、怪しい。
わたしが、小学校の高学年になった頃、……箱庭のような母の部屋から出火し……、
……あの時、わたしは、虫の知らせ……を、聞いた
今でも、わたしは、それを、母の最期の言葉だと、かたくなに信じていた。
母は、一言、わたしに、
【ごめんね】
と、彼女の言葉で、届けたのだ