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21.黄泉わたり(10)
「多恵、さん?大丈夫、ですか……?」
立ち尽くし、ぼぅっと、空虚な目をしていただろうわたしを心配してくれたのか、わたしが、気づいた時には、ユキが、不安気な様子で、わたしの顔を覗き込む。いつも、穏やかで柔らかな笑みを浮かべているユキの小さな顔が、泣きそうにゆがんでいる。
至近距離に、ユキの黒く円らな瞳があり、わたしは、狼狽した。
慌てて、のけぞったわたしは、わたし自身の行動を後悔する。
ユキから、嫌がって離れたように傍目からは見えてしまっただろう。ユキがほんの少し傷ついた顔をした。
ユキが、わたしから距離を少し取るけれど、それでも、わたしを心配そうに見つめている。
わたしは、ユキの方を見ていられなくて、わたしが落ちた岩山を見つめた。
ずきずきと、頭が痛む。
あの岩山を見つめるのは、何故だか、嫌な気持ちがした。
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