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20.黄泉わたり(9)
ゆらゆら揺れる視界の端で、幼い頃のわたしが、孤独な目をしている。
泣くことも、叫ぶこともしない、ぽかりと空いた空洞のように開いた目を持つ子供。
子供は、なに、か、を心に決めたようで、
そっ、と、子供の宝物を、簡単なつくりのいかだに載せる。
あらゆるところがガタガタなそれ、は、子供の手で作りあげたものだろう。
ゆるり、と、いかだに宝物を載せると2、3度揺れたが、それでも、いかだは、動きだした。
するすると、子供の宝物が、泉を流れていく。
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……あれ、は、わたしだ。
……わたしは、あの時、なにかを引き換えに、宝物を流したのだっけ。
--なにを、引き換えにわたしは、願った、のだろうか。
……しらない、覚えていない。
……思い出せないーー
【……代わりに、代わりに、かまいませんから、他、たりなかったら、わたしの、渡せるもの、すべてと引き換えに……おねがいします、わたしは…… …… たい おねがいします】
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