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19.黄泉わたり(8)
黄泉……という言葉がある。
古事記には、黄泉國と、記されており、地下の泉→死者の住む世界への通ずる道とされていた。
多くの説があるが、それは、夢、だ、とも、夜迷いだとも。
……わたしは、何故、このような言葉が、今気になっているのだろうか?
ふっ、と、思う。
……わたしは、なにか、を、忘れているのではないか、ないだろうか?
燃え立つ、赤、が眼前に迫ってくるように思った。
瞬間、わたしは、目を閉じる。
--いやだ、と、思う。
……わたしは、まだ、浸っていたい。
ここ、に。
--なぜ?
……何故、でも、だ。
……わたしは、そうしたいから、そうしている。