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18.黄泉わたり(7)
ユキが心配気にわたしの手を両手で引き上げようとする。
けれど、わたしのほうが身体が大きいのだから、わたしは、ふっと笑って、彼女の手に重みが掛からないように気を付けて、立ち上がった。
よろよろと、情けなくも足元が揺れ、くらりと視界が少しだけ揺れたように思う。
ユキが、不安気にわたしの後頭部を小さな柔らかい手のひらでそっ、とさする。
わたしは、そんなユキをぼんやり見つめていた。
わたしは、落ちた時の状況を、今の今まで忘れていたように思う。
ユキが居る世界に、おとずれる回数が増えていくにつれて、わたしは、自分の足元が揺らいでいるような感覚に陥る。
わたしは、ユキの居るこの場所に、この場所を、わたしは、自分の足元の世界にしたいと心の奥底から思い始めていたのだと思う。
心が馴染んでいくような心地よさに、わたしは、やっと息をつける、と、ふっ、と思ってから、そのわたしの感覚を、わたしは、初めて、疑問に思った。