12.黄泉わたり(1)
ふー、っと、意識があかるいばしょへ、まるで、魂を引き上げられるようにもちあげられる。
視界がひろがり、しろくめをつぶして。
ふと、手のひらにぬくもりを感じた。あたたかいそれを、わたしは、そのおかげで引き上げられたのだと知る。
わたしが、目を開けると、わたしは、さまざまなものにがんじがらめにされていた。
目を開けたばかりとは思えぬほどにクリアな視界にとびこんできたのは
わたしの手をつかむ、母の顔だった。
……帰ってきたのか……
わたしは、がっかりしたような心地で、けれども、ものめずらし気に母がつかむわたしの手を目線だけ動かして見つめた。
目線をあげると、母は……やはり、どこか、ユキと面影がかさなる、と、まだ浮いたような思考の沈殿の中で思う。
口を開こうとして、点滴の管がさされ、固定された自らの腕と、人工呼吸器をはめられたわたしの状態に気づいた。
身体は、まるで貼りついたように動かない。
わたしが目を開いた様子を、母は、泣きはらした目で見つめる。
その様子は、いつかのユキの姿とかさなった。
「……ったーちゃんったーちゃん、よかった……、目を覚ましたのね、たーちゃんは、つい先ほど、心臓がとまって……っどこも痛いところはない_ああ、せんせいをよばなければっ、ひくっ」
母は、細い身体を折り曲げてわたしに被さるようにして泣く。
ナースコールを押し、わたしの手を離そうとはしない。