表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/89

12.黄泉わたり(1)

 ふー、っと、意識があかるいばしょへ、まるで、魂を引き上げられるようにもちあげられる。


 視界がひろがり、しろくめをつぶして。



 ふと、手のひらにぬくもりを感じた。あたたかいそれを、わたしは、そのおかげで引き上げられたのだと知る。


 わたしが、目を開けると、わたしは、さまざまなものにがんじがらめにされていた。


 目を開けたばかりとは思えぬほどにクリアな視界にとびこんできたのは


 わたしの手をつかむ、母の顔だった。


 ……帰ってきたのか……


 わたしは、がっかりしたような心地で、けれども、ものめずらし気に母がつかむわたしの手を目線だけ動かして見つめた。


 目線をあげると、母は……やはり、どこか、ユキと面影がかさなる、と、まだ浮いたような思考の沈殿の中で思う。


 口を開こうとして、点滴の管がさされ、固定された自らの腕と、人工呼吸器をはめられたわたしの状態に気づいた。


 身体は、まるで貼りついたように動かない。


 わたしが目を開いた様子を、母は、泣きはらした目で見つめる。


 その様子は、いつかのユキの姿とかさなった。


 「……ったーちゃんったーちゃん、よかった……、目を覚ましたのね、たーちゃんは、つい先ほど、心臓がとまって……っどこも痛いところはない_ああ、せんせいをよばなければっ、ひくっ」


 母は、細い身体を折り曲げてわたしに被さるようにして泣く。


 ナースコールを押し、わたしの手を離そうとはしない。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ