11/89
11.あきらめたもの?
――「……あきらめたものが、もし、あるのなら、それをまた見つけ直せば良いのだと思います」
わたしは、思わず、目を見開いて顔を上げた。
そこには、ユキの小さな顔がある。彼女はどこか、達観したかのような瞳でわたしと対峙している。
わたしは、急にわたし自身が、『はじめ』に落されたような錯覚をえて。
すーっと、世界が水にそまる。
わたしには、ユキの、ユキしかみえない。白く浮き上がるユキしかみえない。
わたしは、せなかから、おちていく。沈みこんでいく。
こぽこぽこぽこぽ……
わたしは、わたしは、みずのなかにおちて
――「……あきらめたものが、もし、あるのなら、それをまた見つけ直せば良いのだと思います」
わたしが、その最後にみたものは、ユキの達観したような、どこまでいっても黒の
すいこまれそうな、 のようなひとみだった。