3話
最初からチート能力もいいけど、ハードモードも好き
俺はゴブリンのような魔物に向かって片手剣を構え接近する。何度も妄想してきた動きをここでぶつける。夢にまで見た魔物との戦闘。
俺はレベルが少し高いおかげかある程度は思ったように体がついてきてくれる。
まずはおれが魔物に肉薄し袈裟斬り。木刀のせいか傷は思ったより浅いみたいだ。だがそれでも魔物はたじろぎその醜い顔を更にゆがめ醜い声を上げる。怯んでいる間にとどめをさすため片手剣を首へと振るう。またしても肉を断ち切ることはできなかったが大量の血を流し魔物はその場に崩れ落ちる。
「やるじゃねえかにいちゃん!」
声の主、おじさんのほうを見ると魔物に一生懸命に剣を振るう姿が見えた。幸いにもおじさんに怪我はなくでたらめに、力任せに片手剣を振り回まわしていた。
「おじさんもね」
その言葉を残し俺は残りの魔物へと視線を向け駆け出す。
魔物と接近する間に新しい片手剣を生み出す。今度生み出した片手剣は切っ先を少し重くしたものだ。木刀の攻撃力のなさを遠心力で補うのが目的だ。
新しく生み出した片手剣を上段に持ち上げ魔物めがけて一気に振り下ろす。やはり目的通り遠心力により少しだが攻撃力が上がっているようだ。さっきより魔物についた傷が深くなっている。
最初に入ってきたのが7匹、俺とおじさんが2ふきずつだか残りは3匹か。魔物にもおおきな攻撃主アダンはなく生えている小さな爪でひっかいてくるだけだ。予備動作が大きい分よけるのもたやすい。残りの3匹を型など関係なしに切りつけ早々にけちゃくをつける。
「にいちゃん!」
おじさんが俺を呼び、おじさんの方を向くとそこには鬼のような形相をして片手剣を大きく振りかぶり俺へと接近するおじさん。
「ひっ…!」
戸惑いなにも抵抗することができず、ついにおじさんの片手剣が振り下ろされた。俺はここで死ぬのか、状況もよくわからないまま目を瞑っていると後ろでドチャっと肉の崩れる音が聞こえた。俺に傷はない、ゆっくりと目を開けるとそこには誇らしげな顔をしたおじさんがいた。
「へっ、にいちゃん油断したな。あと1匹残ってたぜ?」
後ろ振り返るとそこには肉塊と化した先ほどの魔物が、真っ二つになったいた。俺が遠心力をつけるために切っ先を重くした片手剣を使っても真っ二つにできなかったあの魔物をこのおじさんは最初に渡した普通の片手剣でやってのけたのだ。俺が驚いた顔をしていると
「これでも鍛えたんだぜ?口だけだったら誰でもいえるからな」
言葉通り魔物に傷つけられた服から見える腕や胸の筋肉は到底普通の生活をしていただけではつかないような筋肉を兼ね備えていた。かっこいいと思った。このおじさんは俺と違って無償で能力を与えてもらうのを待っていたわけじゃない。自分で努力して夢をつかみ取ろうとしていたのだ。
俺も小さい頃は、こんなヒーローになりたかったんだけどいつしかただの厨二病になってました。
「大丈夫か!こっちに魔物が、あ、あれ?剣太お前ゴミを集める能力しかなんじゃなかったのか?」
「ああそうなんだけどな、このおじさんが自分のアビリティ捨てたから俺のアビリティがそれを拾ったらしいんだ」
「アビリティって捨てれるんだ、ってうか拾ったアビリティも使えるなんてすげえじゃん」
「いや捨てられるアビリティなんてたかが知れてるだろ」
「ほかのアビリティは拾ってないのか?」
ああ、そういえばゴミしか拾えないと思ってアビリティを拾えてるかを確認し忘れていたな。ちょっと確認してみるか。
ふむふむ、なるほどな。俺が拾ったアビリティはこうだ。
【ヒノキマスター】
ヒノキを自由自在操ることができる。レベルに応じて作れるヒノキの量が変動する
(1レベルごとに体積100メートル分のヒノキが作れる)
【動かざること山の如し】
動けなくなる代わりに重量が上がり、防御力もちょっと上がる
【ムーブストーン】
石を数センチ動かす
【巨大化】
今の大きさの8倍になるが攻撃力、防御力が著しく低下。
【筒ぬき】
相手の装備品をランダムに1つ奪う(防御力10以下のみ)
【リトルスラスト】
物体に少しだけ推進力を与える
この5つのアビリティはを拾ったわけだが。やはりゴミとして捨てられる程度のアビリティしかないし、いずれも説明が曖昧過ぎる。ちょびっととか著しくとか。
だが最後のリトルスラスト、なっかちょっと名前もかっこいいし物体に推進力を与えるというのいうのはなかなかに使えるのではないだろうか。
実際に試してみよう。
自分で使っていた片手剣を床に置き切っ先の方向に向け移動するようにリトルスラストを発動する。
ずず…
動いた、まあ動いたが5センチ程度だった。推進力を与えるものを床に置いてたから悪いのか?くそ、ほんとうにこんなことになるならちゃんと勉強しておけばよかった。
無い知恵を絞ってでた結果が投げたらちゃんと効果出るんじゃね?ということなのでヒノキマスターで投げ槍を生成する。
まずは普通に壁に向かって投げてみる。
ふむ、こんなものか。レベルが上がったからか以前より投げた時のスピードも上がっている気がするな。なんかレベルというものを実感できてテンションあがっちゃうな。いかんいかん。
にやける口元を隠す。
「なあ、さっきからなにしてるんだ?」
「ああわるい、拾ったアビリティに物体に推進力を与えるっていうやつがあったから気になって軽く実験していたんだ」
「そうなのか」
「それで次に投げる槍に推進力を与えてみるんだけど、さっき投げた槍よりスピードが上がったかどうか見てほしいんだが、いいか?」
「おう、いいぜ」
瞬が俺に何してくるのか聞いてくるまで気が付かなったが、おじさんと瞬には俺が壁に槍を投げつけたかと思ったらいきなりにやけだした痛い野郎だと思われてたのかな、恥ずかしい。
気を取り直して俺はヒノキマスターでやりを生成する。今度はリトルスラストを槍に付加し投擲する。
瞬がすぐさま槍の当たった壁に近づき壁を凝視している。
「今当たった壁の部分にちょっとだけ、ほんのちょっとだけ傷ができているな、それで剣太。いつになったら槍に推進力を与えて投げてくれるんだ?」
と、にやにやしながらこちらに問いかけてくる。くそあいつ絶対今のが推進力を付加した状態だったてのをわかったうえで言ってやがるな。くそぉ…。
「やっぱゴミ能力じゃん…」
それから俺たちはアビリティの無くなったおじさんを安全な避難場所となっている地下シェルターまで送り届け別れを告げた。
そういえば瞬はすでに地下シェルターに逃げこんだ人達の視線をくぎ付けにしていた、なんてったってめちゃくちゃかっこいい黒の鎧を着ていたんだからな、子供たちに大人気だ。そのヘルムを脱ぎさわやかな顔をさらした途端におばさまや若い女性にも囲まれていた。くそぉ、俺はあのポジションに憧れていたというのに!
目を血走らせながら瞬の帰りを待っていると、後頭部のポニーテールをゆらゆら揺らしながら小学4年生くらいの一人の幼い女の子がこちらへと歩いてくるのが見えた。
「あ、あの、これからまたおそとにいくの?」
「うん、瞬はかっこよくて強いアビリティを引き当てちゃったからね、多分アビリティを使いたくて仕方ないだろうからまた街に出て魔物を狩ってくるよ。俺も一応は戦えるしね一応。」
「おにいちゃんはどんな力がつかえるの?」
「お、おれ?」
どうしよう、こんなかわいい女のコの手前「ごみを拾う能力だよ」なんて尻穴がねじ切れても恥ずかしくて言えない。なんとかごまかしたい見栄を張りたい。
「おにいちゃんの力はね、この世界を綺麗にする力だよ。この力でお外の怖い魔物さん倒してくるからね、ちゃんといい子にこの中で待ってるんだよ?」
「わかった!おにいちゃんがんばってお外きれいにしてきてね!」
おにいちゃん世界救うわ。きめた。お外綺麗にしちゃうわ。こんなかわいい子がいる世界をあいつらに壊させてたまるかよ。幼女は世界を救うんだっ!
「なに気持ち悪い顔してガッツポーズしてんだ、そろそろいくぞ」
「うん、おにいちゃん頑張る」
「きも」
それからおにいちゃんは戦い続けた、この世界の幼女を守るため。三日三晩戦い続けてようやくこの周辺の魔物はすべて排除した。ラジオからはほかの地域も魔物は排除され安全が確保されたようだ。
政府は今回のいきなり現れた魔物、それにあの自称女神トイフェルはいったいどこから現れたのかを特別チームを組んで調べていたようだが結局なにもわからなかったらしい。やはり俺のように幼女からの応援といいこいいこをしてもらわなければ今回の件については解明できないだろう。
ちなみに、あのポニーテール幼女に、おにいちゃんは頑張ったよと報告したところ「ちょっとしゃがんで」と上目遣いで言われ素直にしゃがんだところにいいこいいこされて俺は脳が溶けた。
魔物をすべて排除してから二日がたち、やはりあれは夢だったのではないのかと思い始めてきたころ脳内に音が響き渡る。どうやらメッセージが届いた音のようだ
【??????】
選ばれし者たちよ、魔物はまだ完全に排除しきれてはいない。
友、愛する人、家族を守りたくば今から1時間後この場所へ集まれ。
なに?まだ魔物を排除しきれていないだと?いや確かにこの地域の魔物はすべて倒したはずだ、幼女からいいこいいこを受けた後も殺り残しがいないかこの二日間念入りに瞬やほかのアビリティ保持者約30名と協力し町を見回ったのだ。
それでも1匹も見つけることはなかった。誰かが報告を怠った?いやみんなをわざわざ危険さらす理由がない、倒しきる前に魔物は既に巣を作り子供を産んでいた?わからない。
この町の幼女が危険にさらされるかもしれないと思うといてもたってもいなくなり家を飛び出す。
ご丁寧にマップまで用意されており、赤丸で囲われここ、と矢印が引かれている。そこは家から数十分のどでかい空き地だった。俺はステータスに頼りスピードを上げる。魔物が現れてから今日まで数百のごみを拾った俺のステータスは
【名前】 武蔵剣太 詳細
【種族】 ヒューマン
【レベル】 218
【アビリティ】 ごみ収集マン ヒノキマスター 動かざること山の如し ムーブストーン
巨大化 筒ぬき リトルスラスト グランパス ラッザ イール
ボニート スクアーロ プルプ ゼイゲル トランスパーレント
【称号】 ごみ溜めの英雄 紳士
【攻撃力】 2758
【防御力】 2819
【体力】 6268
【素早さ】 3846
こんな感じだ。町を危険から守ろうと毎日走り回っていたら素早さが結構高めになった。瞬の素早さが上がる灰色の鎧でも2000程度だ。さすがに俺と同じレベルで灰色の鎧を着られたら簡単に越されてしまうだろう。
それにゴミ溜めの英雄でのレベルアップではステータスの伸びしろがすくないらしい。俺がレベル41の時攻撃力・防御力が200前後だったのに対して瞬は装備なしの状態で500前後だった。悔しいがゴミでレベルアップしているのるのだから仕方ないといえば仕方ないが。
そんなことを考えているうちにあの空き地についた。今の俺の素早さにボニート(素早さが10秒間2倍、止まると死ぬ)を発動すれば数分でつく。このボニートはごみの中でも優秀だ、欠点といえば曲がり角で壁に激突したら死ぬことと曲がり角で勢いを殺そうと減速したらちょっと苦しくなる程度だ。
「指定された場所はここだよな」
誰に向けられた言葉でもないがそれに返事をするものがいた。
「あってるよ。私がここに呼んだ。」
「やっぱりお前か自称女神」
「うんうん、君ゴミみたいなアビリティのくせになかなかレベルが上がってるじゃないか」
「楽しそうにゴミみたいなとかいうな、それにごみみたいな、じゃない。これは女神アルバス様がくれた正真正銘のごみだ。」
「ちょっと!私があんたをパシリに使ってゴミ捨てさせようとしてるみたいじゃない!やめてよねまったく」
「そんなことはどうでもいい。まだ魔物を排除できていないというのはどういうことか詳しく説明してくれ」
「だめよ、これは私が呼んだ者たちが全員集まってからって今決めたんだから」
ちっ、めんどくさい女神だな。しゃーなしまってやるか。
俺たちの冒険はここからだ!(´◉◞౪◟◉)