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補習授業編その1

 

 オトナシからのメッセージだ。


【彼女を天に送ることができた。ご苦労様。次のさ迷えし者の世界になった。】


「もう……腹立つのもめんどうだ。次行こ、次。」


美術室をあとにする。


次は、どんなことが待ち受けているんだろ。


「旧校舎の片付けしても動画は撮れないのにどうして参加したの?」


浅葉くんずっと疑問に思っていたことを聞いた。


「まぁ、純粋に旧校舎の写真撮りたかった。それに夏休みによっぽどの変人しかやらねぇことを真面目やるって楽しいじゃん。話だけでも動画のネタになるし」


「……」


私は余程の変人なのか。とか片付け真面目にやってたの?とかいろんな思いがかけ巡るが何も言えなかった。

「でも、よく校長先生許可したね」


ここでハートブレイクしても仕方ないので話題変えた。


「あの校長は信頼できるぜ。一回俺たちを気に入らない奴が親にないことないこ言って、“動画投稿なんておかしなことやってる同級生がいる”ってそいつの親が学校に怒鳴り込んで来て、俺たちの親まで巻き込んだ騒動にあってさ」


「そんなことがあったんだ。全然知らなかった」

全くの初耳だ。


「ああ、で校長はこう言ったんだ “生徒のプライベートの私は干渉できません。現時点で実害をこうっていなければ私は止めろとは言えません”って言ってくれたんだ」


浅葉くんは続けて


「それから“子どもの時期に冒険した方がいい”って俺たちを応援してくれたんだ」


そんなことがあったんだ。

浅葉くんは普通ではなかなかできない経験をたくさんしていてうらやましいな。


「そういえば、昔は大人に反抗ばかりしていた校長先生が言ってた。ほほにある傷もケンカしてついた。ってこの前の朝礼で言ってたよ」


「へーあの虫も殺さなそうな校長がな。想像できねぇ。だから俺たちにも理解あんのか?。てか、お前。あの長い朝礼を真面目に聞いてんなか」


「もー人を変人あつかいしないでよ。人の話を聴くのは楽しいよ。自分とは違う価値観や思考に触れると、なるほどって勉強なるよ」


「わりぃ、わりぃ。で、でもよ俺は桜井のそういうところいいと思うぜ」

そういうと浅葉くんは少し早歩きになった。


 階段を降りて教室を見回ろうとした。その時、ガラスのようなものが割れる音と怒鳴り声が聞こえた。


「ケンカでも?行ってようぜ」


「うん」


声が聞こえた場所まで走る。三年四組、この教室だ。二人の男性の声が聞こえる。怒鳴る声とそれを諭すような声。


「今回はマジでヤバそうだから俺一人開ける。」


浅葉くんが扉を開けようとして手を伸ばした。が先に扉が開き出てきた人と浅葉くんはぶつかった。


「え、痛って」


「あぁ!?」


「大丈夫!?」

しりもちをついた浅葉くんに駆け寄る。


「あ? てめえどこ見て歩いてんだよ」


見上げると、ほほに大きな絆創膏をした、シャツのボタンを大胆に開けだぼだぼのズボンをはいた、リーゼント頭の少年が見下ろしていた。

ぶつかったのは出会いがしらの不可抗力だと思うんだけど。


「大丈夫か君たち」


少年の後ろから先生と思われる、30代半ばぐらいの男性がいた。


「佐藤、逃がさんぞ」


「ちっ、てめぇらさえ居なければずらかれたのに」


私のことは見ずに浅葉くんだけを睨み付ける。


「まぁ、大丈夫です」


浅葉くんは立ち上がりながら言った。


「夏休みだから保健室は閉まっているし、念のため少し教室休んでいきなさい」


「ありがとうございまーす」


私と浅葉くんは教室に入った。

「あの変な頭と先生がさ迷えし者か?」


「もう少し話さないとわからないね」


私たちが話していると。


「佐藤も早く入れ」


「あぁ? 指図すんじゃねーよ」

「いいから、入るんだ」


先生(仮)は少年の腕を引っ張り強引に教室に戻す。


「このままじゃ入れる高校が本当にないぞ」


「るっせーな。てめぇに関係ねぇだろ」


「担任だから大いに関係ある」

「いい子ちゃんぶりやがって。俺を使って点数稼ぎかぁ」


「そう思ってるなら是非とも協力してくれ」


二人の会話をしっかり聴き状況や関係性を考察する。今は夏休みで補習授業中か。


「お二人とも落ち着いてください」


このままだとヒートアップしそうなので止める。


「すまない、つい。あっそうだ、君たち名前は」


先生も冷静になったようで話題を変えた。


「私は桜井観月といいます」


「浅葉遊馬でーす」


「俺は三年四組の担任の森谷」


少年は何も答えない。


「あの……なのというお名前なんですか?」

少年の前まで行き聞く。するとびっくりしたような顔をした。


「え、どうしたんですか?」


「お前に話すことなんてねぇよ」


ふんと、そっぽを向き、教室から出ていってしまった。


「はー仕方ない奴だ」


森谷先生はため息をつく。


「だが、桜井さん。佐藤のことを知らないなんて珍しい」


「どういことですか?」


「札付きのワルと有名な佐藤次郎(さとうじろう)を桃陽中学で知らぬ人間がいるとは!」


森谷先生がおどけた様子言う。だから私が話しかけたなときびっくりしてたのかな。

あと、佐藤次郎さん。どっかで聞いたことある名前なような。んー。


「夏休み前、佐藤と隣中学の不良たち十数人が校内で大乱闘して警察も巻き込んだ大騒動になったばかりじゃないか」


「ええ!!」


「マジかよ! ネタとかじゃなくて!」


私と浅葉くんは驚愕する。昔の不良映画を見たときにそんなシーンがあったけど本当にあり得るんだ。


「全く佐藤を知らないんだな。本当にうちの生徒か?」


ま、まずい。どう答えればいいのだろう。と考える。


「いやー、その日は偶然にも二人とも夏風邪ひいて休んでました。俺たち二年生だし」


浅葉くんがいつものノリで答えてくれた。

再び佐藤次郎さんについて思考を巡らせる。

あの顔どっかで見たことが……


(ほうの絆創膏、傷だよね。佐藤次郎。佐藤……って!)


「ああーー!!」


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