美術室編その3
と記された内容を浅葉くんに伝える。
「自画像、やっぱ絵の女の子の日記だな。でも、誰にも見せてない最高傑作って?」
「読み進めればわかるかも」
引き続き読み進めると、十二月二十三日を最後に日記が途絶えている。
「まだ、十数ページ残っているのに」
これまでほぼ毎日書かれていたし、日記の内容や日記帳の使い方もすごく丁寧だから気になった。
「なんつーか、肝心なことは謎のままだな。名前もわかんねぇままだし」
「日記に自分の名前書く機会はあまりないもんね」
日記を読み終えこれからの行動を二人で思案する。
たけど、いい案がお互いに思い浮かばず沈黙が流れる。
どうすれはいい? 美術室と教室以外で名前の手掛かりが見つかりそうな場所。日記の内容をよく思い出して考えろ! ……うーん。あ!!
「図書室に行けば、日記帳に書いてあった学校新聞が置いてあるかも」
「ナイスアイディア! 早速、図書室に行こうぜ。善は急げだ」
私たちは日記を持って、図書室に急いだ。
扉を開ける緊張感も少し薄れてきた。図書室に入りまた、手分けして学校新聞を探す。
図書室にある書籍たちは今の時代ではお目にかかれない貴重なものばかりで読みたい衝動に駆られるが我慢、我慢。
かなりの時間、本棚だけではなく、膨大な書籍を開いてな探したが見つからなかった。
「あーもう、見つからねー!!」
浅葉くんが座り込む。
私も心が折れ始めていた。
「さっきから疑問に思ってたんだけど俺たち、この世界かなり時間たった感じするけどずっと空の色ずっと同じだしどうなってんだ」
浅葉くんの疑問に答えるかのように通知音が鳴るオトナシさんからか。
【ここはさ迷える者の思い出を写した世界。時間という概念はない。お腹も空かないし、のども乾かない。ただし、疲労感や痛感はある。外傷も残る。注意することね。】
【貴方たちが求めているものは必ずあるは頑張りなさい。】
「相変わらず人の足元を見てやがる」
浅葉くんがメッセージを見て地団駄を踏む。
でもやる気が出てきたかも。
あと見ていない場所、探してない場所……
「あ!」
「桜井!?」
私は図書室を出て隣の教室を開ける。普通ならここは!
「やっぱり図書準備室だ」
「急に走んなよ。びっくりするわ」
「ごめん」
少しあたりを見まわすと、学校新聞コーナーと押し花クラブと書かれた押し花のしおりが棚にあった。
「あったね」
昭和十五年度と書かれた押し花のしおりを頼りに学校新聞を順番に見ていく。
「中西真知子!!」
浅葉くんが叫ぶ。
【中西真知子さん絵画品評会銀賞受賞】と学校新聞に書かれた。
「中西真知子さんか」
絵の女の子の名前が知れて嬉しくなった。
「よし、美術室に行けば。解決に大きく近づいたぜ」
図書準備室から出ようする浅葉くんを止める。
「もう、ひとつ調べたいことがあるの。いいかな」
「ん? まぁいいけど」
「学校新聞の続き一緒に読もう」
日記が12月23日で止まっているのか。私の予想が正しければ載っているかも……
翌年の1月10日の記事が目に止まった。
【訃報 絵画品評会で銀賞を受賞した、中西真知子さんが昨年の十二月二十四日に交通事故で逝去されました。ご冥福をお祈りします。】
「マジかよ……中西って子は俺たちと同い年だったよな……」
浅葉くんは言葉をつまらせる。
「……行こう、中西さんを天に送るために」
「ああ、そうだな」