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プロローグ


 【この学校のすべてが憎い。死んだって恨み続けるから】





三田(みた)先生、保健室の備品運び終わりました」


「ありがとう。桜井、そこに置いといてくれ」


夏休み真っ盛りの今日、私桜井観月(さくらいみづき)は年度末に取り壊し予定の旧校舎の片づけを手伝ってます。ここ桃陽中学校は百年以上の長い歴史のある学校で多いとき全校生徒が二千人近くいたらしい。でも今は少子化で校舎の一部が全く使われなくなったため取り壊しが決まった。


「おーい、浅葉も少しは手伝ったらどうだ」


「手伝ってじゃないですかー」


「さっきから、写真を撮ってるところしか見てないが」


「気のせいですよ、気のせい」


「まったく」


三田先生かため息をつくのをしり目に浅葉くんは満面の笑み浮かべながらシャッターをきっていた。


「大体、夏休みの時期に何の見返りもなく片づけの手伝いなんかする奴はそうはいないっすよ」


今日、参加しているは私と同じクラスで中学2年生の浅葉遊馬(あさばゆうま)くんという生徒二人だけ。浅葉くんは友達と動画サイトに投稿しているらしい。

私はこの話を知ったとき絶対に参加したいと思った。友達も誘ってみたんだけどみんな部活や習い事、夏期講習で断られてしまった。


「片づけを手伝うのと引き替えに旧校舎の撮影を校長に直談判する生徒なんて浅葉ぐらいだよ」


三田先生は呆れながら言った。


「いい写真がいっぱい撮れて最高! あー動画も撮りたかったな」


「動画は撮らない約束だろう。校長は桃陽中学校の卒業生だから特別に許可しただけだからな。写真を間違ってもSNSや動画サイトにはあげるなよ。

だが、ただの中学生が動画を世界中に発信出来る時代になるとは」


「わかってますって、写真コンクールにはだしてもいいですよね」


「コンクールならいいが」


先生が腕時計を見ている。


「もう、こんな時間だ。キリもいいし今日はこれぐらいしとこうか。二人ともありがとう」


「普段入れない旧校舎が見れて楽しかったです!」


「桜井がいて本当に助かったよ」


「よし、ここまで手伝ってくれたお礼に飲み物でも買うか。何がいい?」


「俺、冷たいソーダ!」


「私は緑茶で」


「わかった。ちょっと待っててな」


三田先生は学校の近くにある自動販売機に向かった。

スマホで時間を確認すると、もう4時半をまわっている。


「よーし、先生がいないうちにいろいろ見てまわろーと」


「浅葉くん駄目たよ。勝手なことしちゃ」


「大丈夫、大丈夫。取り壊しになるんだから、こんな機会もう二度とないんだぜ」


浅葉くんは廊下に置かれた備品を探り始めた。


「ん!? 何だ、これ」


浅葉くんが手にとったのは古びた木箱。


私は木箱を見たとき言いようもない胸騒ぎを感じた。辛いような、悲しいような……


「おお!開けてみよう」


浅葉くんが木箱を開ける。


私は開けるのを止めたいような、止めたくないような。今までに感じたことのないような気持ちになりながら声をあげることができなかった。


「ん!?……」


浅葉くんが木箱を開け何かをじっと見つめている。ただ、ただ静かに……

なんだか様子がおかしい、声をかけようとしたその時。


「え!?浅葉くん?」


浅葉くんが忽然と消え、木箱が落ちた。ほんの一瞬まばたきをしてる0.数秒の間にいなくなってしまった。


私は何が起こったのかわからず浅葉くんかがいた場所に駆け寄った。そして視線を下にやると木箱の中身が見えた。


「か、鏡?」


だが、写っているのは自分の顔ではなくて……青白い顔をした少女。私は鏡に写る少女に釘付けになった。目を背けることも声をだすこともできない。なんで、とうして混乱していると突然目の前が真っ暗になった。


「ん、ここは」


おかしなことに私は眠っていたようだった。


確か旧校舎の片づけをしてたはずだけど

体を起こして辺りを見回すと電光はなく、薄暗いが、綺麗な夕焼けが廊下を照らしていた。

そして、あたりの様子がおかしい。旧校舎に似ているがこんなに古びていたっけ。とぼんやり考えていたら、気を失う前のできごとが次第に蘇ってきた。

浅葉くんが忽然と消えたこと、鏡に写る少女の顔のこと。


「浅葉くんは!?」


もう一度よく辺りを見回すと浅葉くんは数メートル離れた場所倒れていた。急いで立ち上がり、浅葉くんの傍へと駆け寄る。


「浅葉くん、浅葉くん。大丈夫?」


声をかけながら倒れている浅葉くんの体を揺らす。


「ん……ここどこだ?」


「浅葉くん!」


浅葉くんか目を覚ましホッと安心する。


「桜井、どうしたんだよ。急に。てか、俺して……うわぁ!!鏡、鏡の顔!?」




「浅葉くんも見たんだね。鏡に写った女の子」


「ああ、見たぜ。恐ろしかった。でも……動画撮りたかったなー。スマホを家に忘れてきたのが悔やまれる」


「もーふざけないでよ」


「別にふざけてねーよ。俺は真面目だぜ」


「真面目だったら尚更ダメだよ」


「てか、俺の一眼レフカメラは!!」


浅葉くんがキョロキョロと見回す。少し離れたところ黒い物体があった。


浅葉くんは猛スピード駆け寄り


「傷はないな! 良かった!」


浅葉くんが一人騒いでいるのよそに私は鏡に写った女の子を不思議と怖ろしいとは思わなかった。でも寂しそうだなとは思った。


「なぁ、ここ旧校舎だよな。でもさっきまでの雰囲気と違わね」


「うん、そうだね。浅葉くん。信じてもらえないかも知れないけど……」


私は鏡を見ていた浅葉くんが忽然と消えたこと。私も鏡を見て目の前が真っ暗になったこと。気がついたらここで倒れていたことを話した。


「え?マジ、信じられねぇ。でも廊下で寝てたなんてどう考えてもおかしいよな」


私も浅葉くんも押し黙る。


暫しの沈黙を破ったのはスマートフォンの通知音だった。

画面には、一件メッセージがあります。と表示されている。誰だろうと開いてみると……


【旧校舎を取り壊すと大いなる災いが起こるだろう】

と書かれていた。



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