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(3)

しゃしゃしゃしゃ


明は、神社の境内を竹箒で掃いていた。


(比呂美!!!覚えていろっ!?!?)


散々、巫女衣装だと脅されてきたのだが、来てみれば、普通の宮司衣装だったので安堵した明だった。わたわたする明を殻って遊ぶのは、比呂美の悪い癖だった。本人は、お気に入りの日課だが、明にとって見れは災難この上ない。


「明君、絵馬、なくなりそうだから、倉庫から何箱かもってきて、あと、廊下の電球の取替えもよろしく」


「はーい」


男の子の明は、以外に、数少ない男手だったらしく、重宝され喜ばれた。

明も小柄ながら、それなりに力も体力もあるし、体育会系のはきはきさわやか感が高感度をあげているらしい。結構気さくに接してもらえて、思っていたよりもいいバイトだった。

境内は、緑がおおく、小鳥のさえずりや澄み切った空域、ゆっくりと流れる時間は、弓道に通じるものがあると思った。


(あながち、比呂美の言ってる事も間違いではかも??心が落ち着き、清心統一の鍛錬できそう・・・)


竹箒を持った明が境内を横断し、本殿を横切ろうとしたときあるものが目に入った、


(ネコ?)


屋根の上に一匹の丸々太った虎柄のネコがゆっくり軒を伝っていた。


(うわ〜、ネコの重みで軒ぎしぎし言ってるよ。メタボぷりを見ると、この神社でかってるのかな??)


と、ネコの歩みを目で追った。

猫は、ゆっくりと軒を移動し、そこから、すとんと地面におりた。

自身の体重を感じさせない身のこなしに、明は、おおっと感嘆した。

そして、相変わらす、ゆっくり歩みを進め、神社の賽銭箱近くで丸くなった。

どうやら、昼寝の場所を決めたらしい。


ふと、ネコと賽銭箱の間に一人の男が階段に座ってタバコをふかしていた。

墨のような黒いすこしくせっ毛に、着崩したスーツズボンとワイシャツ、黒い光沢がおしゃれな靴。首に光るプレートのアクセサリー・・・・・まさに、朝帰りの疲れたホストそのもののようであった。


【触らぬ神に祟りなし】


瞬時に明の心に浮かんだ。

どう転んでも、普段明が好んで話しかける(かけれる?)相手ではなかった。

たぶん、話しかけようものなら、強制的に非日常に飛ばされてしまうかも、、、いや、される!!


(夜の世界で、切り売りされたらどうしよ〜〜〜。筋張ってっておいしくないです。)


まったくの偏見で、そんな事を思った。

メタボねこは、なぜこんな広い境内でよりにもよって、あのホストの横に陣取った??

下手すると、三味線にされてしまうぞ!!

ねこの気まぐれは、理解不能だ。。。


そもそも、明は、ネコより犬派だった。


その、光景から目をそむけようとした瞬間、明は、凍りついた。


なんと、男は、自分の吸っていたタバコの灰を、こともあろうか、賽銭箱に落としていた。

しかも、まったく躊躇せずに・・・


(な、なんてことを!!)


さすがの明もこれは、見過ごせなかった。

神さま仏様もびっくりだろう。

とりあえず、明は、びっくりした。


まさか、こんな非常識な日本人たぶんがいるなんて・・・。

世も末、最近の若いもんは、といわれてているが、さすがにここまでとは。


意を、決して明は、非常識男に近寄っていった。


さすがに、宮氏に暴行なんて非業はしない・・・・よね???


宮氏の衣装を着ている明は、普段よりちょっぴり勇気と行動の連結線が太くなっていた。



「あの〜」


「ん??」


明は、非常識男と目があって、少しひるんだ。

だって、男は、疲れているせいか、目つきが悪いし、暗い。

漂っている空気も、険呑としていて重いし、暗い。

不のオーラが出まくっていた。

リアルに売り買いしてそうな顔つきだった。


しかし、明は、ちっちゃな勇気をフルパワーに出して言った。


「あの、ここで、タバコを座れるのは、かまいませんが、賽銭箱に、吸殻を入れるのはやめてください。賽銭箱は、みんなが、神さまへ願いを打ち明けるところなんです。あなたの灰皿ではありませんので」



男は、ゆっくり明の顔をのぞきこんだ。

男のほうが座っているので、見上げている格好になっているのだが、明は、背中から冷や汗が滝のように流れ落ちていた。


「いや、だから、その・・・タバコは、灰皿に・・・」


今度は、かなり下手に言い直した。

現代高校生なんてこんなものだ。

明も喧嘩が強いつよいわけでもなく、正義漢には、到底見えない体つき。

下手に逆上されたら痛い想いするのは、明だし、出来れば避けて通りたい道だ。


男は、ふ〜うとタバコの煙を吐き出し、けだるそうに言った。


「俺んちのもんなんだから、べつにかまわないだろ」


(この神社の息子さん???こんな不良?だったのか。この神社霊験薄いのかな??)

「あ・・いゃ・・・でも、やっぱり、神さまにお供えするもんですし。ばちが当たりますよ」


と、恐る恐るいった明の言葉に、男は、ぷかぷかタバコをふかしながら無言で明を眺めていた。



「罰ねぇ〜」



(な、なんか、おかしい事言ったかな????【罰】なんて古臭かったかな・・・かっこわるっ)



「久しぶりに、聞いたな〜、その台詞」


(ああ、やっぱり(泣)恥ずかしくて、穴掘って自ら入って埋めて、発酵するまで寝かしてほしい。今ならキムチの気持ちがわかる。思い出がすっぱくなるまでそのままで・・・)


「そういや、最近【罰】当ててないな〜」


そう、男は、よくわからないボヤキを吐いた。


「おい、お前、名前は?」


と、突如聞かれて、明は、とっさに答えた。


「あ、あきら」


「そうか。んじゃ。お前にした。お前が、俺の代わりに【罰】当てろ。」



猫:名前不明・年齢不明・性別不明

神社の猫

メタボ気味で明が心配しているが、動きは軽い。


タバコ男:不明

どうやら「神社」の息子らしい。

明は、タバコと男から滲みでる疲れたオーラから夜の危険なにおいを察知した。ぼやき多い。

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