「13歳」 リィリィの日記
【若緑月5日】
4年生なので、入寮。
なんと奇跡的に、ロゼッタ様と一緒の寮になれた!ラッキー!!
寮長であるドラクロワ公爵令嬢のお茶会に、ロゼッタ様とふたりでお招きを受けた。
成金派と伝統派、ふたつの派閥のシンボル的存在になっているわたしたちが
仲良く成長することを願っています、っておっしゃってくださった。
どうもドラクロワ公爵令嬢が、わたしたちを同じ寮にって采配してくださったっぽい。
女神か!
「もちろん仲良くしたいです」なんて答えたけど、もう仲良しだよねって
二人きりになった時言ったら、ロゼッタ様は頬を染めてうなずいてくださった。
相変わらず、かわいい。大好き。
最近、クレイン王子とときどきお話する機会があって、ちょっと王子にときめいちゃったりしたけど
やっぱり王子とは距離をおくようにしようと再決意した。
王子、いいやつなんだけどね。
ゲームでも真面目で優等生な王子様って感じで好きだったけど、
リアルクレイン王子は、王国の未来を真面目に考えてて、努力家で、尊敬する。
でもロゼッタ様も素敵な方なので、ふたりで幸せになってくれればいいなーって思う。
そう心から思えているうちに、離れようっと。
【蛍月7日】
会わないようにしようと思っているのに、王子によく会う。
今日は、図書館でお会いした。
わたしはお目付け役の侍女をひとり連れているだけだけど
王子はいつも側近の方々や側仕えの方々がご一緒だ。
側近の方や側仕えの方でも、身分的にはわたしよりずっと上の貴族だったりするので
遭遇すると緊張するんだけど、王子と目があって、微笑まれるとつい応えてしまう。
身分的にも無視はできないんだけど、それだけじゃなくて。
あの生真面目な、だけど優しい緑の目は、魔力でもあるんじゃないだろうか。
あの目で見つめられて「リィリィ」って呼ばれると、すごく心臓がどきどきする。
自分が女の子なんだって全身が叫んでいるみたいで、泣きたくなる。
切ないほど嬉しいけど、ロゼッタ様を裏切っているようで、自分が嫌になる。
とはいえ、お話した内容は、近年銀行業が発達して力を増している隣国についてという
色気なんてない会話だったんだけど。
【葡萄月12日】
ドラクロワ公爵令嬢のお供として、街へお買い物に出かけました!
警護の者たちは一緒だけど、子どもだけで街へ行くなんて初めて!
寮長は、時としてお買い物に出る必要があるんですって。
なんて素敵なの!
しかも、ロゼッタ様もご一緒。
はしゃぎすぎて、先輩たちに「めっ」とされました。
「めっ」ってかわいいな、先輩たち。
そんな怒り方じゃ、わたしのテンションは下げられません!
寮のお使いは雑多なものが多いので、王室御用達のデパートでまとめてしました。
我が家ではけっこうデパートに出向くことも多いんだけど
ロゼッタ様たちはおうちに呼び出したことしかないんだそう。
自然な感じを装いつつ、興味深そうに周囲を眺めていらした。かわいい。
最近はかなり高位の貴族の方もデパートに足を運ぶことが多いのは、
このディスプレイや内装が素敵だからだと思う。
ロゼッタ様ももっとはしゃいでいいのよ?なーんてね。
寮のお使いが終わっても時間に余裕があったので、ドラクロワ公爵令嬢の許可をいただいて
ふたりでおそろいのレースのハンカチを買った。ロゼッタ様とお揃い!!わーい!!