わたくしの親友が素敵ですが、心臓バクバクしています(ロゼッタ)
また短めです。
「危ない……っ」
頭上から射られた矢からとっさに王子がかばったのは、隣にたっていたリィリィだった。
王子は、リィリィをその腕に抱きこむようにして、かばう。
その矢が誰にも当たらず床に刺さるのを見て、ロゼッタは安堵し、矢が飛んできたほうへ視線を動かした。
「射手は、どこ……っ」
ロゼッタは矢が飛んできた方角を目で追ったが、そこには誰もいない。
クリスタルのようなガラスの天井が輝いているばかりだ。
矢が飛んできたのだ。
射者がいないはずがない。
ロゼッタは目を凝らし、射手を探した。
窓の外の暗闇、月、星。
そしてきらめくシャンデリアに照らされたガラスの天井。
夜の闇に潜むのは、天井の窓ガラスに張り付いて弓を構える男だった。
「伏せて……っ」
ロゼッタが男を見つけるのと、男が第二の矢を射かけるのは同時だった。
ロゼッタは声を上げたが、パーティの会場は悲鳴が飛び交っていて、その声はかき消された。
悪いことに、この手のパーティでは、騎士は出入り口と壁際に配置されているのみだ。
王子の傍にいたのも事務仕事や身の回りの世話をする側仕えだけで、護衛の者はいなかった。
遠くからのロゼッタの警告を聞き分け、動けたのは王子に庇われているはずのリィリィだけだった。
リィリィは自分をかばう王子の腕を振り払い、王子を突き飛ばした。
そして自分の身を投げだし、王子の上に覆いかぶさる。
第二の矢は、さっきまで王子たちが立っていた場所に射られたが、誰にも当たらなかった。
けれどすぐに、第三の矢が王子の上に伏せるリィリィを狙って射かけられた。
矢は、リィリィの肩をかすり、床へと突き刺さる。
「……っ」
リィリィの唇から、小さな悲鳴が漏れた。
ミルク色の華奢な肩に、一筋の傷がつき、血がにじむ。
それを確認すると、窓の外の射手は、姿を消した。
騒然とするホールの中、ロゼッタは呆然と窓の外を見ていた。




