〔 学校 〕三〇分後
芦屋先生
「もういいぞ、越前。水を捨てて、片付けたら帰りなさい」
越前かなみ
「……先生、一〇分オーバーです!」
芦屋先生
「ああ、無駄話をした分を延長させただけだ。気にするな」
越前かなみ
「やっぱ、鬼です!!」
芦屋先生
「ああ、そうか。分かったから帰りなさい」
芦屋先生は椅子から立ち上がると教室から出て行った。
越前かなみ
「……やっと帰れる〜」
私の名前は、越前かなみ。
来月、花の一六歳を迎えるピッチピチの高校一年だ。
居眠りしたくらいで、生徒に居残りまでさせて、か弱い女子生徒にバケツを持たせる教師が何処の学校に居るんだか!
あ〜あ、テパメン見たかったなぁ。
今日は録画が出来ないから直見しようと思っていたのにぃ!
ついてないや……。
今日は厄日だよ!
バケツの水を女子トイレの排水口に流し、教室の後ろに鎮座する掃除用具入れの中に入れる。
机の上に置いたままの鞄を取り、私は教室を出た。
この時間、教室に残っている生徒は居ない。
部活で残っているか、帰宅部で既に帰っているかのどっちか。
それ以外で校内に残っている生徒が居るとしたら、きっと変わり者。
私は何の迷いもなく、真っ直ぐ一階の下駄箱へ急ぐ。
別に急ぐ必要はないんだけど、壱可が『土砂降りになる』なんて言ってたから、降り出す前に急いで帰りたい。
幸いな事に未だ雨は降ってないから、駅にさえ着ければ此方のもの。
傘を使わなくても帰れるんだから、それに越した事はないのだ!