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Kiss&Happiness  作者: 千秋
4/7

第三章 「each other」

「……ん、んん」


 俺は、寝てたのか。

 最近馴染んできた感触が体を包んでいる。どうやら俺のベッドのようだ。


「うっ」


 急に身体がだるけを感じた。

 額に手をあてると少し熱があった。


 風邪、か。

 そう判断したとき仰向け状態だった俺の胸になにかが当たった。

 触ってみるか。

 この感触は……手?


 確認のためにその物体に目をやると確かにそれは手だった。なんで手なんか俺の胸に……!?

 ふと視線を横に移動させたらその答えがわかってしまった。


「ほ、本郷!?」


 つい口に出してしまうほどの驚き。

 しかし当本人は無反応だった。


 ……寝てる。

 とりあえず落ち着き、改めて本郷の顔を見る。

 こいつ、こうして見ると綺麗だな。


 そう思った途端、何故か変に意識してしまいそれ以上本郷を見ることが出来なくなった。

 どうしたんだ、俺。

 というか、何故こんなところにこいつがいるんだ?


「……」


 とにかく、こいつを別の場所に移動させないと。風邪を移したら色々と大変だし、この状況を誰かに見られたら間違いなく一貫の終わりだ。


「おはようございます」

「うわぁ!」


 いつの間にか傍にいた千尋さんの声に俺は思わず跳び上がった。お、終わった……


「ち、千尋さん。これは――」

「昨日突然根元様が倒れたので身体をベッドまで運びました」

「え? あ、ありがとう」


 俺、倒れたのか。昨日、ということは半日くらい寝てたんだな。


「恐らく慣れない生活で身体が限界に達したのだと思われます。今は大分落ち着いてらっしゃるご様子ですが、今後の事を考えて最低でも一日は安静にしていただきます」

「はあ」


 安静にしろ、か。


「あのさ、何で病人である俺のすぐ横で本郷が寝ているんだ?」

「……お嬢様は一晩中根元様の看病をなさっていました。それ程根元様のことが心配だったのでしょう」

「マジか……」

「お嬢様は限界がきて無意識のうちにお休みになられたのですよ」


 こいつ……


「千尋さん。本郷を自分の部屋に運んでもらえるかな。本郷に風邪が移ったら大変だ」

「心配には及びません。事前に薬を服用して看病なさりましたから」

「でも、万一のことを考えて――」

「ん……」


 そのとき、本郷が目を覚ました。


「あ、起きた」

「それはこっちのセリフだ」


 本郷は目をこすると伸びをした。


「では根元様。ごゆっくりと」

「ち、ちょっと千尋さん!?」


 千尋さんは一礼すると俺の制止も聞かず部屋を出て行ってしまった。


「……行っちゃった」


 ごゆっくりってなんだよ。

 ったく、仕方ない。俺が運んで行くか。


「うっ……」


 しかし、ベッドから起き上がろうとしたとき再びだるけが俺を襲った。


「駄目よ。ほら、まだ寝てなさい」


 完全に目を覚ました様子の本郷が俺をベッドで押しやる。


「ほ、本郷」

「いいから、ほら」


 結局ちょっと前の体勢に戻った。


「違うんだ。俺のことはいいから、自分の部屋に戻れよ」

「何で?」

「その、もし風邪だったら移るかもしれないんだぞ」

「そんなの今更よ。ちゃんと予防はしたし、一晩中近くにいて何ともないんだから問題ないわ」

「……そっか」


 移っても俺は知らないからな。


「ちょっと待ってて。お粥作って来るから」

「お、おい」


 俺の気を余所に部屋を出ていった。


「……」


 本郷がお粥……作れるのか気になる。

 この前の体育館裏での会話でとても料理ができるような反応じゃなかったし期待はできないけど、まぁ作ってくれるって言うなら黙って待ってようじゃないか。


 少しして本郷が湯気が立っている陶器を両手で持って部屋に戻ってきた。


「ほら、作ってきたわよ」


 それを俺に突き出す形で渡してきた。


「あ、ありがとう」


 戸惑いながらも受け取る。


 そしてちょっとびっくりした。

 うまそう。


「これ、俺が食べていいのか?」

「食べたくないなら食べなくていいわよ」

「いや、食べさせてもらう。いただきます」


 スプーンですくって口に運ぶ。


「……ちょっとしょっぱい」

「え!?」


 本郷の奴、本気で狼狽えてるし。塩入れすぎたんだな、こりゃ。


「でも、おいしい」

「ふ、ふん! 下撲がマズいと思うものを出すなんて恥だし、この私が直々に作ったのだからおいしいに決まってるわよ」


 腕を組んでなにやら自慢げに肯定しちゃって、ガキだな。

 でも、俺なんかのために何かしてくれたことが些細なことでもこんなに嬉しく感じるのは久しぶりかもしれない。


 ちゃんと、感謝すべきだよな。


「これ、俺のためにわざわざ作ってくれたのか?」

「か、勘違いしないでよね。自分の体調も管理できないダメダメな下僕を少しでも早く回復させてめいいっぱいコキ使わせるためなんだから」

「……嬉しいな」

「何よ、もっとはっきり言いなさいよ」

「いや、その――」


 俺は正直な気持ちを伝えた。


「ありがとな」


 自分でもビックリするほど、自然に感謝が言えた気がする。

 ま、どうせ素直に受け取ってくれないだろ。いつもみたく。

 そう考えて本郷の方を見返したとき、


「どういたしまして」


 微笑みながら返事をする本郷が余りにも綺麗に見えて、どうしようもないくらい目に焼き付いていた。

 反則だろ、こいつの笑顔。


「な、何ジロジロ見てるのよ!」

「あ、わ、悪い」


 ついしどろもどろになってしまう。

 これ、意識するなって方が無理だろ。


「明日には完全に回復しなさい。休んでた分しっかり仕事をしてもらうわよ」

「お、おう」


 その後、寝につくまでの間気持ちを落ち着かせるのにかなりの気を使う羽目となった。



 体調が完全に回復してから一週間が経った。


 朝、掃除用具を手にもっていつものように部屋を回っていると千尋さんに出くわした。


「お疲れ様です、千尋さん」

「根元様。今日は特別な日です」

「えっと、何?」


 俺からしたら特筆したものがあるわけでもない日なんだが。


「お嬢様の誕生日です」

「あいつの誕生日か……って今日!?」


 思いっきり特筆すべき日だった。


「はい」

「もっと早く言ってくれよ!」

「と、言いますと?」

「え、えっとだな。ほら、こうして近くで生活しているわけなんだし、やっぱりプレゼントくらいは用意しないとさ」

「それなら、お嬢様と出掛けるというのはどうでしょう。所謂デートというものです」

「デ、デ、デート!?」


 千尋さん、なんて心臓に悪いことを……


「お嬢様は男性の方と外出なさったことがありませんから。どうか楽しい一時をお過ごし下さい」

「ちょ、ちょっと待ってくれ。千尋さんも行かないのかよ」

「例年は私が付き添いますが、今年は根元様がいらっしゃいますので」

「いやいや、二人きりは流石にまずいんじゃないか?」

「大丈夫です」


 なにその自信たっぷりの肯定……


「とにかく、千尋さんも来たらどうですか?」

「私はお嬢様の誕生日パーティーのための準備で忙しくなるので」

「えっと、誕生日パーティー?」

「はい、ここで行います」

「パーティーってことは誰かを招待するとか?」

「いえ……加えて、ご主人様と奥様はご多忙のため私たちだけになります」

「……」

「それではよろしくお願いします」


 千尋さんは最後に会釈をして立ち去った。

 ……学校の連中はしょうがないとしても、金持ちの家なんだから誰かしら知人がいるはずだろ。

 俺たちだけとか寂しいに決まってるじゃん。


 でも、もしかしたら本郷自身が誰も呼ばないことをよしとしてるかもしれないし、特に気にすることはないな。今年は俺がいるんだし。

 ……自分で思って恥ずかしくなった。

 さて、どうするか。



「行くわよ、下撲」

「へいへい」


 千尋さんに見送られ門を出た。


「お前、そんな格好するんだな」


 本郷の服装は、今時の若い女性が着るようなラフなものだった。まさかコイツがミニスカートを身に着けるとは思わなかった。


「何よ、似合わないとでも言いたいのかしら」

「いや、すごく似合ってるよ」

「あ、あ、当たり前よ。私は何を着ても似合うんだから」


 ああ、本当に似合ってる。似合ってるからこそ余計目のやり場に困るんだ。


「で、どこ行くんだ?」

「あんたが決めなさいよ」

「今日はお前の誕生日なんだろ。だったらお前が行きたい場所に行くのが普通なんじゃねぇの」

「別にどこだっていいわよ」


 このままだと埒があかない。

 しょうがない。俺が決めるか。



 結局、何かとある駅前に来た。


「これ楽しいわ」


 まずはバッティングセンターに行った。

「お前初めてじゃないだろ」

「初めてに、決まってるじゃない!」


 本郷の綺麗かつ豪快なスイングが時速100キロの玉を正確に捕らえ見事なアーチを描き出していた。

 うますぎだろ、こいつ。


「あんたもやらないの? そっち空いてるわよ?」

「いや、俺はいい」

「あれぇ? もしかして、下手なのかな?」

「上等だ! やってやろうじゃないか!」


 いつもの癖でつい安い挑発に乗った俺はお金を注ぎ込んだ時点で後悔した。


「あんた本当に下手だったわね。全部空振りはないわよ」


 本郷が俺を指差しながら笑った。く、悔しい。


 次に本郷が見たいと言い出した映画を見た。

 身分社会が激しい時代のヨーロッパを舞台とした、立場が違う男女が様々な問題を抱えながらも恋に落ちていくというありきたりな、はっきり言ってつまらなかった洋画だったのだが……


「うっ、うっ、ベックとヨハンが無事結ばれてよかったわ」


 横で号泣している人が若干一名。


「行くぞ、本郷」


 その場から立とうとしない本郷を無理矢理引き連れて、ファーストフード店に行った。


「これが、ハンバーガー?」

「ちょっとカロリー高いが、うまいから食べてみろよ」


 本郷は恐る恐る手に持ったハンバーガーを口にした。


「んん! おいしい!」

「だろ」


 一口で味を占めたのか、二つ目まで注文していた。気に入ったようだな。

 昼食後。いよいよプレゼントを買うためデパートに寄った。


「ここからは別行動をとるわよ。意味、解るわよね?」


 誕生日プレゼントは一人で買え。そういうことだろう。


「ああ。待ち合わせは屋上でいいか?」

「ええ、いいわよ」

「了解」


 さて、困ったぞ。

 色々と回り物色するがなかなかピンと来るものが見当たらない。

 だいたい本郷にプレゼントして喜ばれるものなんて俺がわかるかわけがない。まだまだ執事みたいなもんになって数週間程度だし。


 ふと横を見ると、一つのネックレスが目についた。

 中がくり抜かれている星型のついた、ただそれだけのネックレス。

 ……よし。これにしよう。


 人が疎らな屋上でしばらく待っていると、何かを持った本郷が現れた。


「随分悩んだようだな」

「当たり前よ。ちゃんと時間かけて決めるのがプレゼントってもんだから」


 自分に対してのプレゼントにそこまで悩むものか。


「そうか? 直感でこれだ、と思った物でもそれに思いを込めれば問題ないと思うけど」

「はぁ……まあいいわ。がさつなあんたに繊細なことはわからないわよね」

「がさつとは失礼な」

「とにかく、帰るわよ」


 本郷の一言で俺たちは帰路についた。

 その間、本郷がちょっと嬉しそうな笑みを浮かべていたのは気のせいだろうか。



 帰宅後、千尋さんに誕生日パーティーを行う部屋を聞いてから自室に戻って執事服に着替えた。

 そして先程買ったネックレスを持って本郷の部屋に入った。


「遅い!」

「すまない」


 中には本郷と千尋さんの二人がいた。千尋さんの頭に三角帽子が乗ってるんだが……触れないでおこう。

 千尋さんは俺に一瞥したあと、慣れた手つきでホール型の綺麗なショートケーキに刺さったろうそくに火を燈していく。

 そして、最後のろうそくに火が燈ったとき、


「ハッピーバースデー、トゥーユー」


 本郷がぽつりと歌い出した。


「「ハッピーバースデー、トゥーユー」」


 俺も本郷に合わせて口ずさむ。


「「ハッピーバースデー、ディーア」」


 しかし、次の一言が違った。


「本郷」「私と根元」


 俺はつい本郷の方を見た。

 本郷も俺を見返す。


「ハッピーバースデー、トゥーユー」


 最後は千尋さんが一人で締めくくった。


「お嬢様、根元様。火を消して下さい」

「えっと、本郷はわかるんだけど、何で俺が?」

「いいからあんたもやりなさい」


 俺は渋々本郷と共にろうそくの火に息を吹いて消した。


「おめでとうございます、お嬢様、根元様」

「あのさ、説明してほしいんだけど」

「あんた自分の誕生日も忘れたの?」

「え?」


 俺の誕生日だと。


「失礼ながら、学生証を拝見させていただきました。そこに、根元様の生年月日が掲載されてあったので」

「……そういえばそうだったな」


 そっか、そんな日だったな。


「ケーキを切り分けたのでどうぞお召し上がりください」

「ありがとう千尋!」


 直径二十cm程度のホールケーキでも、三人で分けるとなると結構一人分が大きいな。


 きっかり三等分に切り分けられたケーキを受け取った本郷がハイテンションを維持させたままそのケーキを口に運んだ。


「おいしい! 流石千尋だわ。あなたが作るお手製ケーキは世界一よ」

「お気に召されたようでなによりです。根元様もどうぞ」

「あ、ありがとう」


 千尋さんに勧められ、椅子に座ってケーキを食べた。


「う、うまい」

「でしょ。一流のパティシエでもこんな最高のケーキ作れないわ」


 なんか、懐かしい味がする。どこかで食べた様な気が……気のせいか。


「あ、そうだ」


 本郷は椅子から離れ自分の机に置いてあったものを持ってきた。


「これ、誕生日プレゼント。開けてみていいわよ」

「あ、ありがとう」


 俺は少し躊躇しながらも、白を基調としたコスモスの花柄の包装紙を取って中身を取り出した。

 それは、俺が買ったネックレスと、色が違うだけのネックレスだった。


「……プッ」

「なっ、なにがおかしいのよ」

「俺もプレゼントを渡すよ」


 可笑しさで勝手になってしまうにやけ顔をどうにか押さえつつプレゼントを渡した。


「開けてみな」


 俺の反応に本郷が無造作にピンクと白のチェック柄の包装紙を取る。


「あ……」


 どうやら本郷も気がついたようだ。


「フフッ、そういうことね」

「お互い考えることは同じだな」

「そうみたいね」


 そう言って本郷は無垢な笑顔をちらつかせた。


「折角だからこの場でつけるわよ」

「あ、ああ」


 お互いがプレゼントしたネックレスを同時に付けた。


「すごくお似合いです」


 被ったことは正直失敗したと思ったが……

 ま、本郷が嬉しそうにしてるからよしとしよう。


 三人で行った楽しいパーティーは本郷が終始上機嫌のまま終了した。

 色々とはしゃいだ後の虚無感に襲われ、俺は部屋のベッドでボーッとしていた。


 それにしても、今日が俺の誕生日だったなんてすっかり忘れていた。

 祝ってもらったの何年振りだろうな……

 時計が丁度日付の変わる時間を表示していた。

 まだ時間的に早いし眠くないが……寝るか。


「入るわよ」


 そんな睡眠モードに移ろうとしたとき、ノックもせず無造作に本郷が入ってきた。

 さっきまでハイテンションだったのに、今の本郷は少し暗い顔をしていた。


「どうした?」

「……別に」

「別にはないだろ。何か俺に用事があるんじゃないのか?」

「うるさい」


 本郷はふて腐れて顔を背ける。

 こいつ……


「お前、寂しいのか?」

「な、なに言ってるのよ。あんたの様子を見に来ただけよ」

「俺はいつもと変わらないけど。強いていえば、まあちょっと気分がいいくらいだ」

「そ、そう」

「で、お前はどうなんだ?」

「私は、その……何でもないわよ」


 そう言う割には明らかに様子がおかしい。

 何か、やけにもじもじしているような気がするが。


「あんたが別段寂しそうにしてないようだから。私は戻るわ」


 そういって踵を返す本郷の後ろ姿にふと哀愁を感じた俺は、その背中に言葉を投げ掛けた。


「なあ……誕生日くらいさ、誰かと過ごしたいもんだよな」

「なに言ってるのよ?」


 こちらに振り向いた顔が疑問の色を示していた。


「今日は誕生日なんだし、千尋さんとか他のメイドさんと過ごしたらどうだ? 極端な話、甘えるのもありだと思うぞ」


 黙り込んでしまった。俺なんか変なこと言っただろうか。


「どうしたんだ?」

「……あんたはどうなのよ?」

「俺は、どっちでもいいさ。正直誰かに甘えるほど寂しくないし」

「……嘘つき」

「はぁ? 俺が嘘つきだと?」


 すると本郷はいきなり俺が腰掛けていたベッドの隣にドサッと座り込んできた。


「あんただって寂しいくせに」

「お、おい」

「……今日はあんたと過ごから」

「お、俺と!?」

「あんたが言い出したんじゃない。それともなにか問題でもあるの?」


 こう、静まり返った二人きりの空間でほぼゼロ距離で近づかれるとやはり意識してしまう。


「い、いや、何でもないけど」

「けど、何? あんただって今日誕生日なんだから、誰かと過ごすべきじゃない」

「俺はほら、立場的に――」

「立場なんて関係ない!」

「お、おい。大声出すなよ」

「あんたがいけないんでしょ!」


 なぜ俺のせいなんだ。


「とにかく。今日はお互いの特別な日なんだから」

「……そうだな」


 ま、こういうのも悪くない。


「って、何でお前は俺に寄り掛かってるんだ」

「ちょうど程よいポジションに肩があったから」

「あのなぁ」

「今日はあんたにあ、甘えてもいい日なんだから」

「はぁ」


 人の気も知らないで。


「あんたの肩、がっしりとしてる」

「そりゃ毎日鍛えてるから」

「わざわざ喧嘩のために?」

「何だよその言い方」

「でも、頼りがいはあるわ」

「どうも」


 本郷が俺にくっついていると本郷の些細な動きの度に意識させられて、非常に厄介だ。


「なあ本郷。その、離れてくれないか?」

「……」

「おい、本――」


 横を向いて、そこで止まった。

 本郷がスー、と微かな寝息をたてて寝ていた。


「やっぱり……反則だな」


 静かに眠る本郷の寝顔を見て、俺は確信した。



 ――俺は恋というものを本郷にしてしまったようだ。




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