偽装表示調査
最近は、食品の偽装表示が問題となっているとのことで、H会社でも、その調査を進めることにした。
食品の偽装表示といえば、例えば高級な食材を使っていると思わせて、実は安い材料や代用品を使っていたり、産地を偽っていたりするものだ。他にも、「フレッシュ」と表示しているにも関わらず、冷凍物を使っていたという例もある。
H会社は食品を扱う会社だが、社長はとても厳しく、「すべて嘘偽りない表示をすること」を徹底していた。おかげで、顧客からの信用も厚く、順調に業績を伸ばしていた。
案の定、調査員は徹底的に表示を調べたが、特にこれと言って偽装されているようなところは見つからなかった。
「こんなことをしても無駄だというのにのう」
「まったくですよ。うちに限って偽装表示なんて、ある訳ないじゃないですか」
「万が一にでもあったなら、その部署の社員は減給処分か解雇処分だな」
役員たちは、偽装表示なしに自信を持ち、会議室で余裕の表情を浮かべていた。
ところが、ここで一人の社員が、慌てて会議室に駆け込んできた。急に会議室のドアが開いたので、役員たちは腰を抜かすところだった。
「た、大変です! わが社の商品に、偽装表示が確認されました!」
「なんだと? 一体どれが偽装表示だというのだ」
「それが、『おいしい卵かけごはんのもと』に偽装があったとのことです!」
「おいしい卵かけごはんのもと」は、H会社創業以来のヒット商品で、年間一千万個は売れている大ヒット商品である。しかし、これまでにクレームらしいクレームは一切入ったことはない。
「一体、何が偽装だというのだ?」
社長は商品を手に取り、パッケージや原料名を見渡すが、これと言って偽装していると思われるところは見当たらない。
「じ、実は、この『おいしい』というところが偽装だったのです!」
「な、何!?」
試食経験もある社長がわけもわからず驚いていると、営業部長が「ああ、そういうことか」とぽんと手を叩いた。
「どおりで、普通の店では売れないと思ってたんです。やたら牛や豚の飼料用での発注が多かったですからね」
食品偽装って、細かいところまで言われているみたいですね。「おふくろの味」と書かれているのが「中年男性シェフが作った」って言うだけで偽装とか言われるネタがありますが。
とはいえこの食品偽装問題、産地や代替品はともかく、アレルギー持ちの人が食べる場合が問題となると思うのです。
アレルギー食品が入っていないと思っていたら実は入っていた、となれば、命に関わる問題ですから。