表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/18

データ2 セーブしますか?

 勇者に選ばれたのは、私でした。


 最悪だ。自分が選ばれるとは思ってなかった。開口一番、意味不明。しかもこんな、こんなダサい服の勇者に。いやダサいのは今関係ないか。


 でも、この5人の中から選ぶとしたら、私は除外第一候補でしょ。私だったら絶対選ばない。だってこの後、魔王の所まで行くんでしょ? 絶対魔物や魔人と戦うじゃない。狩りもしたことのない、この私が。

 痛いの嫌だよ? 怖いし。それに魔法はちょっと使える程度で、戦いには向いてない。だから、勇者に聞いてみた。


「あの、どうして私なの?」

「え?」


 きょとんとした顔をして、勇者は聞き返してくる。聞こえなかったのか、それとも予想していなかった質問なのか。もう一度聞いてみる。


「どうして私を選んだの?」

「……あぁ! それは君が一番伸び代があるからだよ」


 どういう意味だ、と聞く前に体が勝手に勇者を殴っていた。全身に立った鳥肌が止まらない。

 大人達が駆け寄ってきて、勇者を心配し、私を取り押さえた。これはいけないことをしたようだ。反省反省。


 勇者は体についた砂をはらいながら立ち上がる。幸い、どこにも傷は付いていない。良かった。逆恨みされても困るからね。

 そうして私の目を見て、手を差し出した。


「よろしく、マイア!」

「私の質問は無視?」

「いいからいいから。はいっ」


 私の手を掴んで、無理矢理握手させてきた。

 私に拒否権はないの?

 私の名前をなぜ知っているの?

 私を選んだ理由は?


 疑問は全部何処かに飛んでいった。

 握手をした手の上、というか目の前ね。さっきみたいに、半透明の四角いやつが現れた。また、文字が書いてある。えーっと何々……。



【忠誠の誓い 〜勇者・カオスとの旅〜】

『勇者と握手を交わした。魔王を倒し世界に平和をもたらすその刻まで、君と共に戦おう。例え命が果てたとしても。▶︎』



「……命?」


 ぞわりとした感覚が背中を這って、思わず手を振り払う。右手の小指が、熱い。恐る恐る見てみると、青白く光る指輪のような紋章。

 勇者の手にも同じように、右手の……親指に紋章は現れている。一体何なのこれは!


「ふぉっふぉ、ついに魔王討伐への一歩を踏み出しましたな。勇者様よ」


 そう言ってこちらに出てきたのは長老、もとい村長。でっかい杖を支えに、なにか言っている。これが一歩、ですって?

 勇者が選べるのなら、私にも選ばせなさいよ。長老の言葉をよそに、勇者へ問いただす。


「なにこれ」

「これは忠誠の誓いと言って――」

「違う。これ!」


 異議を唱えさせてもらう。勇者は紋章について言おうとしているようだ。でもそれ以前に、この半透明の四角いやつ。さっきから見えているこれは、何なんだ。

 また勇者は、きょとんとした顔をこちらに向けている。私ってばもしかして、的外れな事言ってる?


「マイア……これが見えているのか?」

「あんたが来てから見えるようになったけれどね。で、なにこれ」

「マジで⁉︎ そっか、そんなことあるんだ」


 お腹を抱えて笑い出した。

 笑える要素、どこにもないけど。


 でも勇者の反応を見る限り、見えちゃいけない物が見えてるのかな。周りにいる皆に目を向ける。皆、首を傾げている。

 こんなにはっきり見えているのに。勇者に選ばれなかった、歳の近いジュピターに聞いてみた。


「これ見えないの?」

「ごめん、マイア。僕だけじゃなくて、多分誰にも見えてないよ」


 皆頷いている。勇者のせいで、見えてはいけない物まで、見えるようになってしまった。あぁ、もう嫌だ。


 ――その時だった。

 私の思考を遮るように突然、白く輝く大きな光が現れた。次から次へとなんなの、もう。頭爆発しそう。


『……しゃ。……勇者カオス。それからマイア。契りは結ばれました。魔王を倒す準備は、覚悟は。できていますか?▶︎』

「ハイ!」


 鈴の音のような、軽やかな声が質問してくる。またあの半透明の四角いやつだ。白い光と一緒に浮かんでいる。あと何回見せれば気が済むの。

 勇者が元気の良い返事をしている。私には返事をする元気は、既にない。


『この先の旅は長く、辛いものになるでしょう。それでもお行きなさい。世界に平和をもたらす為に。▶︎』

「マイアと頑張ります!」


 勇者の返事と合わせて、白い光は空へ向かって消えてしまった。半透明の四角いやつも、ついでに消えた。一瞬の静寂のあと村の皆が、ざわつきだす。


「今のは……女神様ではないか⁉︎」

「俺にも聞こえたぜェ。美人の声だ」

「アタシは選ばれなかったのねぇ。ざんねぇん」

「この村で、勇者様の活躍を見守りますか」


 あー。ダメだ。これ。皆もう勇者が旅に出る方に意識行ってる。私に拒否権ないや。諦めて項垂れる私の肩に、ぽんと触れた勇者の手。


「一緒に行くぞ、マイア!」

「…………」


 誰も教えてくれない答えに、私は無言を貫く。どうしたら勇者について行く気になれるんだ。


「マイア! これを持っていきなさい」


 顔を上げると、お母さんが駆け寄ってきていた。手には薬草の束と手作りサンドイッチ、それから魔法の杖(マジックワンド)。先端に埋め込まれたエメラルドの輝きを、綺麗な装飾が一層映させる。

 こんなに良い物を、用意してくれてたなんて。お母さんの思いを無下にするわけにはいかない。っていうか、できないよ。

 受け取って握りしめて、私はお母さんに誓う。


「お母さん! 私、このアホと一緒に世界救ってみせるから!」

「お願いだから勇者様と呼んで、マイア」


 お母さんの為だから。仲良くできるかは置いておいて、私は勇者について行く事にした。無理だと思ったらすぐに逃げ帰ってやるから。

 お母さんと抱きしめ合って、勇者に向き直る。


「行くわよ勇者。これからどこに行くの?」

「次の町に行きたいんだけど、ちょっとだけレベル上げでもしようかなー」


 …………なんて?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ