表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/17

データ16 カナハの森 南東:カオスLv.12

 ちょっ……と待ってよ。

 なんで2人ともいないの。

 身体がひとりでに、カタカタと震え出す。まだ昼間のはずなのに、夜みたいに闇が迫ってくる。風が吹いては、木々がざわめいた。


 こんなところに独りはキツいわよ。

 この場に留まる? もしかしたら2人が戻ってくるかも。それともピュレイの丘に戻る? いや、魔物に襲われたら太刀打ちできる自信はない。


 どうする、私。考えろ、マイア。


 ……そうは言っても、考えなんて上手くまとまるわけもなく。握った杖は手汗で湿っていった。何度辺りを見渡しても、人は私だけ。


 無理すぎる。なんでこうなったの。だからカオスの腕にしがみついていたのに。マイアのばか。


『ふふ……』

「ッ誰⁉︎」


 どこからともなく聞こえた、くすくすとこだまする笑い声。幻聴であれば、どんなに良かったか。笑い声は次第に、はっきり大きくなっていく。涙が勝手ににじんでくる。


『こっちだよ』


 目の前にふわりと浮かんだ3つの光。見たくもないのに目に入ってくる。よく見るとその光は、人型をしていた。

 人の手 くらいしかない、小さな人がふわふわ浮いている。逃げたいのに、逃げられない。足が動かなかった。


「……魔、物?」

『失礼しちゃう! あんな野蛮な奴らと一緒にしないで! ねぇルル?』


 長い髪を後ろでまとめた、ツリ目の女の子は言った。ほっぺをぷくっと膨らませて、怒っている。


『まぁまぁ、人間から見たら一緒なんだよ。しょうがないよー。そうだよね、ロロ』


 ルルと呼ばれたその子。肩の辺りで揃えられた髪を揺らす、タレ目の女の子は言った。困った顔で、笑っている。


『どうでもいいから、早く本題に入りなさい。ララ』


 ロロと呼ばれたその子。自分の体程ある長い髪を整えながら、切れ長の目の女の子は言った。無表情で、どうでもよさそう。


 そして、ララと呼ばれた怒っている子。私の顔の前まで飛んできて、器用にピタリと止まった。体も動かない、声もまともに出ない私に、小さな指を指し示した。


『ちょっとあんた! 謝りなさい!』

「な、なにに……?」

『何って決まってるじゃない!』


 3人が集まって、私の周りをくるくる回り出す。そして目の前で仲良く決めポーズ。


『魔物って言ったことをよ!』

『びっくりさせてごめんねぇ』

『ララ早く本題を話しなさい』

「……」


 全員同時に違うことを言ってきた。聞き取れたような、聞き取れなかったような。不思議なトリオだ。


「えっと……まずはごめんなさい。訂正する。それで、私はどうしたら……?」


 無表情の子――ロロが、長い髪を揺らしながらすぃっと横に飛んでくる。私の手の爪ほどの小さな本をめくりながら、語り出す。


『ロロたちは、アルセイス三姉妹。この森に住まう……人間で言うところの妖精ってやつかしらね。今困ってるの、ロロたち』

「私も困ってる……! 仲間とはぐれたの」

『奇遇だね』


 困り顔の子――ルルも、私の横へ飛んできた。そわそわと落ち着きがなくて、なんだか楽しそうに見えた。


『お互い困ってるならさ、協力しない?』

「協力……」


 胸の前で杖を強く握る。頼れるとしたら、この子たちしかいない。でも、信じていいのかな。いたずらしている可能性も、あるよね。

 私の不安は怒っていた子――ララが、ぬぐってくれた。


『ララたちは嘘なんてつかない』


 ララはゆっくり私の元へ来た。怒っていたはずの表情を、真剣そのものに変えて。


『あんたの言う本物の魔物が、この森を荒らしてんの。家を荒らされたら嫌でしょ? そういうことよ』


 確かにそれは嫌だな。私の部屋にカオスが来たら、ボコボコにする自信あるわ。


「つまり、その魔物を、倒せばいいの?」

『そゆこと。一緒に戦ってくれる? そうしたら、あなたの仲間を探してあげる』


 可愛らしく首を傾げたララだったけれど、私は黙ってしまった。魔物ってどれくらい強いんだろう。戦いという言葉に、心臓の音は速くなっていく。


 私1人で倒せるわけないよ。カオスとテオ先生がいるのって、結構心強かったんだ……。この子たちが一緒だとしても、自信ない。


『大丈夫大丈夫! ルルたちがついてるよ』

「でも……」


 ルルが私を元気付けてくれる。それでも私は肯定も否定も、できないでいた。カオスたちと離れた今、ここから動いていいのかも分からないし。そもそも怖い。


『……仕方ない。アレをやろう』


 そう言ったのはロロ。私を見かねてだと思う。3人は頷き、私の頭上で手を握り合った。三角形の魔法陣が浮かび上がって、頭の先からつま先まで一直線に下りた。


『トライアド・エンチャント!』


 3人の揃った優しい掛け声が聞こえる。柔らかくて温かい光が体を包んだ。そして、メッセージウィンドウは現れたの。


【カナハの森の加護】

『アルセイス三姉妹がエンチャント(ランダム)を付与しました。▶︎』


 カオスがいなくても、出てくるんだ。加護と書いてはあるけれど、内容は書いてない。頭の上からは、ふぅと息を吐く音が聞こえた。


『成功してよかったね』

「失敗する可能性あったの⁉︎」


 誰が言ったかまでは分からなかった。失敗していたら、どうなっていたんだ。しかも何をされたのか分からないし。心配倍増。


『どう? 落ち着いたでしょ』

「……え? あ……」


 体の震えは、いつの間にかおさまっていた。ひょっとしたら心が落ち着くような、魔法だったのかもしれない。

 戸惑う私の前に、3人は案内するように前へと出る。


『じゃ、ついてきて。森の奥から気配を感じる』

「う、うん。分かった」


 カオスとテオ先生を見つける前に、魔物と対峙する羽目になってしまった。暗闇に吸い込まれるように、アルセイス三姉妹と私は森の奥へと向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ