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第十九話

 てなわけで、早速ポーション作りの下準備からはじめることにした。


 まずは、錬金に必要な素材を手に入れるところからだ。


 必要なのは、現代世界にもあったヨモギに、異世界ならではの素材がいくつか。それを手に入れないとね。


 そして、錬金機材とそれらを置く場所も必要だ。


 場所については「錬金小屋」を職人区画に建てることにした。


 錬金機材は製作スキルのリストを眺めていたら発見したので問題ない。


 この製作リスト、本当になんでもあるよね。


 ヨモギは森から採ってきてもよかったけど、大量生産するためのことを考えて畑で育てることにした。畑区画の一部をハーブ園にすればいいだろう。


 しかし、結構大掛かりなプロジェクトになってきたな。


 ひとりでやると相当な時間がかかりそう。


 ここは有能なお手伝いさんたちに協力してもらうか。



「ごむごむ!(集まったよ、お屋形様!)」

「我らオークにお任せを!」



 ログハウス前に集まってもらったのは、ゴレムとオークさん、それに樹木のモンスター、スプリガンさんだ。



「じゃあ、ゴレムとオークさんたちは錬金小屋の建設をお願いします」 

「ごむごむ(了解だよ!)」

「……承知いたしました!」



 ゴレムがビシッと敬礼したのを見て、オークさんがぎこちなく敬礼した。


 全員に製作スキルで作った【収納カバン】を渡し、僕は畑区画へと向かった。


 彼らが建築をしている間、僕はハーブ園作りだ。


 ハーブ園は、職人区画の向かい側に作る予定。


 この距離だったらヨモギを摘んですぐにポーション錬金ができるからね。大量生産する予定だし、移動時間はできるだけ短縮したい。



「……よし。ここらへんでいいか」



 畑区画を一部を【木の柵】で区切ってから【鉄の鍬】で地面を耕していく。


 ふわふわの畝が出来たところで、薬草の種を植えていく。


 この種は事前に樹木のモンスター、スプリガンさんに採ってきてもらった。


 お願いしたらものの10分足らずでバッグ一杯の種を持ってきてくれたんだよね。流石は森に詳しいスプリガンさんだ。


 ていうか、この森って本当になんでもあるよね……。


 スプリガンさんが持ってきた種は、ヨモギ以外にも色々な種類があった。


 カモミールにセージ、ローズマリーなどなど。


 どれも体に良さそうなハーブだし、そのうちヨモギのポーション以外も色々作れそう。 



「しかしカズマよ、少し気になることがあるのだが?」



 薬草の種を植えていると、作業を眺めていたハクが不安そうに尋ねてきた。



「今から薬草を育てるとなると、ハーブが成長する頃にはヒサシは死んでいるのではないか?」



 どうやら時間がかかりすぎるのが心配だったらしい。



「ああ、そういうことか。大丈夫だよ。アルレーネ様と精霊さんたちがハーブの育成を助けてくれるみたいだから」

「育成を手伝う?」



 不思議そうに首をかしげるハク。


 一からヨモギを育てるとなると数ヶ月単位の時間がかかる。


 それじゃあハクが言う通り遅すぎる。


 ──まぁ、ヒサシは死ぬことはなく、むしろ元気になってると思うけど。


 とにかく、その問題はすでに対処済みなんだよね。



「安心して待っててよ。すぐにヨモギのポーションを作ってヒサシに──」



 と、そのとき、優しい風がハーブ園に吹いた。


 種を植える手をふと止めて顔をあげると、いつの間にか僕の周りに精霊さんたちが集まっていた。


 風の精霊に大地の精霊。


 皆、楽しそうにふわふわと飛んでいる。


 そんな彼らに促されるように、美しい緑色のウエーブヘアをなびかせながらアルレーネ様がやってきた。 



「準備はよろしいでしょうか、カズマ様?」 

「はい。バッチリです。お願いします」

「……では」



 アルレーネ様が両手を広げ、ふわりと宙に浮かぶ。


 そんな彼女の周りで、精霊さんたちがくるくるとダンスを踊り始めた。


 まるで朝露にきらめく蝶たちが、ひらひらと舞い遊ぶように。


 以前、アルレーネ様たちが農園にやってきたときに披露した「精霊舞踏」だ。


 植物の成長促進効果がある、不思議なダンス。



「さぁ、命の子らよ。眠りから目覚め、緑の歌を響かせるのです」



 アルレーネ様の柔らかい囁きが、風の中に溶けてゆく。


 精霊たちの羽根から光の粒がこぼれ落ち、大地へと降り注いだ。


 途端に大地が息づきはじめ、ぽつり、ぽつりと小さな芽が土の中から顔を出しはじめる。


 その芽はぐんぐんと伸び、まるで季節の移ろいを飛び越えるかのように、緑の調べを奏ではじめた。



「お、おおお……すごい!」



 僕の口から、思わず感嘆の声が漏れ出した。


 精霊舞踏を見るのはこれで2度目だけど、何回見ても感動しちゃうな。


 ものの数分で、瞬く間にハーブ園にさわやかな良い香りが漂い始める。



「なるほど、こういうことか」



 わふっとハクが吠えた。



「アルレーネらに協力してもらうとは考えたな、カズマ」

「レシピも教えてくれたし、本当にアルレーネ様には感謝してるよ」

「……っ!? そっ、そんな、みみ、身に余るお言葉です!」



 恥ずかしそうに髪の毛でサッと顔を隠すアルレーネ様。


 そんなことを話しているうちに、ヨモギは収穫できるくらいに成長していた。


 早速いくつかヨモギを採取して、錬金小屋へと向かう。


 さてさて、錬金小屋建築の進捗状況はどうかな。


 骨組みくらい出来ていたら嬉しいんだけど──と思ったんだけど。



「……わ、もう完成してる!?」



 シャドウさんの服屋の隣に、立派な小屋ができていた。


 僕が作った【木の壁】を使って建てているので見た目は他の小屋と同じだけど、まさかこんなに早く完成するなんて。


 近くで休憩していたオークさんに声をかける。



「す、すごいですね。まさかもう完成しているとは思いませんでした」

「いやいや、私たちは軽く手伝っていただけですよ。ゴレムたちの手際がすごく良くて」



 なんでも、ほぼゴレムたちだけで完成させたのだという。


 そんなゴレムに話を聞いたら、「ごむごむ~(小屋づくりはもう慣れたからね。これくらいの大きさだったら、ちょちょいのちょいで建てられるよ)」とドヤられた。


 彼らに渡した【収納カバン】に入れていた錬金機材も設置してくれたらしい。


 可愛いし、実に頼りになる奴らだ。


 どれどれ、錬金小屋の中を拝見させてもらおうか。



「……おお、すごくいいじゃないか!」



 こぢんまりとした部屋だったけど、機能性が高くでおしゃれだった。


 狼小屋や住居と同じ木目の壁に、小さな窓。


 火を焚く火床と、鍋が見えた。


 火床の前にあるテーブルには、ポーションを精製するためのフラスコや薬草をすりつぶすためのすり鉢と乳棒が置かれている。



「ごむむ(お屋形様が作業しやすいよう、必要なものだけ並べてみたよ)」

「ありがとう。助かるよ」

「ごむむん?(どうする? すぐに作業をはじめちゃう?)」

「そうだね。ヨモギは手に入れたし、はじめようか」



 善は急げだ。


 とはいえ、事は慎重に。


 作業手順を間違えないよう、アルレーネ様を呼んで見てもらうことに。


 一緒にやってきたハクは、体のサイズ的に小屋の中に入られないので窓のそとから見守ってもらう。 



「頑張ってください、カズマ様」

「頼むぞ、カズマ」

「うん、任せて」



 ふたりに応援され、気合を入れる僕。


 まずは、ヨモギをすり鉢に入れ、すりつぶしていく。


 香りが立ち始めたら良し……だったよね。


 ごり……ごりごり。



「いい感じですね」



 アルレーネ様が、ひょいとすり鉢を覗き込む。



「ちなみに、このヨモギの葉から出る汁には微量ながら魔力が含まれていまして、殺菌と治癒効果があるんですよ」

「へぇ、そうなんですね」



 一ケガをしたときのために覚えておこう。


 あれ? でも、そんな効果は現実世界のヨモギにはないよね?


 異世界特有のものなのかな? 


 水が入った鍋を火床で沸騰させ、すりつぶしたヨモギを入れる。



「これでよし、と。次は精霊を呼び出す、でしたっけ?」

「はい、そのとおりです」



 こくりとアルレーネ様が頷く。


 確か呪文のようなものを唱えるんだっけか。


 木杓子で混ぜながら、アルレーネ様に教わった言葉を口にした。



「アクエリア・ナダ、清き流れの母よ。その雫をもって命の器を満たし給え」



 言い終わると同時に、ヨモギを入れた鍋の湯が少しづつ輝き始めた。


 おお、なんだこれ!?


 魔法っぽいぞ!?


 アルレーネ様が満足そうに微笑む。



「はい、これでオーケーです。お次の素材を入れてください」



 次に【神樹カバン】の中から【火トカゲの鱗粉】というアイテムを取り出す。


 これを入れることで水温が安定し、煎じ効果が高まるらしい。


 ちなみに、この鱗粉はサラさんの体から頂戴したものだ。


 お願いしたら「ええっ!? 私の汗臭い鱗なんて何に使うんです!?」と軽く引かれてしまった。


 いきなり変なお願いしてすみません。


 慎重に【火トカゲの鱗粉】を鍋に入れていく。


 色が淡い翡翠色に変化すれば成功──みたいなんだけど。



「……あ、色が変わってきた!」

「成功ですね。あとは魔力濾過をすれば完成です」



 魔力濾過とは、鍋の中身をフラスコに移し、布のフィルターで残留物に付着した魔力をこす作業のことだ。


 そして、フィルターで残留物を除去して出来上がった液体を小瓶に移せば「ヨモギのポーション」の完成だ。


 小瓶に移している間に、だんだんとポーションが冷えてきたらしい。


 甘い蜜と草花の香りが濃くなっている。


 すごく良い香りだ。


 お腹の調子を整えるだけじゃなく、安眠効果もありそう。



「わぁ! すごいですカズマ様!」



 完成したヨモギのポーションを見て、アルレーネ様が感激したようにパチパチと拍手をしてくれた。



「かなり質が高いポーションが完成しましたよ! すごい! 流石です!」

「あ、ありがとうございます。先生の教え方が上手だからだと思いますよ」

「せっ……先生!? わ、私のことですか!?」

「はい。色々教えてくれてありがとうございます」

「わ、わ、私は……何も……えと……その……」



 アルレーネ様の声が尻すぼみで声が小さくなっていく。


 終いには顔を真っ赤にして宙に浮かび上がると、ふわふわとどこかに飛んでいってしまった。



「……む?」



 そんな彼女と入れ替わって、ハクが入り口から顔を覗かせる。



「何やら騒がしいが、もうポーションができたのか?」

「うん、アルレーネ様のおかげで完成したよ。早速ヒサシに飲ませにいこう」

「おお、本当か!」



 嬉しそうに尻尾をブンブンと振り回すハク。


 そんな彼の背中に乗って、狼小屋に急ぐ。


 小屋のすみっこでうずくまっていたヒサシにポーションを見せたんだけど「本当に効くのそれ?」と眉をひそめられてしまった。



「だって、なんだか草みたいな色してるし……」

「まぁまぁ、ものは試しだよ。ちょっと舐めてみてよ」

「……うん」



 言われるがまま、ポーションをぺろりと舐めるヒサシ。


 すると、さっきまでの疑心暗鬼が嘘のように消え、ぱあっと顔が明るくなる。



「……えっ!? なにこれ美味しいっ!?」



 どうやら香りだけじゃなく、味も良いらしい。


 後で僕も飲んでみようかな。


 その味がヒサシ好みだったのか「もっと飲みたい」とせがまれたので、ポーションを口の中に流し込んだ。


 そして、ゴクリと飲み込んだ瞬間、今までだるそうに横になっていたヒサシがすっくと立ち上がった。


 ぞわぞわと全身の毛が逆立ち、全身から力がみなぎっているように思える。


 ……え? もう効き目が出たの?


 ウソでしょ?



「た、体調はどう?」

「な、なんだか身体の中から、力がすごい湧いてくる!」

「え? 力?」

「こ、ここ、これはじっとしていられないよっ! わお~~~~~ん!」

「うわっ!?」



 突如、小屋の中をバタバタと走り回りはじめたヒサシは、勢い余って入り口の扉をぶち破り、そのまま外へ飛び出していった。


 そんなヒサシをぽかんとした顔で見ている僕とハクたち。



「……げ、元気になったようで、なによりだな? カズマ?」

「いや、ちょっと元気すぎじゃない?」



 お腹の調子が治ったのは良いけれど、なんだか随分とパワーアップしている気がするし。


 アルレーネ様のポーション、ちょっと効果ありすぎやしませんか?

第二十話は明日10時更新です!


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