再び
2日後、俺は空港の中にあるカフェで朝食を摂っていた。
「フランスに来たなら、コレは食べとかないとな」
ガレット、その中でもブルターニュガレットだが、初めて食べた時はヨーロッパでもそば粉が使われてるのかと驚いたものだ。まぁ、中国でも小麦使ってるから不思議でもないのかもな。
ナイフで黄身をわり、ガレットを切り分け、口に運ぶ。
「美味いな」
そうして朝食を食べていると、ウェイターから声をかけられる。
「あちらのお客様からです」
コーヒーが運ばれてきた。手で指し示された方向を見ると、こちらに手を振るレティシアがいた。
「……なんでいんの?」
「アナタの旅に同行したいからですヨ」
「マジで?………俺が言うのもなんだけどさ、色々大丈夫?」
「シンパイありません。」
「あぁ、そう。ならいいんだけど」
本来ならば、エジプトへ直行するつもりだったがレティシアがスペインに行きたいからと、連れて行かれた。今回はホテルじゃないし良いんだけどね
「エーテルってなんなんですカ?」
「高密度の魔力、かな?本質的にはちょっと違うんだけどね」
「あと、手裏剣投げてましたよネ。ニンジャなんですカ?」
「一応、そうではあるね。」
そう言うとレティシアが目を輝かせる。
「ホントですカ!!」
「そうだよ。でもあんま期待すんなよ。基本的に俺は魔術師だから」
「アナタの魔術って属性魔術ですヨネ」
「……魔術師相手にそういうの聞くべきじゃないよ」
「当たってるってことですカ?」
「かもね。」
曖昧に返事しておく。何が目的でついて来たのか分からない以上、あまり話すべきではない。
「エジプト、どこ行きますカ?」
「俺の祖父母の所。エジプトはそこで寝泊まりするからね」
「今回はホテルじゃないんですネ」
「金はあるとはいえ、節約出来るならするべきだろ」
「ワタシも一緒にいいですカ?」
「お前、何言ってんだ?」
何が彼女をそこまで動かすのか。初対面から1週間も経たずに、見知らぬ男と旅をし、あまつさえその男と一緒に居ようとする。本当に理解できない。
「ホテルとかとってないの?」
「そもそも、アナタのホテルに泊まる気ですからネ」
「マジかよ。」
ただ、放って置くわけにもいかない。彼女がここまで来たのは曲がりなりにも俺が原因ではあるし、
「………いいよ、来な」
苦笑しながらそう言う。
「ただし、次からはちゃんと取れよ」
「わかってますヨ」
「ところでさ、お前って何を求めてついてきたの?」
「魔術を極めること。それ以外に目的があるト?」「魔術師だね。で、着いてきたってことは属性魔術を極めたいってことか?」
「そうデス。」
「適正は………水か。じゃあコレだね」
「なんですか?コレ」
懐から出したオイルタイマーを不思議そうに見つめている。
「オイルタイマー、原理は分かるな」
「分かりますヨ」
「コイツは逆さまにすると、軽い油が上に、重い水が下にいく。」
逆さまにすると、青く着色された水が下に、油が上に入れ替わっていく。インテリア故に正確な時間は測れないが、見ているとそこそこ面白い。
「やることは単純、コイツを固定しろ。水が下にいかないようになれば、次の段階に進む。いいな」
「分かりましたケド、簡単すぎませんカ?」
「単純と簡単は違うよ。そう思うならやってみせな」
レティシアは早速挑んでいるが中々上手くいっていない。ただ、出来ていない訳ではなく、一瞬くらいの固定ならちょいちょい出来ている。
「久しぶりねぇ、元気だった?」
「うん。まぁ、なんだかんだ元気だよ」
「そうか、それで彼女は?」
「あぁ………まぁ……一応、友人?かな?」
「ガールフレンドでもいいんですヨ?」
「それはない」
即座に否定する。グランパとグランマは目を丸くしていたが、今は笑っている。
「何笑ってんの?」
「いや、息子たちにそっくりだと思ってな」
「孫の顔、楽しみにしてるわね」
「あぁ」
「ねぇ、ご主人様。ご飯にする?お風呂にする?それともどっちも?」
「今は飯で」
「はいはーい!」
「貴方、メイドなんて雇ってたのね」
「そうだよ。俺の専属メイドだ。」
「明日、何処行きますカ?」
「とりあえずは、ピラミッドとエジプト博物館には行きたいな」
そう言って地図を広げる。アプリでも大丈夫だが、こういうのはアナログな方が雰囲気が出る。
「そういえば、何のために旅してるんですカ?」
「自分探し、って言わなかったっけ」
「何もないのに自分探しとかしますカ?」
「何もないから自分探ししてんだよ。いや、何もないは嘘だわ、無くしたから探してんだよね。」
飯を食って、後は寝るだけ。なのに寝付けない。
仕方がないので、ベランダに出て空を見上げる。少し雲が出ているが充分見える。
「まぁまぁだな」
「ココにいましたカ」
振り向くと、レティシアがベランダに来ていた。
街の明かりと星の光、その両方を受けてレティシアのブロンドがキラキラと輝いている。
「お前も寝付けないのか?」
「フランスの外に出るの、久しぶりなんですヨ」
「大統領令嬢ってなると、色々不便なんだね」
「アナタは、何を求めてるんですカ?」
「………俺が求めてるもの?なんだろうな。言語するってのは難しいけど、過去への贖罪。かな?」
「過去への?アナタ、何歳なんですカ?」
「この身体でいうなら、16だね。」
「この身体で?」
「いや、忘れてくれ。おやすみ」
適当に誤魔化して立ち去る。いつかは話すだろうがまだその時じゃない。




