未来の為に
1月30日修正しました
お目当ての主は堂々とそこに立っていた。
「コナン・ロシュフォール。」
「誰かと思えば、マクロン君の一人娘か。あぁ、それで彼女を助けたのは君たちか」
「おかげ様でせっかくの観光が台無しだよ。どうしてくれんだ?」
大袈裟に身振り手振りを交え、話しかける。
「それは申し訳ない。しかし、この計画は1日でもはやく実行しなければならないことなのだ。よければ、この計画が終わった後で知り合いのレストランをご馳走しよう」
冗談めかすでもなく、あくまで本気。と言った感じだ。
「そいつはありがたい。アンタとソイツを倒した後でありがたく頂くとするよ」
「すまないが、この召喚獣を倒される訳にはいかない。コレにはこの国の未来を支えて貰わなければならないのでね。」
「未来?ホムンクルスを使い潰して、今を犠牲にして未来を支える?傑作だな」
「アナタのことは尊敬していましタ。フランスのことを誰よりも考えているト、でもアナタは違ッタ。」
「それは誤解だよ、レティシア・マクロン。私はこの国のことを考えているさ。100年先の未来のこともね。」
「その為に今を犠牲しても良いと?」
「それが未来の為ならばね。君には分かるだろう?レティシアくん」
「ソレは、………」
わかってしまう。父が当選し、大統領となるまで、沢山の人間を蹴落としてきた。そうでなければ理想なんて実現できない。父はそう言っては苦笑していた。
あの人は本当にフランスのコトを純粋に思い、その為に行動してきた。それは父からも聞いていたし、
ならば、たとえ犠牲が出るとしても、その行動は間違っているのか?
犠牲のでないコトなんてこの世界には存在しないのではないか?
なら、コレは当然のコト?
「ふざけるなよ」
そんな沈黙を俺の声が打ち砕く。
「私がふざけている、と?」
「あぁ、そうだ。アンタは間違ってる。」
「何がだい?この世界に犠牲なくして成せるものはない。それが間違っていると?」
「犠牲が避けられないことと、犠牲を増やすことは話が別だ。あんたの行動は犠牲をつくり、それを増やしてる。」
「ホムンクルスの事かい?」
「それもある。だいたい、倫理的に問題があり過ぎる技術なんて将来的なエネルギーとして余りにも致命的だろ。」
しかし、コナン・ロシュフォールは冷静に答える。
「それすら無視できる力がコレにはあるんだよ。世界すら無視できる力がね」
「なるほど、分かり合えないみたいだな。」
「……残念だよ。君たちのような若者が未来を作るというのに」
コイツ、本気だ。そう感じとった瞬間に反射で武器を抜く。
「俺も残念だよ。アンタみたいな人間が居続ければフランスは安泰だってのに」
「やれ、」
声と共に獣がブレスを放つ。一国のエネルギーを賄える程の魔力。その一部とはいえくらえばひとたまりもない。
「ココは私ガ!」
〈サント・エジード〉
レティシアの展開した光輝く結界がブレスの直撃から俺たちを防ぐ。
だが、このままでは床の方が崩壊する。
〈アダマ・ストラクション〉
床を強化し、固定。ブレスの方はレティシアの結界が防ぎ切った。だが、展望台の外壁はブレスに耐えきれず崩壊した。
「エッフェル塔壊してんじゃねぇよ。」
〈ケラ・レストラクション〉
出現させた氷の拘束具でドラゴンを押さえ付け、ブレスを封じる。
「無駄ですよ」
ドラゴンが全身から放出した魔力は容易に拘束を突破し、レティシアの展開した結界を容易に砕く。
〈ウォーア・レンド〉
吹き飛ばされるが、結界が魔力の大半を防ぎ、風のクッションが身体を受け止める。多少の打撲はあるが骨折はしていない。十分に戦える。
「魔力大丈夫か?」
「あと2回くらいは展開できますヨ」
「じゃあ、それは取っとけ。メタテ、ヤエ」
「承知しました」
「了解!」
〈エッシュ・タウラス〉
炎で型どられた巨大な牛を出現させ、突進させる。ブレスによって相殺されるが、メタテとヤエが接近する隙が出来た。
〈アダマ・エッサ〉
巨大な岩盤と共に重力場を発生させドラゴンを拘束、メタテとヤエが攻撃をいれる。
「無駄ですよ。何をしようが」
「俺はそうと思わないし、そうだとしても足掻かない訳にはいかないだよ」
「何故そこまでして私を止めようとするのですか?今すぐ逃げれば見逃しますよ?」
「マリーの愛したこの国を滅ぼさせる訳にはいかないんだよ。それに今を犠牲にして未来を守るなんて、間違ってる。」
「想い人ですか、そう思いたいのも分かりますよ。ですが、100年後のフランスを守るにはこれしかない」
俺はフッと笑った。あんまりにも考え通りの話をする相手が余りにもおかしかった。
「保証はあるのか?」
「保証?強いて言うなら、今のこの状況。未来の犠牲となるこの状況こそが何よりの保証では?」
コナン・ロシュフォールも強気に返してくる。
「じゃあ、その未来にアンタが生まれない保証は?」
「は?」
心底驚いた、そんな顔をしている。愉快な顔だ。
「分かってないのか?アンタが守ろうとした100年後のフランスを、更に100年後の為に犠牲にする奴が現れない保証なんてないと」
「そんな事はあるはずがない。この美しいフランスを犠牲にするなど」
「でも、アンタは今してるだろ。」
「それは、そんなはずはない。私のようにフランスを守ろうとする人間が、きっと」
コナン・ロシュフォールはもう気づいているはずだ、でも拒絶している。
大体、まだ見ぬ彼らがフランスを愛しているのなら
「アンタの守りたい100年後は更に100年後のために誰かが犠牲にするかもしれない今で、アンタの犠牲にしてる今は100年前の、マリーたちが守りたかった未来だ。
そして、マリーたちがこの国を愛し、未来の為に今を守ったからこそ俺たちの現在がある。
アンタはその想いを、願いを切り捨てる気か?」
「そんな、ことが、」
「アンタが守ろうとしてるって事は分かるよ。でも、アンタの理想もそのための犠牲も俺にはいらないんだ」
膝を折り、倒れ込むと同時にドラゴンとの鎖が切れ、ヤツが俺から解き放たれる。だが、遅かれ早かれおこっていたことだ。
「逃げなさい、君たちの手には負えない。ドラゴンとは、」
「知ってるよ」
ドラゴンは最強の生物だ。でも、
「それを倒してきたのが人間だろ」
6000年の間に竜を殺してきた彼らの栄光も戦いも、俺は見てきたんだ。
〈十拳勧請〉
竜種から放出された続けている莫大なエーテル。それを利用し、剣を錬成する。
〈ウォーア・スキャー〉
風によって空中に足場をつくりだし、ドラゴンへと接近する。
俺の攻撃を察知したメタテとヤエは、徒手から魔弾へと攻撃を切り替え、徐々に距離をとる。
「じゃあな!ドラゴン!」
〈天十握剣〉!
刃にありっけ魔力を纏わせドラゴンを一刀両断する。と、同時にこの世に現界出来なくなったドラゴンの身体は魔力へと霧散していく。
霧散し切った事を確認し、エッフェル塔へと戻る。
「大丈夫か?」
「大丈夫ですヨ。アリガトウゴザイマス。フランスを救ってくだサッテ、こんな言葉だけじゃ返せないデショウけど」
「いや、その言葉だけで十分だよ。」
「帰りましょうカ」
「そうだな」
そして、コナン・ロシュフォールの方へと向き直る。
「青年、すまなかった。」
「コナン・ロシュフォール。アンタはきっちり自首しろよ」
「分かっているさ。どれだけ国のことを考えていようと罪は罪だ。」
そう、見つめる先には、人が居なくなり、真っ暗になったパリの街が広がっていた。
「……最後に名前を教えてくれないか?」
「……カナン、クレフ・カナン・ハワード。それが俺の名だ。」
「クレフくん。ありがとう。」
「どういたしまして」
かくして俺たちを巻き込んだ新エネルギー開発計画の幕は閉じた。
だが、俺の追憶の旅はまだ始まったばかりだ




