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8.「vs女勇者リリレ(剣魔闘大会)」

「勇者なんだから勝てよ!」

「お前は勝って当然なんだからな!」


 そんなヤジが観客席から舞台へと飛ばされる中、一瞬頬を引き攣らせた赤色ショートヘアの美少女である女勇者リリレは、だがしかし、平常心を取り戻して、不敵な笑みを浮かべて俺に向かって言った。


「あんた、強いっすね! でも、自分の聖鎧には、あんたの〝風〟は効かないっすよ!」


 なんか勇者ってのも大変なんだな……と思いつつ、俺は「どういうことだ?」と問い返す。


「この聖鎧には、並の魔法なら全て弾いてしまうという特殊効果が付与されてるっす!」


 ドヤ顔で胸を張るリリレ。


 魔法?

 俺の衝撃波は、魔法じゃないんだが。まぁ良いや。


「なら、試してやるさ。まずは」


 ゴオオオオオオッ


 俺が足を少し速く動かして、暴風を発生させて、〝吹っ飛ばして場外〟という失格負けを狙うと。


「ふふん」

「なるほど」


 一回戦でロロシィスを吹っ飛ばした暴風に、リリレは仁王立ちで耐えてみせた。

 ロロシィスと違い、地面に氷柱を突き刺して掴む、なんてこともせずに。


「じゃあ、次は、本気で」


 ゴオオオオオオッ


 今度は足を速く動かして、衝撃波を放つ俺だったが。


「どうっすか?」

「……確かに厄介だな」


 聖鎧を身に纏ったリリレは、ビクともしなかった。

 っていうか、俺の衝撃波って、〝風魔法〟扱いだったのか。


 いや、もしかしたら、ただ単にあの鎧が硬度が高くて色んな衝撃に対しても耐性がある、というだけかもしれないけど。


「今度はこっちの番っす! 聖剣の錆にしてやるっす! たあああああああ!」


 聖剣を抜いて走ってくるリリレが、俺の眼前で振り下ろす。


「聖剣と言うくらいだから、きっとすごい切れ味なんだろうが、当たらなければ関係無いな」

「!」


 一瞬で回避、反対側へと移動して距離を取った俺に、リリレが驚愕して目を見開く。


「い、今のは練習っす! 今度こそっす! たあああああああ!」

「俺に当てるのは無理だ」

「!」


 軽く躱す。

 鎧を装備した状態でのスピードとしては、恐らく速いのだろうが、どちらにしても、〝人間のスピード〟である以上は、俺が食らうことは有り得ないからな。


「おいおい、せっかく見にきたのに、何やってんだ、勇者!」

「勝って当たり前なんだから、さっさと当てろよ!」


 ……ヤジが多いな。

 っていうかアイツら、対戦相手ですらない奴が、安全な観客席から何言ってるんだ?


 リリレは、「くっ!」と、唇を噛んだ後、「こうなったら、本気で行くっす!」と、剣を鞘にしまって、俺に手を翳した。


「今から撃つのは、雷撃っす! 降参するなら今のうちっすよ! 滅茶苦茶速いし、威力もすごいから、出来れば自分も、人間相手には使いたくないんす」


 雷撃か。〝中々良い〟な。


「構わない。撃ってくれ」

「なっ!? 分かってるっすか!? 〝雷〟っすよ!? 見てから回避するのはまず不可能っすよ!?」

「良いから撃て」


 リリレは、「ああもう! どうなっても知らないっすよ!」と叫ぶと、言葉を継いだ。


「『サンダー』!」


 バリバリ、ドーン


「思った通り、結構良かったぞ」

「………………へ?」


 リリレの手から放たれた〝水平方向に落ちる雷〟は、一瞬前まで俺がいた場所を通過して、観客席の前に張られた防御魔法にぶつかった。


 ピキッ


 恐らくどんな剣技や魔法であろうが持ち堪えるように掛けられているであろう透明な防御魔法に〝罅〟が入ったことが、如何に彼女の雷魔法が強力であるかを如実に物語っている。


「な、何で避けられるっすか? そうだ! 軌道を予測して、事前に動いて回避して――はいなかったっすよね……一体どうやって!?」

「単純なことだ。目の前に雷が飛んできたから、このままじゃ危ないなって思って、動いて避けた」

「………………はい?」


 行ったことをそのまま説明しただけなのだが、どうやらリリレは納得しなかったらしい。


「そ、そんなこと出来るわけないっす! もう一度っす! 『サンダー』!」

「ほっと」

「『サンダー』!」

「よっと」

「『サンダー』!」

「ほいほいっと」


 何度も繰り返すリリレだったが、その度に俺は回避する。


 ……っていうか、防御魔法がどんどん罅割れていってる。

 このままだと破壊されて、観客席が危なくなるな。


 そろそろ勝負を決めないとマズい。 

 でも、あの聖鎧、俺の衝撃波が効かないんだよな。

 う~ん、どうすれば……


「う、嘘っす! 最強の雷魔法が! 今まで数々のモンスターを倒して来た奥義が!」


 あ。そうだ!


「確かに、お前の雷魔法はすごいと思うぞ。だって、あの防御魔法がもう少しで破壊されそうだからな」

「全部回避してる人に言われても嬉しくないっす!」

「いや、本当に褒めてるんだって。だって、〝そのおかげで今から俺はお前に勝てる〟んだから」


 リリレは、「何訳分かんないこと言ってるっすか!? 確かにあんたの回避はすごいっすけど、でも、あんたの〝風〟は封じてるっすから、自分が負けることもないっすよ!」と誇らし気に聖鎧の胸に触れる。


「それに、いつまでも回避は出来ないはずっす! 疲れもあるはずっすから! その内限界が来るっすよ!」


 彼女が、再び俺に対して手を向けた。


「『サンダー』!」


 瞬間。


「悪いが、お前の〝雷撃〟を〝使わせてもらう〟」

「!?」


 瞬時にリリレの傍に移動した俺は、彼女の耳元でそう言うと、彼女の手を取って引っ張り、一瞬で雷撃の射線上――元いた場所に戻った。


 そして、彼女を俺がいた場所に立たせると、俺自身は危険区域から離脱。


「ぎゃあああああああ!」

「確かに、お前の言う通りだった。誇れ。お前の雷魔法は最強だ」


 雷撃に全身を貫かれたリリレは、全身が焦げ、プスプスと煙を上げながら倒れた。

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