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15.「異変」

「皆の者、よくやってくれた! 今宵は遠慮せず、たらふく食べて飲んでくれ! はっはっは~!」


 進軍してきたヴァウスグリア帝国軍を返り討ちにした日の夜、我が家では祝宴が開かれた。


 いつもだだっ広いな~と思っていた大広間は、私兵団団員たち百人が入り、満員となった。


 領土を守れたことも良かったけど、最弱と言われた私兵団のみんなが自信を取り戻してくれたのが嬉しい。


 ちなみに、後日、六千の敵軍を殲滅したことに対して、王国から褒賞金が出た。


「貴様たちの手柄だからな。貴様らで分け合え! はっはっは~!」


 御言葉に甘えて、俺たちで分け合うことにした。


「え!? 本当に均等に貰っちゃって良いんですか、団長?」

「坊ちゃまが良いと仰っているのだ。何の問題もあるまい」


 話し合った結果、褒賞金は、私兵団団員全員と俺とラトバスと全員で平等に分け合うことにした。


 本来、こういう時って、上官がたくさん貰うらしいんだけど、前線で命懸けで戦った者の取り分が少ないのは意味が分からないので、これで良いと思う。


 まぁ、何かすごい戦略を立てて、そのお陰で楽勝だったとか、そういうのだったらまだ分かるけど、俺はみんなのスピードを上げて、ちょっと友達に頼んで、魔法を回避するトレーニングをしてもらっただけだし。


※―※―※


「菓子折り程度で、わたくしへのお礼となると思っていますの?」


 ロロシィスに、私兵団団員の特訓のお礼をしに、菓子折りを持っていったのだが、どうやら不十分だったらしい。


「レイティに見繕ってもらったやつだから、女の子なら好きだと思ったんだが」

「あの泥棒猫に……?」


 レイティの名前を聞いた瞬間に、ロロシィスの頬が引き攣った気がするが、まぁ気のせいだろう。


「じゃあ、金か? 俺が払える程度なら、勿論払うが」

「お金なら腐るほど持っていますわ」

「ですよねー」


 では、どうしろと?


 ロロシィスは、「そうですわね……戦闘訓練の謝礼ですわよね……戦闘訓練……」と、俯いて思考した後、「あ!」と、顔を上げた。


「では、デー……ではなくて、貴方と戦闘訓練をしたいですわ!」

「俺と? 別に良いが」

「やったー! 約束ですわよ!」


 帰り際。


「じゃあな」

「フフフ。二人きりになってしまいさえすれば、あとは既成事実を作るだけですわ」

「何か言ったか?」

「いいえ、何も。オーホッホッホッホ~!」

「?」


※―※―※


 翌日。


 戦闘訓練にも拘わらず、何故か豪奢なドレス姿で待ち合わせ場所に現れたロロシィスは。


「何でその女がいますのおおおおおおお!?」


 俺の隣にいるレイティを見て、叫んだ。


「いや、戦闘訓練するって言ったら、ついていきたいって言うから。別に問題ないだろ?」

「問題大ありですわよおおおお!」

「そうなのか?」

「そして、なんで貴方までいますの、勇者ああああああ!?」

「た、たまたまそこでバッタリ会ったっす! お、面白そうだから自分もついていくっす!」


 どうやらリリレとは面識があるらしい。

 まぁ、勇者だしな。公爵令嬢なら、会ったことがあっても不思議じゃない。


 っていうか、もしかしたら〝剣魔闘大会〟で、帰るまでの間にリリレの試合を見たのかもしれないし。


「で、どうする? 戦闘訓練はやるのか? やらないのか? ロロシィスがやらなくても、せっかくだし俺はやろうと思うが」

「……行きますわよ! 行けば良いんでしょおおおおお!」


 髪を掻きむしったロロシィスの叫び声が街中に響いた。


※―※―※


 現在、ローブ姿に着替えてきたロロシィスは、俺たちと共に、街の西にある荒野へと向かっている。


 ただし。


「何で貴方がそっちですのおおおおお!?」


 俺とレイティが、それぞれリリレとロロシィスを背負って走りながら。

 二人は俺たちみたいに高速で走れないからな。


「リリレはお前と違って、俺に対して特別な感情を抱いていないからな」

「そ、そうっすよ!」


 リリレが同意する。


「何言ってるんですの!? その女、今、頬を赤らめましたわ!」

「何言ってるんだ? 気のせいだろ」

「き、気のせいっすよ!」

「しかもコラ! ギュッと抱き着くんじゃないですわよ! って、良いんですの、レイティ? 貴方の夫、今正に目の前で他の女に寝取られようとしていますわよ?」

「大丈夫です。私はスピッドさまのことを信じていますから!」

「信じているなら、リリレの代わりにわたくしがスピッドにおんぶしてもらっても良いですわよね?」

「あ、それはダメです」

「何でですのおおおおおおおお!?」


※―※―※


 そうこうする内に、荒野に着いた。


「リリレ。今更だが、今日は勇者の仕事は良いのか?」

「あ、それなら大丈夫っす! 〝剣魔闘大会〟準優勝の賞金として金貨十枚を獲得したんすけど、国の担当者に、『お願いするっす!』って言って、そっと、さり気無く相手の手に金貨を一枚握らせながら頼んでみたんすよ。そしたら、『……仕方ないですね』って言って、休日をくれたっす!」

「うわー」


 金で買収とは、正直褒められた行為じゃない。が、これまで頑張って来たであろう勇者の仕事ぶりに対して、民衆が予想外に冷たい反応をしていたのを俺はこの目で見ちゃったんだよな。ストレスとか半端なくありそうだし、リフレッシュする時間は必要かもな。


「ほら、この通り、スパッ! っす!」


 訓練前に、聖剣を手にしたリリレが、荒野にある岩を、まるでソーセージのように、力を入れずにスパッと斬ってみせた。まるで通販番組みたいだ。前世で、良い筋トレ器具がないかと思って見たことがある。ダイエットグッズばかりだったが。


「おお! 見事なもんだ!」

「へへん。まぁ、それ程でもあるっす!」


 胸を張るリリレ。

 

 彼女によると、普通の剣と違い、聖剣は対象が魔法であろうが斬ることが出来るらしく、ロロシィスの氷柱を叩き切っては、ロロシィスに「生意気ですわ!」と、悔しがらせた。


※―※―※


「『アイシクルレイン』!」

「『マルティプルサンダー』!」

「ふっ!」


 ロロシィスが無数の氷柱を飛ばし、リリレが、新たに獲得したらしい複数の雷撃で同時に攻撃する魔法を発動、その両方を俺は、超スピードで避けていく。


 良いな、これ。

 スピードが違う二つの魔法の回避、しかも片方は、光の速さの三分の一の雷。

 良いトレーニングになる。


「お昼ご飯ですよ~!」

「おう」


 レイティの声に、俺は答える。

 彼女は、特訓には参加せず、見守る役だ。


 俺たちは、丁度四つ並んでいた岩をリリレが真っ二つにして作った簡易的な椅子に座る。


「サンドイッチです」

「貴方が作った料理なんて、誰が食べ――」


 ぐぅ


「ふふっ。身体は正直みたいですね」

「ううっ」

「どうぞ」

「……ちょっとだけですわよ? ん! おいし――じゃなくて、まぁまぁですわね」

「ふふっ。お口にあったようで良かったです」


 俺もレイティのサンドイッチに舌鼓を打つ。


 リリレは、「おお! めちゃくちゃ美味いっす!」と、素直に感動している。


 こんな穏やかな日々も良いもんだな。


 そう思った直後。


「ん?」


 何だあれ?


 一~二メートルほどの黒い靄のようなものが、ふわりとやって来たかと思うと。


「!?」


 レイティの耳の中に入っていった。


「うぐッ!? がぁぁああぁぁぁッ!」

「レイティ!」


 立ち上がり頭を押さえて苦しみ出した彼女に、俺は駆け寄り、両肩を掴む。


「おい、大丈夫か!? しっかりしろ!」

「あああああああああああああッ!」


 天を仰ぎ、絶叫したレイティは、動きを止めた後、「ふぅ」と、俺を真っ直ぐに見据えると。


「久しいのう、スピッドよ。喜ぶが良い。わざわざ妾が会いに来てやったのじゃ」

「!?」


 女神の表情と声で、言葉を発した。

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