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末っ子『ざまぁの神』

ざまぁの神は可愛い末っ子 その3 〜追放?テイマーさんをいじめちゃだめでしゅ〜

作者: 小内 ゆずか

ざまぁの神シリーズ その3です。

一話完結となっているので、このお話しだけ見た方も大丈夫です!

ぜひ、お読みくださいませ。


こんにちはー、ザマちゃんだよ♪


僕はね天界に新しく生まれた末っ子の『ざまぁの神』で、家族達からはザマちゃんて呼ばれてるんだ。

まだまだ小さくて、見かけは人間の3歳児くらい。早く、お兄ちゃんお姉ちゃんの神様達みたいにカッコよくなりたいな。


きょうはね、お姉ちゃんが下界のプリンっていうスイーツを持ってきてくれたからこれから皆んなで食べるんだ。


すっごく美味しいんだって!楽しみすぎてワクワクだよ。


「ひとりで食べられるかしら?あーんしてあげましょうか?」

「へーきでしゅ!」


僕はお手てにスプーンを持って、そっとプリンをすくいます。 


なにこれー!


「プリンはぷりんぷりんでしゅ!」


僕の叫びを聞いて皆んな笑っているけど、それどころじゃないの!

ぷりんぷりんしていてスプーンから落ちそう。スプーンを水平に移動させてお口に運ぶのは、高難易度ミッションだぞ。


ぽとん……


ミッション失敗…。

テーブルに落ちたプリンを見て、僕のお目目からじわぁーっと涙が溢れてきちゃった。


それを見ていたお姉ちゃん達の動きは早かった!お兄ちゃんがシュパッって僕を膝に乗せて、お姉ちゃんがササッってプリンを掬って僕のお口にあーんします。その間に別のお姉ちゃんが何も無かったかのように、机に落ちたプリンを拭き取りました。


さすがです。

洗礼されたその動きは、まさに神!



食べさせてもらったプリンは、すっっごく美味しかったよ。お口に入れると溶けちゃうんだ。

また食べたいな。


「つぎこしょは、みっちょんたっせーしてみしぇましゅ!」


僕はお手をぎゅっと握って、やるぞーのポーズでプリンに再戦を誓ったのでした。


食べ終わって皆んなでお話ししていたら、開け放した窓から小さい光がフラフラ入ってきました。

今にも消えそうな、蛍みたいな光は僕が差し出した手のひらに乗っかったの。


「あらあら大変。こんな所に魂が出てきたら消えちゃうわぁ。」

「今にも消滅しそうだね。」


大変です!

緊急事態です!


「たすけるでしゅ!」


僕の宣言を聞いたお兄ちゃんは、またもや神動きで、魂の光を持った僕を抱えてパッと移転しました。


ここはどこだろうって周りをキョロキョロしてると、黒髪黒眼で黒い衣装の全身真っ黒のおじちゃんがやってきました。お顔はちょっと怖いけど、こーゆーのを確かイケオジって言うんだよね。

僕、なんでも知ってて凄いでしょう!

えっへん!


「兄さん久しぶり。

この魂がこの子の所までやって来たんだよ。」


あわわ。

お兄ちゃんだったよ。おじちゃんて言わなくてよかったぁ。

それにしても会ったことがないお兄ちゃんがいるなんて。びっくりです!


イケオジお兄ちゃんは一番年上のお兄ちゃんのひとりで『死魂(しこん)の神』なんだって。ここの神殿がある空間は特別で、生きてる間に辛い事があって疲れちゃた魂に休息を与えて、元気にして輪廻へ戻すのがお仕事なんだって。


凄く大変なお仕事なんだね。

僕、そんけーしちゃうよ!


「ああ、新しく生まれた末っ子か。

よく来たの。

どれ、その魂をわしに見せなさい。」


僕はイケオジお兄ちゃんにお手てを伸ばしてよく見えるようにしたよ。


「ふむ…。

動物の魂が5つ合わさっておるな。

弱い魂がどうやってここから出られたのか不思議じゃったが、力を合わせたのか考えたのう。」


そう言って魂に手を翳すと、魂の光が少し強くなって5つに分かれたからびっくりしたよ。


「兄さんはここから殆ど出ないから、ザマちゃんに会ったこと無かったよね。」


「ここを空けられないからの。

おや?魂達が末っ子に伝えたいことがあるようじゃぞ。」


ちょっと元気になった魂が僕に『助けて』って言うから詳しくお話しを聞いてみたの。


「たいへんでしゅ!げかいにいってくるでしゅ!」


お話しを聞いた僕は急いで下界に移転したよ。だって間に合わないかもしれないから。

またまた緊急事態だ!いそげーー



《某国 冒険者ギルドの路地裏》

「マリウス、きさまを俺たちのパーティーから追放する!

てめぇみたいな役立たずのテイマーはいらないんだよ。」


「これまで面倒みてやったんだから、持ち金は全部置いていけよ。ぎゃははは。」


「えぇー、こいつお金なんか持ってないわよ。そうね、そこの犬っころの毛皮でも売りましょうよ。変異種の白い狼なんて珍しいから高く売れるかも!」


俺マリウスは、暗い路地裏に呼び出されて冒険者パーティーのメンバーから追放を言い渡されていた。

冒険者になった俺は、出身村の村長の息子であるリーダーにこれまでいいように使われて来たが、ついに追い出すことにしたらしい。縁が切れるなら喜んで追放されてやろう。

だが……


「金なら全部渡す。が、こいつは唯一残った大事な家族だ。毛皮になんかさせるわけないだろう!」


テイマーの俺は、従魔である狼6匹と一緒に冒険者として頑張っていた。だが一年程前にこいつ(リーダー)と再会して無理矢理パーティーに入れられた。

村に残っている家族を酷い目に合わせるぞと脅されていたのだ。


こいつらは、俺を便利な囮役にした。何度も無茶をさせられて、大切な従魔達は1匹また1匹と俺を助けるために死んでいった…。

最後に残った、このシロも足に大怪我をしてこの先も戦えるかは分からない。

だが、シロだけは守ってみせる。


「てめぇ誰に向かって舐めた口聞いてんだ!黙ってその犬おいてけ!」


リーダーがシロに向かってナイフを振り上げた。俺はシロに覆い被さる。肩にナイフが刺さったが、絶対にシロを渡すもんか!

他のメンバー達も笑いながら俺に暴力を振るう。傷つく俺を見たシロは奴等に牙を向いたが、怪我をしているシロが敵うはずもなくザックリと斬られて真っ白だった毛は赤く染まった。


どれくらいの時間、暴力の波に晒されていたのだろうか。俺もシロもピクリとも動けなくなっていた。


「あーあ、毛皮がズタズタじゃない。これじゃお金にならないわ。」


「バカが俺達に歯向かうのが悪いんだ。気分転換に飲みに行こうぜ。」


奴等が去った路地裏で、俺はシロを抱きしめて倒れていた。もう声を出すことも出来ない俺は心の中でシロに謝っていた。

『助けてやれなくてごめんな。

俺も一緒にあの世に行くよ。

先に行ったあの子達にも会えるかな。』


そうして体の感覚もなくなり最後を迎えるその時、子供の声が聞こえた。


「だーめでしゅーーー」


突然の叫び声に驚き、一瞬だけ意識が覚醒した。

舌ったらずな子供が言ってることはよく分からない。だが、俺達を助けたいと思っていることは伝わってきた。


「きんきゅーだから、いろいろしょうりゃくでしゅ。ひどいことしたひとたちに、ざまぁしたいっておもってくだしゃい。そーすればたしゅけられましゅ。」


奴等にざまぁしたいかだって?したいに決まってるだろ。死んでいったあの子達の分までざまぁしてやりたいよ。


「ききとどけまちた。ざまぁをしっこうしましゅ!」


急に体が暖かいものに包まれた感覚のあと、俺の怪我は治っていた。隣に倒れていたシロも顔をあげている。

なにがおきたんだ…?


「けがなおしゅのに、ざまぁポイントいっぱいつかっちゃったけど、たりてよかったでしゅ。」


俺の前に、額の汗を拭う仕草をしながら、やりきった顔をした幼児が浮かんでいる。


えっ⁈ なにこれ⁈ ゆめ?

シロも驚きすぎて口が半開きだぞ。


その後、幼児が色々と説明をしてくれた。が…、わかりずらい!

頼むから、滑舌の練習してくれ!


なんとか聞き出せたことは、

幼児が神様なこと。

死んだ子達が命懸け(魂懸け?)で幼児に助けを求めたこと。

ざまぁポイントを使ってこれからざまぁすること。の三つくらいだ。


ざまぁポイントの説明とかまったく意味不明だったが、この小ちゃい神様のお陰で俺とシロが助かったことは間違いない。俺は心から感謝の気持ちを捧げた。

感謝を受ける、かわいいだけのドヤ顔が台無しにしていたけどな。


俺とシロは神様の勧めもあって、すぐに街を出た。そして、別の街でシロと一緒に冒険者として再出発だ。

風の噂で元パーティーメンバー達のことを聞いた。なんでも狼に嫌われる呪いをかけられたとかで、街の外に出ると次から次へと狼が襲ってくるせいで討伐依頼どころか街から出ることも出来なくなって冒険者を辞めたらしい。

元から横柄な態度で住人からも嫌われていたから、仕事にも就けず惨めな暮らしをしているとのことだ。

それを教えてくれた冒険者は、そのうち犯罪でもして奴隷落ちだろうと笑っていた。


そんな噂を聞きながら、俺達を救ってくれた小ちゃい神様を思い出す。

ざまぁしてくれて、ありがとな。


……でも、滑舌の練習しろよ。




所変わって天界では、花畑で白い子犬と転げ回るザマちゃんを見て、神様たちが和んでいました。


「あの子犬、頭が3つあるんだけど…。」

「ケルベロスだから当たり前ですわ。」

「マメ柴のケルベロスなんているのかい?」


マメ柴ケルベロスに納得できない『大地の神』お兄ちゃん。

実はこのケルベロスはイケオジお兄ちゃんこと『死魂(しこん)の神』からザマちゃんへのプレゼントだ。

仕事を終えたザマちゃんがテイマーと仲良しの狼を見て「わんわんほしいでしゅ…」と呟いたとかなんとか。


「『死魂(しこん)の神』兄さまもザマちゃんの可愛さにメロメロなんですわ。さすが私のザマちゃん!」

なぜかドヤ顔で荒ぶる『美の神』は通常運転なので、みな放置だ。


「それにしても今回は面白いざまぁをしたよね。称号付与がざまぁになるなんて思わなかったよ。」


「確か『狼の怨敵』って称号でしたよね。あらゆる狼から狙われ続けるなんて、冒険者には致命的ですね。」


「被害者のテイマーの持っていた『狼の友』の称号と対をなしていて、なんだか業が深いわぁ。」


人間の持つ称号は、魂に刻まれていて生まれながらに持っているものと、神の目にとまり付与される二通りがある。今回は狼達の魂の訴えを聞いたザマちゃんが付与したものだ。ちなみにテイマーが持っていた付与は生まれた時からのもので、この付与があったからこそテイマーになったのかも知れない。

「あのシロっていう突然変異種の狼、あと一回進化したらフェンリルになるね。」

「将来有望なテイマーを助けたザマちゃんが凄いってことですわ。ザマちゃんの可愛さは可能性のかたまりですのよー。」


またまた荒ぶる『美の神』。

もはや何を言っているのか分からないが、マメ柴と遊ぶザマちゃんのかわいさにより、天界は今日も平和です。

今回のザマちゃんいかがでしたか?

マメ柴が3匹並んでいる写真をみて、ケルベロスにしても可愛いかも!と思って登場させてしまった業の深い私です…。


皆さまの評価☆をお待ちしています。

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― 新着の感想 ―
色々感想あったのですが、豆柴ケルベロスに 全て持っていかれました。 ザマちゃん尊い。
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