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アホから始まるプロローグ

 統一歴802年、エルカナド大陸内陸部――

 荒れた荒野を舞台とする戦場に、無数の兵の怒号が響いていた。剣戟を林立させながら、敵へと向けて言葉にならない雄たけびがそこかしこで上がっている。

 異様なのは、その兵たちが一騎残らず骸骨であるという点だ。黒ずんだ骨だけの体に刺々しい意匠の甲冑を着込み、剣や槍、戦斧を手に大地を踏み荒らしている。

 それは魔族の軍勢。この世界を創造せし神々とは異なる神の手で産み落とされた異端の生命たち。人間をはじめとする、正しき神々の手で産み落とされた心ある種族たち“心族(しんぞく)”を脅かすためだけに存在する邪悪の種族。それが群れを成し、民草の平穏を脅かそうと行軍しているのだ。

 しかし、それよりもさらに異様な点があった。

「はーはっはっは! どうしたどうした! 数が多いだけなのか!」

 万で数えられるだろうその魔族の軍勢を相手に、1人の少女が大立ち回りを演じているのである。年の頃は十代半ばだろうその少女は小柄な体躯に軽装鎧をまとい、長い栗色の髪は一部が一房ずつ左右で結わえられており、稚さの残る顔立ちは愛らしくも精気に満ち溢れ爛々と輝いている。

 そんな少女が手にした竹光(たけみつ)を振るう度に骸骨の兵たちは最低でも3騎はまとめて叩き伏せられるか弾き飛ばされており、正に鎧袖一触(がいしゅういっしょく)の様相である。身長150cm前後の短躯の少女が一騎当千の戦いぶりを披露しているその光景は、いっそ滑稽(こっけい)なほどに異様だった。

「勇者様! 無茶をしすぎです! なんでお一人で敵陣に突っ込んでいかれるんですか!」

 そんな少女を追って、1人の若者が現れた。青みがかった黒髪をした、10代後半だろう騎士だ。実践的な鎧と戦鎚(せんつい)で武装したその騎士は、気疲れを感じさせる声で少女に叫ぶ。

「はっはっは! 何を言うんだボナ(ぞう)! ボク1人でなく、お前がいるじゃないか!」

 それに対し勇者と呼ばれた少女は、愉快そうに笑って返した。その間も竹光は振るわれ、魔族の兵たちは叩きのめされていく。

「私はボナ蔵ではありませんし、私のことも置いて走り出していかれたでしょうが!」

 一方、ボナ蔵と呼ばれた騎士はうんざりした顔でさらに叫び、「それに!」と続ける。

「なんで勇者様まで骨になってるんですか!」

 そうボナ蔵(仮)が叫んだ通り、いつの間にか勇者と呼ばれた少女の顔面も骸骨になっていた。つい先刻までの可憐な面貌はどこへやら、頭蓋骨をさらけ出している。

「おや? どうやら骸骨ばかり相手にしてたから、伝染(うつ)ってしまったらしいな」

「伝染らんでくださいよ、風邪じゃないんですから!」

「そんなことはどうでもいい、いくぞボナ蔵!」

「全然どうでもよくありませんし、私はボナ蔵じゃありません!」

 未だ何千といる敵兵たちに囲まれているとは思えない緊張感と常識のないやり取りをしつつ、再び勇者と呼ばれた少女は敵と戦いだしてボナ蔵(仮)もそれに続いた。

 この妙な2人組は何者なのか? それを説明するには少し時を遡る――

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