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第6話 大型生物はロマンだよねって話

本日3話目です。

 ナノマシンを放って数ヶ月。

 惑星の環境維持機構として存在させる予定の複数のモンスターや精霊もどき、巨人なんかの実験体を惑星に放ってからは半年以上が経過した。

 

 経過は順調そのもので、特にナノマシンだけでは進みが遅いところを、巨人型の実験体に補佐させたり他の実験体で浄化を進めたおかげで、予定の数倍の速度で浄化は進んでいる。

 おかげで、ようやく星の汚染の浄化の目処が立ってきた。

 となると、二人の間で良く話題に上がるようになることが出てくる。


 そう。

 この星を再生させた後、どういう方向性の生物がいる星にするか、ということである。

 もっと言うならば、どういう世界観を題材にした星にするか、ということだ。


「やっぱり普通に思うんだけど」

「はい」

「取り敢えず大きなモンスターとかがいる世界観にしたいんだよね」


 なお二人の間でいろいろと話し合い、故郷の星系からこの星系までの移動の期間や、ナノマシンによる浄化を行っている間に決めたことが1つある。


 それは、特定のゲームを参考にしたエリアのようなものは作らない、ということ。


 当初のイリーナの発案では、例えば地球で言うならば、ユーラシア大陸はゲーム1とゲーム2、アフリカ大陸にゲーム3、北アメリカ大陸にゲーム4、南アメリカにゲーム5、みたいに、星をいくつかのブロックにわけて、それ事にゲームを設定してモンスターを再現していくつもりだった。


 だが、考えればわかることだが、こうして作られた惑星は、放置してしまえば一瞬で秩序が崩壊する。

 隣り合っているブロックが入り混じったり滅ぼし合ったり。

 あるいはそもそもとして、勝手に自滅して消えてしまったり。


 つまり、最初にイリーナが考えていた惑星は管理された箱庭なのだ。

 エンターテイメント施設、と言い換える事もできるかもしれない。

 それを作り上げてイリーナが楽しみたい、というそういう惑星だった。


 だが、考えてみればわかることだが、イリーナはいつまでも惑星の管理をするつもりはない。

 動物園の管理人のように、モンスター達の世話をし、エネルギーの流れを管理をし、星そのものが正常に運営できるように働き続けるつもりはない。


 むしろ、イリーナ手を離れてでも存続していくような、そんな生態系、世界観。

 それこそがイリーナが望んでいるものだ。


 加えて。


『継続した管理が必要になるような星にしてしまうのは、荒廃惑星再生プログラムとしても認めがたい』

 

 マリーはイリーナにそう宣言した。

 マリーはイリーナの味方だが、良識に従って判断をすることだって出来るのだ。


 結果、イリーナもそれには納得した。

 確かにイリーナがやろうとしていたことは、星1つを使ったエンターテイメント施設だ。

 それはそれで面白いかもしれないが、イリーナが今やりたいのはそれではない。


 とあるゲームから引用する形になるが、1つの完結した生態系を作り、それを体験してみたいのだ。

 全てイリーナの思い通りになってしまうものでは面白くはならない。


 故に、イリーナもまた決断した。


『1つの惑星では、ちゃんと成り立つように1つのモチーフだけにしよう。もしほかのゲームが再現したかったら、他の星をまた再生プログラムで再生しながら考えよう』


 と。


 まあ単純な話だが、イリーナが再生させる星は別に1つに限らない。

 2つや3つ、なんならもっと再生させることだって出来るのが、イリーナとシュマーレ族の科学力、魔法力である。


 ちなみにシュマーレ族の魔法のような技術に使うのが、今惑星に撒きまくっているナノマシンである。

 つまりこの惑星はすでに、魔法が使用可能な土壌が完成しようとしている状態にある。


「大きい生物となると、重力との戦いになりますよ」

「だよねえ。それを無視するには、やっぱりナノマシン?」

「それがわかりやすいですね……。もうナノマシンが星の根幹に存在するような世界にしてはどうですか? 命令を出さなければあれだって水のように循環するものですし」


 マリーの言葉に、イリーナはうむむと考え込む。


 実を言えば、イリーナはナノマシンという響きが好きではない。

 つまりそれはマシン、人工物ではないか。

 そういうロボット生命体系の星にするならともかく、それが決まってない段階でそれに頼らざるを得ないのはどうなのか、と思うのだ。


 しかし、そもそもとして人の体もまた、有機物で形成されてはいるものの機械と似た働きをする。

 そこに何の違いがあるのか、という主張もある。


 そして結局のところ、このナノマシンを導入したほうが、星を自由に書き換えた上で、それをちゃんと成立させやすいのである。

 多少の無茶は、ナノマシンに特定の命令を出しておけば成立してしまうのだ。


 それこそ、重力が大きいために大型の動物がうまく動けないのが嫌であれば、動物の体内に入ったナノマシンは、その体の支えとなり、高重力下でも動物が自由に動くのに十分な強度とエネルギーを与える、というふうに命令をしておけば良い。


 ナノマシンは充電を必要としないので、その命令をして放流するだけで、後は大型生物が跋扈する星を簡単に作り上げてくれる。


 もちろんイリーナはそれにたよりっぱなしになるつもりは毛頭ない。

 イリーナには、自分で再現したいゲームが、世界がある。


 そのためにナノマシンを使うことこそあれ、ナノマシンに完全に頼り切りになるようなつもりはないのだ。


「わかった。ナノマシンは使う方向で行こう。でも、魔力とは別の方向で……そうだね、生命力、生体エネルギー。そういう方向で役立つように設定しておこう」

「わかりました」


 二人の惑星再生は、まだ始まったばかりである。

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