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お腹が空いた

作者: 佐行 院

俺は日常に楽しみが欲しかった。

「お腹が空いた」


佐行 院


午前7時、大抵の日本人が一日の生活を始めるこの時間帯。俺は夜勤を終えて職場を後にする、駐車場を眩しく照らす朝日がまるで「お疲れ様」と言ってくれている様に感じるのは俺だけだろうか。


「さぶ・・・、早う帰ろう・・・。」


 職場から少しだけ車を転がした所にある大きな橋を渡る時、東から覗き込む様に照らす大きな太陽をちらりと眺めると1日が終わったという実感が強くなる。それと同時に「俺の為の時間」が始まりを告げる。


「腹減ったな・・・。」


 俺は夜勤に行く時、そして夜勤の休憩中は水分と薬しか口にしない。今までの経験上、仕事前に食事を摂ると体が重くて仕事にならないからだ。

 以前は母親に手渡されていたお握りや仕事を終えた後の昼飯も断る様になっていた、俺の腹は他の人間と同じ時間帯に減らないのだ。

 俺が家に帰ると家族は朝食を既に終えている上に風呂の湯はすっかり冷めてしまっているか抜かれている、俺は毎日淋しさを感じつつ空っぽの湯船を眺めながらシャワーを浴びる。当然、疲れなど取れる訳が無い。満たされる訳が無い・・・。

 今思えばこの生活が始まったのは煙草を吸いながらの上司の一言だった。


「今度から夜勤に行って貰うから。」


 そう、俺は決して今の生活を自ら望んだ訳では無い。その上、元々1ヶ月だけと言われていたはずなのに今となってはもう5年目に突入してしまっている。

 そんな中、俺は上司の指示に従う事を逆手にとる事にした。そう、周りの人間が必死に働く中で堂々と昼から酒を呑んでやるという事だ。ただ1つだけ欠点がある、退勤時に肴を買おうとしてもあまり店が開いていない事だ。

 ただ最近は24時間営業のスーパーが増えて来て嬉しい、しかし退勤時にどうしても腹が減ってしまう。ただ周囲を見回しても何処の飲食店も開いていない、そこで俺はふらっとあるコンビニに立ち寄ってみた。そして・・・、驚愕した・・・!!

 普段の生活で味わうことが出来ない様な食べ物が勢ぞろいしているでは無いか!!コンビニは俺にとって「食の宝庫」だ、新しい発見が沢山あり過ぎる!!

 俺は興奮した、確かに一般的な会社員の様に昼休みに飲食店での食事を楽しむ事は出来ないがコンビニのお陰で俺なりに楽しむ事が出来るようになった!!

これにより俺は毎朝この時間帯だけ、満たされる様になった。


これからも沢山あるであろう嬉しい出逢いに感謝だ。

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