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番外編:世界会議2

41話になっていたものを後日談として再掲載いたしました。

約束したとおりにアルベルト達とアデレイドは庭園でお茶を楽しんだ。


「お久しぶりですわ、エレーナ様」


「まあ、アデレイド様にお目にかかれるなんて、とても嬉しいですわ」


そう言ってエレーナとアデレイドは近況の報告をしあった。


「カミラさんも座って」


「いいえ、自分は職務中ですので」


アデレイドの誘いにエレーナの側で控えているカミラは首を横に振った。


「ふふ、相変わらずね、ねえ、カミラさん、この子たちに覚えはない?」


そう言ってアデレイドの後ろに控える二人の女性騎士を紹介した。


しばらく二人の顔を見ていたカミラは、あ、と声を出して嬉しそうに笑った。


二人も嬉しそうにカミラを見ている。


「とうとう護衛騎士になれたのよ、あなたの教え子が」


アデレイドも嬉しそうにそう伝えた。


「だから、この二人を信頼して、今日は座って一緒に話をしましょう」


そこまで言われ、エレーナからの了解もあり、カミラはようやく腰をおろした。




アデレイドはガ=ミル国で留学生活を送りながら、自国の女性の社会進出の為にいろいろな政策を立案していたが、男性優位の社会はあまり変わらなかった。




ある時、手紙のやり取りをしているアルベルトから一つの提案があった。


『まずは騎士団から変化をもたらしてみてはどうだろうか』と。


その提案はエレーナによるものだったらしいが、カミラを筆頭に女性騎士を数人派遣してくれることになった。


王妃の後押しもあり、アデレイドの長期休暇にあわせてカミラ達もマリオット国にやってきた。




カミラ達は早速騎士団に視察に行ったのだが、サリーとガイウスの行いが、やはり女性は使・え・な・い・という風潮にもどってしまい、女性騎士は雑用をさせられていた。




視察に来たカミラ達を、新人の女子騎士だと思った数人の騎士が、汚れたシャツを投げてきた。


「おい、それを拾ってしっかりきれいに洗っておけ」


「女ができることなんてそれくらいだろう?」


「一応力を込めて鍛錬のつもりでやるんだぞ」


「それが済んだら・・・ぐはっ」


最後まで言い終える前に、カミラ達が全員を叩き伏せた。


騎士団は騒然となった。


マリオット国の女性騎士はどうしていいのかオロオロしている。




「この国の騎士団とは名ばかりだな」


「何を?」


「女性ができることは洗濯くらい、だと?騎士団に入団した人に対する態度か、それが騎士だと?」


「何だ、偉そうに、女のくせに!」


「所詮男に媚びるために騎士になるんだろう?」


「鍛錬の必要があるのか?」


「所詮男にはかなうまいよ」


そう言って騎士たちはゲラゲラと下品に笑ったのだ。




「試してみるか?」


「なんだと?」


「本当に男にかなうわけないって思っているのか?」


「女のくせに、勝てると思っているのか?」


「ふっ、愚問だな」


「相手になってやる!!」


挑発に乗った騎士たちに、カミラは自分を含め5人の女性騎士との勝負を挑んだ。




女と侮っていた最初の二人が倒された後、本気でやるつもりで、騎士団の中でも上位の腕前の騎士が出てきた。


だが、これもあっさりと倒される。


次の騎士も腕に覚えのあるものだったが、数回剣を交わした後、すぐに倒された。


「張り合いがないな」


カミラと仲間たちはそう言って笑った。


「俺が出よう」


そう言って出てきたのは、騎士団でも最強の呼び声の高い団長補佐であった。


彼は女性差別は良くないと思いながらも、か弱い女性は騎士には向かないのでは、と考えるような人物だった。


対するカミラはふんわりとしたおとなし気な容姿のため、団長補佐は彼女をコテンパンにするのは気が引けるな、などと考えていたのだが、ひとたび剣を抜いたカミラは想像以上に強かった。


そして、剣を受けるたびにその重さに団長補佐の手はしびれ、重い剣なのに素早くついてくる剣に翻弄された。


勝負は団長補佐が剣を飛ばされ、終了した。




この試合後、カミラ達は男性騎士達から稽古をつけて欲しいと頼まれた。


それほど彼女たちの剣さばきが素晴らしかったのだ。


「稽古をつけることはかまわないが、まずは女性騎士たちに謝罪を」


「謝罪・・ですか?」


「たった一人の見習の行動で、すべての女性騎士の名誉が傷つけられた。


その一人が女性騎士のすべてだと見下し、雑用を押し付けるなど、騎士の矜持はどこへやった?


同じ騎士団に入団した人として恥ずべき行為だと自らを見直せ」


カミラの言葉に男性騎士達は言葉を失った。




そこからの騎士団は生まれ変わったように男女平等が根付いていった。


女性達も平等に扱われることを当たり前とし、女だから、と弱音を吐くことはなくなった。




更にカミラはアデレイドに進言をして、寮の立ち入りを男女で制限させた。


これは差別ではなく、性別の違いから起こることには立ち入ったりすることがないように配慮するためであった。


兄弟であろうが、親子であろうが、それぞれの寮に異性は立ち入り禁止となった。




また、カミラ達の指導の下、男女の体の鍛え方の違い、筋肉の付け方の違いなどを徹底的に教育した。


その時の女性騎士が、今カミラの目の前にいる二人なのだ。


御前試合で勝ち抜き、名誉ある護衛騎士に任命されるまで彼女たちは力をつけてくれていた。


公開で行われた御前試合は評判を呼び、男女関係なく騎士団はその腕前を称賛された。




御前試合で護衛騎士を選出することについてはアデレイドの発案であり、それを公開することで他の貴族たちにも男女平等を知らしめることができる、というがヘンリーの案だった。




アルベルト達とアデレイドは自国の事や近況を語り合った。


そして、話題はヘンリー王の事になった。


「アディ様、ヘンリー様はまったくあきらめておられないのですって?」


「そうなのよ、執務で毎日顔を合わせるようになってからはニコニコと笑顔で距離を詰めようとされてしまって・・・」


「ニコニコ距離を詰めるって・・・・」


「どうしたらいいのかしら」


思い悩むアデレイドに、アルベルト達はなんとも言えなかった。




「わたくしは宰相になるのが目標でしょ?もしも王妃になったらその目標がかなわないわ」


「アデレイド様はヘンリー様の事がお嫌いではないの?」


「そうねえ、サリーの事があったから、多少は嫌悪感とか湧くかと思ったのだけど、あまりそういう感じはないわね」


「意外ですわ」


「ええ、アデレイド様はてっきりお嫌いになられたのだと」


「嫌悪感はないわね、どちらかというと呆れたって感じね」


「皆はどう思うかしら?意見を聞きたいわ」


そう言ってクルスたちを見回した。



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