37 王子と側近達は考える
エリザベスは、アルベルトとエレーナのお茶会の帰りに声をかけたのだが、見事に無視をされ、護衛に止められても暴れまわったため反省室に入れられていた。
そして、反省文を書かされた上、担任の教師につきっきりで指導をされた。
もともとマナーも悪く、勉強にも熱心に取り組まないエリザベスの事を何とか矯正しようとしていた教師が、最後のチャンスを与えるつもりで指導をした。
結局、エリザベスは与えられたチャンスを生かすことはなかった。
「フリンク嬢、お菓子はいきなり手を出してはいけません」
「え~、置いてあるんだから食べてもいいでしょ?」
「まずはお茶が出されるまで待ちなさい」
「え~、暇」
「フリンク嬢、お茶を飲むときはカップの取っ手の中に指を入れてはいけません。
このように指でつまみなさい」
「なんでよ、しっかり持つなら指を入れた方がいいでしょ?」
「カップはこのようにつまむために作られています。
このようにつまんで持ち上げれば、カップの柄がよく見えるでしょう?」
「柄を見たってわからないわ」
「だから、何度も図柄を見せたでしょう?それぞれの意匠の違いも何度もはなしましたよ?」
「なんか難しいし、みんな似たような感じだったよ?」
担任教師は大きくため息をつきたくなった。
何度も同じことを繰り返しても、彼女のマナーは改善されない。
「フリンク嬢、背筋を伸ばしなさい。カップはその美しい姿勢のまま口に近づけるのです。
自分の顔を近づけて啜ってはいけません」
エリザベスはカップの方へ顔を近づけて、ズルズルと音を立てて啜っていた。
このやり取りが何度あっただろうか。
この時、エリザベスが心から反省をして、貴族令嬢としてのマナーをきちんと勉強していれば、今後の彼女の人生は変わっていただろう。
男爵令嬢ではなくなっても、どこかの侍女やメイドとして自活できる人生が贈れただろう。
残念ながら、エリザベスは自分の容姿に自信があり、甘えて媚を売れば人生楽勝だと思っていたのだ。
担任の教師は学園長に、エリザベス=フリンク男爵令嬢は矯正不可である、と伝えに行った。
そして、彼女の書いた反省文を学園長に見せた。
そこには、自分が可愛いから、エレーナが意地悪をしてアルにあわせてくれなかった。
護衛の人もエレーナの味方で、自分は何もしていないのに捕まえられた。
自分が可愛くて、いろんな人から愛されてしまうのが悪いと言われても、可愛いのはどうしようもない。他の可愛くない女の子が悪い。生まれついた可愛さは仕方がない。
そう言った、頭の痛くなるような文章が汚い字で綴られていた。
フリンク男爵の代替わりを機に、エリザベスは貴族籍ではなくなる。
彼女はフリンク男爵の庶子であるため、現男爵の後見で学園に貴族として通っている。
代替わり後は後見しない、という事をマイクが公言しているため、エリザベスが在学するためには、平民として再試験を受けなければならない。
そのために担任が最後のチャンスに何とか矯正をしようと頑張っていたのだが、全くやる気のないエリザベスの態度にさじを投げてしまった。
そして、アルベルト達が久々に学園に登校した日、サロンの前には護衛騎士に拘束されるエリザベスがいた。
「あ~っ!!アルっ!!バッツ!!オズ!!久しぶり~。
ほら、ちゃんとアル達が来たでしょ?放してよ!」
護衛騎士はそれでも拘束を解くことはなかった。
「ちょっと、クルス?フリッツ!ジャン!カル!!何とかしてよ」
「黙れ。俺の名前を勝手に呼ぶな」
クルスが怒りを込めてそう言った。
「そんな照れないで「照れていない、学園の先生に引き渡してくれ」
クルスの冷たい言葉に護衛騎士の一人が学園の先生を呼びに走った。
「ちょっと、久しぶりに会えたのにひどくない?」
「ひどくない」
「アル、どうしたの?バッツも・・・あたし寂しかったのよ?」
そう言ってエリザベスはポロポロと涙を流して見せた。
だが、一人としてエリザベスを慰めようとするものはいなかった。
「ひどい、どうして皆で意地悪するの?早くサロンに一緒に入れてよぉ。
また楽しくおしゃべりしよう?」
学園の先生がエリザベスを連れていくまで、彼女はひたすら彼らの名前を呼び、懇願し足り、甘えたりしていた。
そんな姿を見ても、誰一人として心を動かされる者はいなかった。
サロンに入り、席に座ると、アルベルトが皆の顔を見ながら口を開いた。
「元々は私が悪いのだが、このままではいけないと思う。エリザベス嬢と話をしようと思う」
「そうですね、きちんと話をしておかないと、あることない事噂になります」
「もうカミラを怒らせたくない・・・」
バッツがポツリと言った。
カミラとはバッツの婚約者である。
帰国後、各家庭へ帰省し旅の話と共に今までのいきさつを話したところ、幼馴染で2つ年上の婚約者カミラから飛び蹴りをされたのだ。
「おのれの頭にはごみでも詰まっとるのか~!!」
という怒声と共に・・・。
「そもそもその女から甘えられて嬉しかっただと?そんな女のいう事をうのみにして、エレーナ様をあの女呼ばわりしていたそうだな?謝ったのか?何もしてないだと?覚悟はできているな?」
バッツはカミラから腰から下を塀の側に埋められ、上半身は両手を広げてはりつけにされたうえ、自分の周囲を剣で早突きされるという罰を受けたのだ。
カミラの家も騎士の家系であり、カミラ自身も女性騎士をしている。
バッツの先輩であり、ライバルでもあるのだが、怒るカミラを誰も止めることはなかった。
「素晴らしい剣さばきだ」「あのスピードで正確に突けるとは・・・さすがだ」
などとカミラが称賛されるほどであった。
その後はひたすら鍛錬に連れまわされ、バッツは2度とカミラに逆らうまいと己の剣に誓ったのだった。
その後、アルベルト達は話し合いを続け、学園長に立ち会ってもらい、エリザベスとの関係をきちんと締めくくることを決めた。
マナーについてはあまり詳しくは知りません。
なんちゃってマナーとしてお読みいただけると嬉しいです。
バッツの婚約者はふだんは気のいい姐御って感じのいいひとです。




