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34 王子は冷汗をかく


エレーナとのお茶会が終わり、馬車までエスコートをしていた時だった。


「あ!!!アルだ!!アル~~~~!!!」

そう言ってバタバタと足音がした。

音の正体はエリザベスだった。


彼女は休日にはいつも取り巻き達と町で買い物をしたりしていろいろ貢がせていたのだが、最近では自分に貢いでくれる男子生徒はいなくなり、寮で暇を持て余していたのだった。

下位貴族の中には、自分の小遣いの為に刺繍や写本、町での仕事などをして休日を過ごすものが多く、休日の学園にはほとんど人の姿を見かけることはないのだ。

だが、今日はアルベルトが温室を貸し切ったため、準備の使用人が多く出入りし、護衛も周囲の警備のために大勢うろついてる。

暇を持て余していたエリザベスが興味を持って何があるのか見に来た時、エレーナをエスコートするアルベルトを見つけたのだ。

(あれ王子じゃない?やっと見つけたわ!!)

そう思って走り出したのだった。


貴族の令嬢がバタバタと脛が見えるほど足をあげて走っている姿を見て、アルベルトは嫌な気分になった。

(あんなはしたない姿を周囲の者に見られるという事が、自分の家名に泥を塗っていると思わないのだろうか?あれを可愛いと思っていた過去の自分よ、今すぐ目を覚ますように殴りに行きたいよ)

「アル殿下?」

「レーナ、心配しなくていいよ」

そう言って護衛の騎士に合図をし、エリザベスが近寄れないように周囲を固めさせた。

「ちょっとあんたたち、邪魔よ!!アル!!アルってば!!!どうして無視するのよ!!」

護衛騎士がエリザベスをけん制するのだが、エリザベスは必死でアルベルトを呼び続ける。

「レーナ、すまない、私のせいだ・・・。だが、今君を危険にさらすわけにはいかない。

このまま馬車で帰ろう」

「それがいいですわ。我が公爵家と王家からフリンク男爵に抗議をしましょう」

「ああ、学園にも話をしておこう」

暴れるエリザベスを護衛に任せて、アルベルトとエレーナは馬車で帰宅した。

後で聞いたところ、あまりに暴れつづけるので、学園の先生に引き渡し、今は反省室に入れられているらしい。


エレーナを公爵家に送り届けると、エレーナの父であるハイルドバルド公爵から引き留められた。

すこしだけ時間をもらいたい、と言われ、応接室に案内された。

「殿下、本日は娘を送っていただきありがとうございました」

「いや、婚約者として当たり前の事をしただけだ」

()()()としてですか?」

厳しめの言葉をかけられ、そこでアルベルトは思い出した。


旅から戻った後、父から言われたのだ。

「ハイデルバルト公爵は、お前の旅の始まった理由を知っている。

『娘を不幸にしたくない』と言われている。

今後のお前の態度次第では婚約は白紙になる可能性もある。

もしくはお前有責での解消だな。心に刻んでおけ」


「娘とは話をされたのですよね?どうなりましたか?」

「次はない、と言われました・・・」

ふむ、と公爵が顎を触りながら考えている様子だった。

アルベルトの背中を冷たい汗がダラダラと流れていく。

握り締めている手も汗だらけだ。


沈黙が続く中、扉がノックされ、執事が入ってきた。

そのまま公爵に何かを耳打ちすると、少し驚いた顔をしたあと、頷いた。

部屋から出ていった執事と入れ替わるように、公爵夫人が入ってきた。

「殿下、ご無沙汰しております」

「ああ、外遊に行っていたから、公爵夫人に挨拶が遅れてすまない」

「よろしいんですのよ、ところで今日は娘とお茶を楽しまれたとか」

「はい、ゆっくり話したいと言われましたので、おかげで土産も渡すことができました」

「そうでしたか・・・ところで、もう熱は冷めましたの?」「おいっ何を」

(熱?とはなんだ?病気はしていないし、冷めた、と言われたが・・・あっ)

公爵夫人の言葉に思い至ったアルベルトは頭をさげた。

王族が簡単に貴族に頭をさげることなどありえないのだが、アルベルトはエレーナの婚約者として、婚約者の両親に心から謝罪の意を示したのだった。

「で、殿下?王族が頭をさげるなど・・・」

公爵は戸惑っているが、公爵夫人はじっとアルベルトを見つめている。

「今の私はエレーナの婚約者として、婚約者のご両親に頭をさげている。

もう2度とエレーナをないがしろになどしないと誓います。

私の隣にはエレーナにいてほしいのです」

アルベルトが必死でそう伝えると、公爵夫人はにっこり笑った。

「次はありませんわよ」

「はいっ!!」

母娘で同じセリフを言われたアルベルトは思わず立ち上がって返事をしてしまった。


アルベルトの返事に満足したのか、公爵夫人は公爵に顔を寄せて何かを話していた。

そして、公爵夫妻はにっこりと笑って、 「娘をこれからもよろしく」と言った。 


公爵邸を辞去して馬車へと乗り込んだアルベルトは、自分の背中も太ももの下も手で握っていたズボンも汗で濡れてしわしわになっていることに気が付いた。

(首の皮一枚かな。今後の対応は間違えられないな)

そう思い、改めてエリザベスへの対応を相談しなければ、と考えていた。

アルベルト、自業自得・・・。

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