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31 王子は令嬢の話を聞く④


 「サリーさん、わたくしは貴女にそのように呼ばれる覚えはありません」

「え~、別にいいじゃない」

「よくありません。それに貴女は護衛見習なのでしょう?何故今この執務室で座っているのですか?

学園にも護衛としてついてきておられますが、とても護衛見習とは思えない立ち位置です。

このままでは他の女性騎士たち、社会に出ようとしている女性たちにも迷惑ですわ」

「ひどい!ヘンリー!この人私を迷惑だっていったわ!!」

サリーはそう言ってうわーんと泣き始めた。

「アデレイド様、妹をいじめないでいただきたい。大体、女性が騎士などと、女は黙って守られている方が可愛いですよ?女性の社会進出を声高に叫ぶなど、はしたないですよ」

ガイウスが泣きわめくサリーの背中をなでながら、こちらを睨む。

「ガイウス様、これはいじめではありません。

それに、今の発言は許容できませんわ。そう思っていらっしゃるなら何故、サリーさんは護衛騎士を望んでいたの?」

「それは・・・妹の事は別です。妹はヘンリーの役に立ちたいと思っているのですから」

「それにしては、訓練を全くやってないですわね。

立っているだけで護衛など、男女関係なくありえませんわね」

アデレイドの嫌味にガイウスが立ち上がって睨んできた。

ガイウスとアデレイドがにらみ合っているのだが、ヘンリーはまだ何も言わない。


そんなヘンリーに失望したアデレイドは、ヘンリーに向き直った。

「もう結構です。とにかくヘンリー様、女性の努力を貶めるような真似をなさらないでください。

護衛なら護衛らしくさせてください、あまりに身びいきが過ぎると、王家の求心力の低下につながりますから」

そう言い捨てるようにして、ヘンリーの執務室から出た。


アデレイドの言葉に何かを感じたのか、次の日からサリーが学園についてくることはなかった。

サリーは一緒に来る気まんまんだったようだが、ヘンリーが断った、と聞いた。

このまま、サリーがきちんと訓練をしてくれたら、とアデレイドが思っていたのだが、1週間ほど経ったある日、学園に登校すると突然、断罪された。


「アデレイド様、何故毒など購入されたのですか?」

「?何のこと?」

「昨日下町まで身分を隠して怪しげな店に入るところを見ました」

「昨日?わたくしは孤児院の慰問に行ったけれど?怪しげな店?など知らないわ」

「とぼけても無駄です、私はこの目で見ました。

後から店に入り、確認しましたら、毒を購入されたと店主が証言しております」

「本当に何のことかわからないわ」


ガイウスが引き連れてきた騎士団の騎士たちに身柄を拘束され、取り調べを受けた。

何度否定しても、証言がある、と言われ、ヘンリーに面会を求めても、実家の父に連絡を取ってほしいとお願いしても、どれもすべて却下された。

ガイウスが中心になっているようで、いつも側にいてヘンリーを癒しているサリーを毒殺しようとして毒を購入した、という筋書きが出来上がっているようだった。

そして、何故か王妃が毒で倒れた事件も、首謀者はアデレイドだとされた。


誰も自分を信じてくれず、毎日毎日尋問され、アデレイドの精神は疲弊していた。

そんな時、何故かガイウスに連れられ、サリーが尋問室にやってきた。

何故?サリーさんが?ぼんやりとした思考で考えていると、にやっとサリーが笑った。

「ねえ、アデレイド、ヘンリーはね、あんたが王妃様を殺そうとしたって信じてるわ。

それから私にも毒を盛ろうとしたって。ふふふ、ヘンリーはあんたの事憎んでるわ。

今、私が側にいてずっと慰めてあげているの。

サリーがいてくれてよかった、ですって、可哀そうなアデレイド」

「犯罪者のお前を処刑したかったのだが、状況証拠ばかりで、処刑までは無理だそうだ。

だが、このままこの国に置いておくと、サリーに何するかわからんからな。

この国から追放してやろう」

ガイウスがそう言ってにやりと笑った。

ああ、同じ笑い方、似た者兄妹なのね、アデレイドは何故かそんな事を思った。


そのままアデレイドは粗末な馬車に乗せられ、ガ=ミル国に連れてこられた。

ガイウスの息のかかった騎士なのだろう、ガ=ミル国で神官長に伝えられた内容は、嫉妬に狂って毒殺をもくろんだ悪女になっていた。

ガ=ミル国の事は知っていたが、自分がそこに連れてこられたとは思ってもおらず、最初に神官長から説明を受けるはずが、手違いでいきなり食堂に連れていかれ、アデレイドは混乱の極みにいたらしい。

そんな中、笑い声がして、そちらを見ると灰色服の男性たち。

馬鹿にされた、と勘違いしたアデレイドが思いきりやらかしてしまったのだった。


「本当に申し訳ありませんでした。

その後、部屋に一人残され、もうわたくしは疲れてしまって。

婚約者にも親にも救ってもらえず、誰も私の心配などしないなら、いっそ何もかも捨ててしまおうと思って・・・」

恥ずかしそうに謝るアデレイドにアルベルト達は気にしないように伝えた。

「誰も心配してないことはないですよ?貴女を助けてくれてありがとうと、あなたの侍女?さんかな?お礼を言われましたから」

「まあ、わたくしは気が付かなかったのですが、こちらに向かう馬車についてきてくれたそうです。

そうですか、わたくし、周囲の事を何も見てなかったのですね」

「まあ、いばったり、平民だと思って絡んだり、湖に入ったり、いろいろ忙しかったですしね」

「「「「バッツ!!!」」」」

「うふふ、そうですね、今までで一番わがままで傲慢なわたくしでしたわね」


「それにしても、そのガイウス?は何故そこまでの権限を持ったのだろう?」

「普通は騎士団長が指揮するものでしょう?」

「それにしても、アデレイド嬢、あなたはきちんと神官長に今の話をした方がいい」

アルベルトの言葉にアデレイドは深く頷いた。


そのまま、神官長と面会をして、アデレイドは自分の状況を語ったのだった。






やっと話を聞き終えました・・・。

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