30 王子は令嬢の話を聞く③
王妃様が倒れた、その知らせを聞いたのは自宅だった。
急いで王宮へ駆けつけたが、王妃様の意識も戻っていないため面会はできないと言われた。
犯人も見つかっておらず、騎士団が調査をしているところだ、と聞いた。
アデレイドには何もできることはなく、ヘンリーの様子を見に行くことにした。
ヘンリーの横には妹のマーガレットが座っていた。
そして、何故かサリーも座っていた。
「ヘンリー様」
「アディ、よく来てくれた」
「マーガレット様も、大丈夫ですか?」
「・・・わたし・・・「マーガレットは何にもわからないでしょ?」」
マーガレットの言葉を遮るようにサリーが話した。
「ええ、そうね、私なんかがわかることなんてないわ」
アデレイドと会った時からマーガレットの自己評価は低く、いつも卑屈そうに肩をすくめていた。
だが、アデレイドが女性の社会参加のために活動している姿に惹かれ、自分も手伝いがしたいと一緒に動くうちに段々と明るい笑顔をみせるようになっていたのだが・・・。
それにしてもサリーの態度は目に余るものがあった。
「ヘンリー様、何故ここにサリーさんがいるのかしら?」
「ああ、母上を心配してくれて」
「そうですか、ですが、サリーさんは騎士見習ですよね。
騎士団が調査に動いている最中に勝手な振る舞いは許されていないはずです。
騎士団にお戻りなさい」
アデレイドがきっぱりとそう告げると、サリーはポロポロと涙を流した。
「ひどいわ、私小さい頃王妃様に可愛がってもらっていたのよ。
こんな時に王妃様を心配して何がいけないの?私はヘンリーとマーガレットの乳兄弟よ?」
「アデレイド嬢、妹は繊細で心優しいのだ。お二人を慰めようとここへ来たことの何がいけない?」
「ガイウス様、たとえ乳兄弟であったとしても、公私の区別はきちんとつけなければいけません。
ましてや王族ですよ?特定の誰かを特別に扱うようなことがあれば、王家の信頼が揺るぎます。
ガイウス様、側近としての立場と、兄としての情を一緒にしては困ります」
「ガイウス、サリーを送って行ってやれ」
ヘンリーがそう告げると、ガイウスは不服そうな顔をした。
「ヘンリー、サリーはお前を心配して・・・」
「気持ちは受け取るが、アディの言うとおりだ。この緊急事態だ、サリー騎士団へ戻れ」
ヘンリーにそう言われ、サリーはますます激しく泣いた。
あまりにうるさいので、アデレイドは護衛の女性騎士にサリーを連れ出して騎士団に置いてくるよう命じた。
自分を睨みつけるガイウスを視界に入れないように、アデレイドはヘンリーとマーガレットに寄り添った。
やがて王妃は無事に解毒がすみ、意識を取り戻した。
だが、暫くは面会禁止とされた。
王妃が倒れてから、何故か学園にサリーがついてくるようになった。
通常であれば、サリーは生徒として通うべきなのだが、彼女は入学試験に落ちた。
大抵の貴族子女は家で家庭教師から入学に必要な学力をつけて試験を受ける。
よほど覚えの悪い者でも大抵は受かる。が、サリーは落ちた。
だが、学園には通いたい、というわがままを通すために護衛騎士見習としてヘンリーと共に学園に通うことになったようだ。
だが、サリーはヘンリーの横に並び、ぺちゃくちゃとおしゃべりをしている。
どう見ても護衛にはならない。
その姿は他の生徒たちの間でも噂となり、女性騎士は所詮お飾り、といった風潮が生まれ始めていた。
騎士団には女性からの入団希望が増え始めていた。
アデレイドが騎士団長から呼ばれていくと、積み上げた書類を見せてくれた。
「全部が女性の入団希望者ですか?」
「そうです、・・・・・・本当に騎士になりたい者は数名です。
他は高位貴族の“お飾りの護衛”希望です」
「何てこと!」
「ええ、せっかく騎士団の中でも女性騎士を仲間とみてくれるようになっていたというのに。
王宮に来る貴族の中には、”お飾りの護衛”にならないか?などと女性騎士に声をかける輩まで現れています。このままでは王妃様やアデレイド様が推進しておられる女性の社会進出が後退していってしまいかねません。どうか、殿下にあのサリーをきちんと扱うようにしてもらってください」
騎士団長の必死の願いにアデレイドは深く頷いた。
その後、相談の上、入団希望者には、体験で10日ほど仮入隊をしてもらい、通常の訓練をつけることにしてもらった。
ついてこられない者は団長権限で失格としてもらう、また、サリーのような態度の者は注意3回、警告1回、それでも改められないときは強制的に騎士団から追い出すことも決められた。
サリーも例外なくこの基準に当てはめてもらうことにした。
そのままアデレイドはヘンリーの執務室へと向かった。
面会を申し込むとすぐに許可が出たので、部屋に入ると、やはり、サリーがソファに座っていた。
ため息をこらえて、アデレイドはヘンリーに騎士団長からのお願いを伝えた。
「ヘンリー様、このままではせっかく努力してきた女性騎士たちが貶められてしまいます。
他の文官などを目指す女性たちも同様です。サリーさんだけを特別扱いしないでください」
ヘンリーは何も答えない。
「アデレイドさん、嫉妬ですか?」
サリーの言葉にアデレイドは頭が痛くなった。
令嬢の話が長くなってしまいました。
うまく削れず、まだ続きます。




