18 王子と見学
東国に滞在して数日が過ぎた。
文化が違いすぎるため、文官から東国の事について学ぶ日々だ。
バッツやフリッツ、ジャン達が刀や弓などについてかなり興味を示したため、武人たちの訓練の見学をさせてもらうことになった。
「全然違うな」「刀の持ち方からして違うな」「あの刀、近くで見ることはできないかな」
などと興味が尽きないようだ。
もちろんアルベルト、クルス、オズワルド、カルーセル達も武人たちの訓練にくぎ付けになった。
マニスタン国の騎士は外で地ならしされた場所で鍛錬を行うが、東国の鍛錬は室内を使う。
鍛錬場は木の板が張られている。
そこに裸足で入るのだ。
「裸足でお入りくだされ」
「靴を脱ぐだけでは駄目なのか?」
そう尋ねると、
「ここは神がおわす、神聖なる場所でござりまする。
その場所での鍛錬は裸足、と決まっておりまする」
そう言われると、アルベルト達は裸足になるしかない。
広々とした板張りの鍛練場は、入った正面に一段高く上がった場所があった。
その場所には何か飾ってるようにも見える。
アルベルト達は正面とは反対側の隅っこに案内された。
「申し訳ござりませぬが、此方では立ったままの見学でお願いいたしまする」
そう言われれば、立ったまま見学するしかない。
やがて武人たちが続々と入ってきた。
入り口で頭をさげ、壁際に座っていく。
話をする者もおらず、淡々と支度をしている、
入ってきた武人達は壁に沿って床にすわり、何やら身体に巻き付けている。
正面の飾りのある場所の前に誰がが座った。
すると、座っていた武人達が一斉に頭を下げた。
正面の人物はそんなに大きな声ではなかったが、
『始めよ』と言ったらしい。
武人達が一斉に「おう」と応え、立ち上がると手に持った木の棒をお互いに打ち込んでいく。
少しでも気を緩めたら木の棒は身体にあたり、おそらく大怪我を負うだろう。
打ち合いの後、今度は相手の胸に向かって棒をつく。
突かれた方は、しっかり受け止める者、よろける者と色々だった。
その後の鍛錬も、アルベルト達が声を出す事もできないほど、一瞬の気の緩みも許されないものだった。
唖然としているアルベルト達には目もくれず、腰の太さくらいある布を巻いた木が並べられた。
武人達は正面にいる人物の前で座り、頭を下げてから横にある場所から刀を持っていく。
そして、その刀で、あの布巻きされた木を真っ二つに切った。
「「「「「「???!!!!!!!」」」」」」」
アルベルト達の衝撃たるや、全員で床に膝をついてしまうほどだった。
剣道と居合い道が混じってる感じと思ってもらえたら、そんな感じです。
作者の考えたゆるふわ武道だとお許しください。




