16 王子と3か国目
アルベルト達は風をはらみながら進む帆船の上で船上の人となっていた。
「あまり揺れないもんだな」
「そうですね、ここまで大きな船ですと、安定しているのかもしれませんね」
「わが国の船とは違うのだな」
「東国の帆船は長旅に耐えられるように建造されておりまする」
東国の船長がそう説明をしてくれた。
「長旅に?」
「我が東国は周囲を海に囲まれておりますゆえ、外交には長旅が必須ですから」
「なるほど」
「海が荒れている時は出られませぬので、外交用の船は何艘もありまする。
港に引きそろった時はそれは圧巻で」
「見てみたいな」
「機会がありましたら是非とも」
そんな会話をしながら、船は順調に進んだ。
季節もよく、船長も風をよむのに長けた人物であったこともあり、3日で東国に到着できた。
「久々の地面だ」「なんかまだ船上にいるみたいな感じだな」
「地面が揺れている気がする」「そんなわけあるか」
クルスやバッツ達がそう軽口をたたいていると、目の前に現れた人物が、膝をつき、両手を頭より上にあげた状態で頭をさげた。
「私は東国の大臣を務めておりまする、タツミと申します。
遠路はるばるとお越しいただき、われらもろ手を挙げて歓迎いたしまする」
「頭をあげてくれ、タツミ殿」
「ありがたきお言葉、それでは御身を拝謁させていただきまする」
共通語なのにどこか違う言葉使いに、アルベルト達はちょっとだけ困惑した。
「それでは、主上がお待ちしておりまするので、此方にお乗りくださいませ」
案内されたのは馬車とは違う車輪の付いた乗り物だった。
「こちらは?」
「こちらは牛が引きまする牛車でござりまする。マニスタン国とは違い、牛が引きまするが、乗り心地は保証いたしまする」
恐る恐る乗ってみたが、四方を囲まれた牛車は足を延ばして座ることができ、座るための座席にはクッションが置いてあった。
腰を降ろすと、「出立~」と掛け声がかかり、ギュッギュッと音がして牛車が動き出した。
馬車のように揺れることもなく、思っていたよりも速いスピードで進んでいく。
「わが国とはずいぶん文化が違うんだな」
「そうですね、牛にひかせるとは・・・ですが、あまり揺れもなく、乗り心地は悪くありませんね」
「それよりも、周囲にいた騎士?かな、あの護衛達の剣は私たちの剣とは違いましたね」
「ああ、弓を背負っている者もいたな」
「あれも変わった形だったな」「試させてもらえるといいな・・・」「お前そればっかりだな」
話すことはマニスタン国とはまったく違った文化のこと。
東国は海に囲まれているため、文化も周囲の国とは違い独特であった。
そのため、神秘の国として他国からは一目置かれている。
それを十分に知っている東国は、神秘の国を前面に押し出した輸出を主産業にしている。
そんな東国の牛車に揺られ、御殿へと到着した。
やはりマニスタン国とは違い、初めて目にする建造物だった。
決して高くはないのだが、階段を上がった先にある庭園は広く、大きな岩や池があり、何やら良い音もしてくる。全体が木造なので風通りもよく、マニスタン国の城とは違い、横に広い建物となっていた。
「主上がお待ちしておりまする、どうぞこちらへ」
そう言って案内された先にはとても広い木の板が張られた広間だった。
その先の1段高くなったところ座る人物がいた。
「あちらにおられますのが我が主人、暁王様でござりまする。
皆様は直接下にお座りになられるのに慣れておられないので、小さき椅子をご用意いたしておりまする」
そう言ってマニスタン国の椅子よりは小ぶりで、背もたれのない椅子が用意されていた。
座るように促され、腰を降ろしてみると、自然と足が椅子の下に来るようになっており、椅子を使った正座のような状態になる。
アルベルトはそのままで挨拶を述べた。
「はじめてお目にかかります、マニスタン国のアルベルトと申します。
この度は滞在を許可いただき、ありがとうございます」
アルベルトがそう述べると、暁王が何かを話した。
すると、暁王のすぐ近くに控えていた人物が返事をした。
「暁王より、ようこそ参られた、歓迎いたす、とのお言葉です」
直接返事がもらえない事に、アルベルト達は驚いた。
これが東国の文化の違いなんだろうか、とアルベルト達は思った。
東国は作者がイメージした日本風な国です。
あくまでも想像上の国ですので、いろいろ突っ込みどころがあるかと思いますが、あったかい目で読んでいただけると嬉しいです。
今後も東国の話の中ではいろいろ違いがありますが、そういうものだ、くらいゆるふわな感じでお読みください。




