13 王子の見た友情
短めです。
以前の取り巻き達は平民となったクロードをからかったり嘲ったりしている。
「偉そうにしてたくせに、俺たちと同じ身分だな」
「お前なんて王子じゃなければ誰もつきあわねーよ」
「王族特権ってやつもないんだろう?使えねー」
取り巻き達は王子と仲良くしていたから、他の貴族たちにも威圧的にふるまっていたのだが、クロードが身分を落とされてからは、通常に戻ってしまった事を面白くなく思っていた。
「なあ、お前なんもできないんだろう?食堂でも使えねーって評判らしいじゃん」
「俺たちがいろいろ教えてやるよ」
そう言ってクロードを連れて行った。
「大丈夫だろうか」
「心配ですね」「後をつけますか?」
「う~ん」
アルベルトが判断に迷っていると、クロードの元側近たちが後をつけていくのが見えた。
「あ」
「どうするつもりだろう?」
「私達も行こう」
クロードが連れていかれたのは、人気のない校舎の裏手だった。
「まずは地面に膝をつけよ」
「え・・・何を?」
「いいからいうとおりにしろよ、愚図が」
クロードは後ろから膝に足を入れられ、そのまま体勢を崩した。
「お前は毎日マーリアとベタベタしやがって!マーリアは俺の恋人だぞ」
「は?何言ってんだ、俺のだぞ?」
「マーリアは俺の為に好きでもない王子に媚を売ってたんだぞ」
取り巻き達の話が思わぬ方向へ向かう。
「どうやらあの女生徒は全員にうまい事取り入っていたみたいだな」
「そうですね」
「誰にでもよい顔をして、甘い言葉で男心をくすぐる、と」
「どこかにもいましたねぇ、そんな女性」
クルスの言葉に全員がバツの悪そうな顔になった。
サロン前ですでに心を折られていたクロードは、なんとも言えない表情を浮かべていた。
段々とヒートアップしていく取り巻き達。
そのうち、「くそっ、おもしろくねえ」と言って一人がクロードを蹴った。
それに触発されたのか、次々と手をだしはじめた。
「まずい、助けないと」
アルベルト達が動き出すより前に、元側近たちが走り出していた。
「やめろ」
「うるせえな、なんだ・・・あ」
「ここは学院の中だ。どういう理由であれ、暴力は許されない」
「いや」「あの」
取り巻き達は焦って逃げ出そうとしていたのだが、側近達に拘束され、その後駆けつけた教師によって連れていかれた。
「大丈夫ですか?」
そう言ってクロードを立たせると、クロードは泣いていた。
そして泣きながら何度も 「すまなかった」 と繰り返していた。
側近たちはお互いの顔を見合わせると、困ったように笑った。
「クロード様、もういいですよ」
「そうそう、顔を拭いてください」
口々にクロードを慰めていた。
「俺にかまってもいいのか?」
「何をいまさら」「そうですよ、何歳から一緒に過ごしてきたと思ってるんですか?」
「すぐに調子に乗せられるんだから」「思い込みも激しいですしね」
「我々は元側近ですが、あなたの友人としての立場はかわりませんよ。どんな身分になっても」
クロードはその言葉を聞くとますます激しく泣き出した。
「側近でもあり友人でもある、か」
「これこそクロード様の求めていた平等、ですかね」
「そうかもしれないな」
「平民と貴族になっても心配して助けてくれる友人か」
「よい関係ですね」
クロードを囲みながら立ち去る様子を見ながら、アルベルト達は自分たちもお互いを助け合えるようにしたい、と思ったのだった。




