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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

マネジメント

作者: 村嶋

 インターネットは海に例えられることが多いけれど、その通りだと思います。

 いつ見ても誰かがいるような場所があり、反対に誰も訪れないような深い場所・陸から離れた場所もある。そういうところです。

 つまり、そんな海のような場所には、人知れず何があってもおかしくないでしょう。



 *


 私、ちょっとだけ美術系の専門学校に行ってたんですよ。

 それで、私の後輩の話です。


 その後輩は、自己顕示欲がとても強い子で、いつもそういう欲求が満たされないことに苦しんでいました。

 ほら、人の目につくところに出る機会はインターネットを通してぐっと増えたけど、実際に見てもらえるかどうかはわからないでしょ。

 注目されるかは本人の能力だけじゃなくて、運もありますから。


 最初は真っ当に制作した作品をインターネットにアップロードしていたみたいです。

 実際のところのアクセス数はわからないけど……でも、なかなか伸び悩んでいるようでした。

 彼は……本人に言ったら傷つけちゃうと思ったからずっと黙ってるんだけど……割と普通の感性の子だから。いい作品だけど、心に残ったり、刺さったりするかというと、ちょっと厳しいかな、って感じでした。


 色々とPRする努力はしてたみたいで、私も協力したんですが、なかなか世間に評価されるような結果には繋がりませんでした。

 だからかな。何ヶ月かして、ちょっと当初とは方向性が変わっていったんですね。


 端的に言えば刺激が強いものがずっと増えました。

 最初は道端の花とかを率直に捉えていたようなものが、人の後ろ暗いところを隠し撮ったりするようなものに置き換わっていきました。

 この辺は、オブラートに包んで話すの難しいな。とにかくエログロナンセンスに傾倒するようになったって感じです。


 そうしたら、やっぱり野次馬根性の人とか、刺激が強いものを見たいだけの人にも見てもらえるから、一瞬は満たされるみたいでした。


 でも、そんなの一瞬のことですよ。


 私は最初の頃だけ、少し彼の作品のデザインに噛んだだけでしたが、またその頃から彼の相談にのるようになりました。


 どうしたかって? 私がマネジメントしてあげるよ! って言いました。

 以前から、私は彼に制作に集中してほしかったんです。アクセス数をちまちま調べて悩んでる時間がもったいないくらい、ポテンシャルのある人間だってその頃には思っていたから。


 そういうウェブサイトの細部は私に任せて、少し制作のことだけ見てなよ、そうしたら沢山アクセスされるようにしてあげるから。

 彼はちょっと躊躇してたけど、かなり楽になったみたいでした。

 それからは、彼の作品は私の管理下に置かれています。


 *


 ほら、これですよ。見て下さい。

 彼の……彼と、私のウェブサイトです。


 トップページに一番目立つものを置くっていうのも考えましたけど、そうすると後から後からレベルが下がっていくように感じられるから、最初は軽いジャブのつもりで、


 右手の人差し指を切り落として縁側に置いたところを載せています。


 え? 誰のって?

 私の話聞いてました?

 彼のウェブサイトって言ったじゃないですか。


 話戻していいですか?

 それで、その下がコンテンツツリーですけど、それぞれを人体の部位名で分類してあります。


 ウェブサイトに来た皆が見たいページに移動しやすいように私もこだわってますよ。

 ほら、この辺りは腹部器官です。

 一個一個が大きいから、色々な表現に挑戦できて彼も喜んでますよ。



 あなた、何なんですか? さっきから反応悪くてあんまりいい気がしないです。

 皆もっと喜んでくれるのに。コメント欄は荒れちゃってすぐ閉鎖しましたけど、アクセス数が……ほら、如実でしょう。

 これが彼の求めている評価に違いありません。だってそう言ってましたよ。「何でもいいから、見てほしい、誰かに認められたい」って。


 彼と私で、皆の評価してくれる“作品”を作ることができたんです。


 彼が望んでいるかどうかが気になる? さっき言ったでしょう、見てもらって認められたいということだけが彼の望みだったんですよ。

 絶対に私のマネジメントは間違ってません。



 今後のことですね。もう大体を処理してしまったから、追加できるようなものがほとんど残ってないんです。

 だからアクセス数が伸び悩んでいるので……ちょっと困っていたのが正直なところ。


 だからこの前、彼の弟に連絡をしてみました。


 弟くんは、彼に、とっても似ているんです。

 見た目も、性格も……。



 私もまた、マネジメントのしがいがありそうです。




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