日曜日
日曜日、迎えに行った彼女は洋服を着ていた
着物でなければ紛れてしまうかと思っていたが、何故か何となくすぐに分かってしまった
一応電話をかけて、確かめながら声をかける
彼女は僕を見て、ほっとしたような顔をした
青い色が好きなのだろうか?
青いワンピースが良く似合っていると思った
「今日はありがとう」とお礼を言うと、困ったように笑う
「お役に立てるかは分かりませんが…」
家はすぐそこなので、話らしい話もなくすぐに着いてしまう
とりあえず僕は知り合いとして彼女を紹介すると伝え、彼女も了承した
それからようやく名前を尋ねると、佐々木かなこだと名乗った
てっきり源姓かと思っていたので驚いたが、分かれるうちにそうなったらしい
僕は家に着くと、ただいまと玄関を開けた
母には人が来ることを伝えてあったので、リビングで待っているはずだった
だが、2人で靴を揃えて振り返ると、そこに母が立っていた
「おかえりなさい、それから初めまして」
「初めまして、お邪魔いたします」
彼女は慌てて頭を下げた
「母さん、こちら佐々木かなこさん」
と、僕は彼女を紹介し、彼女にも母を紹介した
母は彼女を上から下まで眺めると、にこりと笑ってお茶を淹れますね、と言った
母はお茶を淹れながら、久しぶりに紹介したい人がいるだなんていうから何かと思いましたよ、と口にした
僕はその言葉で、いつも通り何でもない相手と思っているんだな、と感じた
「僕たちたまたま知り合ったんだけど、彼女が源氏の末裔だっていうからさ。母さん会ってみたいかと思って…」
母は、まぁそうなのとお茶に集中していた
僕は座ってと、彼女を促し自分も腰掛けた
彼女は、よろしかったら…と持ってきた手土産を差し出した
「ご親切にどうも」
母は受け取りながら、出身はどちらかと聞いた
彼女は関西の方だと言い、丁寧に母の質問にも答えていった
僕は手持ち無沙汰に、彼女のくれた手土産を開けて、母が蒸らしていたお茶をそろそろいいかと注いだりしていた
「あなた、いいお嬢さんじゃない」
だから母がそう言ったときも、話を聞いていなさ過ぎて思わず固まってしまった
「は?」
正直、彼女の持ってきてくれた栗饅頭が美味しくて、もう一つ食べてもいいかとそんなことを考えていた
「自分のお家のことも良く分かってらっしゃるようで、私感心したのよ」
僕は内心、おかしいなと思った
母は一体何で人を判断しているのだろう?
誰を連れてきても楽しそうにお茶に誘っては、あれほど楽しそうに話していたくせに帰ったあとに家柄がどうのと言う
その母が、何故か彼女のことを褒めている
僕からすれば、これまでと何が違うのか分からなかった
僕は再度母に、彼女のことを知り合いだと言ったが、母は気にしていないようだった
「私はいいお嬢さんだと思ったから、そう言ったまでですよ」
困って彼女を見ると、彼女も困ったように笑って口を開いた
「あの…どうして家柄を気にされるんでしょうか?」
母は嬉しそうに、家柄が全てではないと言った
けれど、気品は遺伝子に宿る気がするのだと
「言葉遣い、所作、気遣い…全て自分で選び取って磨いてきたものでしょう? でも、何か埋め合わせのきかないものがある気がするの」
彼女は分からないらしく小首を傾げたが、母はやはり嬉しそうだ
「私、久しぶりに同じ空気を纏った方に会えた気がするわ」






