6/8
ハンカチ
彼女とは来週の日曜に最寄り駅で待ち合わせることにした
一応怪しいものではないと、名刺も渡して置いたし連絡先も交換した
それから電車代として、わざと多めにお金も渡して置いた
やっぱり来ません、とならないようにと、こちらが本気であることの証明として
彼女は少し驚いていたが、何も言わずに受け取った
それから彼女は、何か鞄の中を探して、困ったような顔をした
「残念ながら、何かお渡しできるものがないようです。必ず行きますと口では言えるんですけど…」と
僕はそれで構わない、とその言葉だけで充分だと言った
彼女は少し迷って、ハンカチをテーブルに置いた
レースの縁取りと、イニシャルの入った白いハンカチだ
「何でもないものですけど、私には大事なものです」と言う
僕は思わず笑って「これは必要なものですから」と返した
「駄目でもともとなんです。気負わないで来てください」
彼女はハンカチをしまいながら、わかりましたと頷いた