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賢者の哀しみはより深く   作者: 新竹芳
序曲 第6章 叛乱の騎士団
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第72話 「バベルの塔」第1関門

 そう思った瞬間、その穴が火を噴き、弾丸をアイン達に向け、一斉に掃射を開始した。


 その時にはトライアルは宙を舞っていた。

 メタファスはすぐに前面に障壁を展開。

 その後ろから来た騎士3名がその障壁を補強する。

 後方から数名がその障壁を超え、「鉄のヒト」に攻撃を開始した。


 5人の騎士が障壁を超えた状態でそれぞれが「鉄のヒト」の動きを止めるべく、遠隔の「魔導力」を展開、相手の動きを拘束する「空間固定」を仕掛けた。

 5人同時にその力を行使した後ろから、さらに弓使いが連発で「鉄のヒト」に向けて弦を弾いた。

 数十本放出された弓矢が、正確に各「鉄のヒト」に襲い掛かる。

 もともと弓矢に使われてある魔光石製の(ヤジり)で「鉄のヒト」に通じないことは解っていた。

 鏃が「鉄のヒト」に接触した瞬間、込められた「魔導力」を瞬間的に爆発させるため、魔光石の鏃を用いている。


 「鉄のヒト」にぶつかっていく弓矢は、ものの見事のその責を果たし、次々と爆発していく。


 「鉄のヒト」の動きが止まり、弾丸の掃射が止まる。


 シールドを即座に開放し、さらに残っていた騎士たちが抜刀して、爆発の影響で視界を奪っている煙の中に突撃する。


 誰も、今の爆発で「鉄のヒト」が倒れたとは思っていなかった。


 彼ら、シリウス騎士団の騎士たちは、この「鉄のヒト」がいかに強力な力を有しているか、協同の「魔物」掃討戦でいやというほどわかっているのだ。

 そしてその「鉄のヒト」が5体も導入していることに、甘い考えあ一切持っていなかった。


 煙が拡散している中、やはり一体も倒れることはなかった。


 切りかかる騎士たち。

 そこに自分が持つすべての「魔導力」を込めた。


 最初の騎士の剣が「鉄のヒト」の身体に切り込む。

 が、そこで剣が動かなくなった。


「くっ。」


 その騎士が低く舌打ちをした直後、また、「鉄のヒト」が掃射を開始。

 すぐに騎士たちはそれに反応したが、切り込んだ騎士はあっさり撃たれ、上半身と下半身が千切られたように離れ落ち、絶命した。


 上空に舞っていたアインが、重力の力も利用して、その全体重と「魔導力」を込めて、抜刀していた剣を一体の「鉄のヒト」に頭に叩きつけた。


 アインのこの強力な力に「鉄のヒト」の防御は全く役に立たずに、切り裂かれた。


 切り裂かれた「鉄のヒト」は掃射を停止して、前のめりに倒れて、動かなくなった。


 アインは、そのまま通路に転がり、自分に来るはずの衝撃を拡散する。

 すぐに立ち上がり振り向いて、他の「鉄のヒト」に攻撃する態勢に移ろうとした。


「ここは、こちらに任せて、団長は先へ!」


 先の煙の中、攻撃に参加していた一人の騎士が叫んだ。

 その騎士は、「鉄のヒト」にの攻撃を避けつつ、僅かずつではあるが、「鉄のヒト」の鋼鉄の体に傷をつけている。


「済まぬ。頼んだ。」


 アインは騎士のその言葉に応え、通路の先に駆け出した。


 アイン同様、空中から攻撃し、「鉄のヒト」の無力化に成功したトライアルがアインの少し後方から追ってくる。


「単純な攻撃でしたが、あの鉄の身体の強固さは厄介ですね。」


 トライアルはそう言って、自分の持っている小太刀を見せた。

 トライアルは長剣と小太刀の二刀で「鉄のヒト」を倒したようだが、その小太刀の刃こぼれは酷いものだ。

 もっとも医師や金属を切るようにはできていないのだから仕方のないことだが。


 アインはトライアルが追いついてきた時点で、走るのを止めて、歩きだしていた。


「アイン殿。どこか、やられましたか?」


 急にスピードを緩めたアインにトライアルが聞いてきた。

 この男がアイン自身が囮になり、アトロールを殺した男とは思えぬ、心配した顔をしていた。


「いや、私は大丈夫だ。だが、「鉄のヒト」の攻撃を突破してくる部下たちを待たずに次に向かうと、折角の戦力を分断される恐れがある。奥に向かいながらできるだけ合流しておきたい。」


「確かに、そうですね。どうせ、我々がここに居ることは「バベルの塔」の住人にはもうバレてるでしょうし。」


「トライアル、先の攻撃をどう思う。」


 アインは横に並んで歩くトライアルに、あまりにも単調な攻撃を仕掛けてきた「鉄のヒト」に、どう考えたらいいか、意見を求めた。」


「あまりにも単調な攻撃であったことは間違いないですな。「鉄のヒト」の優秀さは、協同作戦でいやというほど思いしらされています。銃弾を高速で撃ちまくる攻撃は、確かに脅威ですが、動きがまるでなっていなかった。私は、彼ら「バベルの塔」の住人が、我々を試しているのではないかと、愚考しています。」


「試す?何故?」


「それは小官にもわかりかねますが…。そう考えれば、その単調な「鉄のヒト」の動き。納得は出来ます。」


「試練か…。」


 広大なこの空間に二人の足音が異様に響く。


 この空間は一体何のためにあるのか?


 アインがそんなことを考え始めたとき、自分たち以外の足音が聞こえてきた。


 二人は一瞬、身構えたが、その足音が知ったもであり、緊張が少し溶けかけるが、先ほどの試練という言葉を思い出す。


 まさかとは思うが、仲間の幻影を見せることもあり得る。


 走ってきたのは副団長のメタファスと数人の騎士だった。


「団長、遅くなって申し訳ありません。」


 メタファスが謝罪の言葉を伝えてくる。

 その声を聴き、アインは本人であることを確認した。

 もっともアインのその「魔導力」による、超感覚すらも上回る擬態を「バベルの塔」が構築できるのであれば、どのみち太刀打ちが出来ないことも解ってはいる。


 アインの微妙な動きにトライアルも気づいたようで、油断なく周りを探索している。


「団長と、トライアル殿が2体「鉄のヒト」の動きを無力化してくれたおかげで、何とか突破出来ましたが…。」


 かなりの犠牲を出したことがアインにもわかった。


 アインは自分のために彼らを巻き込んでいることは充分に理解していた。


 それでも、今のこの体制を崩したいと本気で思っている。


 この事が成し遂げられれば、自分の…。


「アイン団長、行きましょう。行って、「バベルの塔」を破壊しましょう。」


 メタファスがアインに向け、声を掛けた。

 そう、すべての元凶、「バベルの塔」をこの国から排除すること、今はそれだけを考えるべきだ。


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