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賢者の哀しみはより深く   作者: 新竹芳
序曲 第5章 「天の恵み」攻防戦 Ⅳ
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第57話 激突 Ⅱ

 ミノルフが思いついたことは、取り立てて凄いものではない。

 というよりも誰もがすぐに思いつきそうなものだった。

 ただし、誰でもできるものではなく、誰かにやらせるには躊躇せざる負えないやり方である。

 もしかしたら、国軍上層部の中では、特にクリフォント少将辺りはすでに思いついてはいたものの、直接命令できる国軍兵士にはできる者がいないという事と、出来る可能性のある飛竜隊は自分たち国軍とは別の軍隊、騎士団に属していて、簡単に命令できる立場にはないことから、口にはしなかった可能性があった。


 そう、ツインネック・モンストラムの攻撃直前の口の中に、妨害できるものを無理やりねじ込むこと。もしくは、攻撃器官の直接的な破壊。


 実に簡単に思いつく方法であり、非常に実施の難しい方法であった。


 この方法が実行できるのは、「テレム」発生器の話が出る前では、飛竜隊しか、可能性がなかった。しかも、「テレム」濃度の薄い状態での飛竜の機動性は著しく落ちる。

 飛ぶことはできるし、目的地までの飛行は可能ではあるものの、高速移動、急旋回などは「魔導力」・体力共に大幅に消耗する。

 ツインネック・モンストラムの動きが「テレム」濃度の気迫に伴い緩慢になっているとはいえ、攻撃直前にその口に障害物を詰め込めるほどの動きは期待できなかった。


 しかし、「テレム」発生器の使用により、「テレム」濃度の問題は解消できた。

 その結果、先の奇跡のような攻撃射線の強引な変更という作戦が立案されたわけだが、同じように攻撃直前のツインネック・モンストラムの口の中に障害物を入れる、もしくは攻撃器官の直接的な破壊も可能性が高まった。というより、その実施者の命を考えなければ、この方法が成功確率が一番高いとミノルフは考えたのだ。

 

 特に、今回ツインネック・モンストラムの同時攻撃の可能性を考えたときに、その二つの首を攻撃直前に角度を変えさせるのは、かなり厳しいとも思っていた。

 もしかしたら、クリフォント少将なら、今回の攻撃メンバーが国軍兵士であれば、そう言った意見を言っていたのかもしれない。

 しかしながら、今回の攻撃メンバーは、自分と学生達であり、とてもその無謀な作戦を押し付けることが出来なかったと考えられる。


 自分がやるしかない。ミノルフは思った。


 ただ、この作戦を決行するには、最低限ペガサスの同意がいる。


 ミノルフは出来れば、自分をツインネック・モンストラムの口の中に誘導後、ペガサスには離脱して欲しかったが、それはかたくなに拒否された。

 仕方がないので、ミノルフは剣を口の中に突っ込んで攻撃器官を破壊すると同時に離脱するというかなり無茶な作戦をペガサスに提案して、了承を得る形になった。

 ミノルフの心は、攻撃直前に手綱を離し、自ら飛び込む気ではいたのだが…。


 後の首に関しては、これはアルクネメとマリオネットに託すしかなかった。


 当然ながら、この計画は自分とミノルフの心の中だけで準備、実行されたのである。




 既に、「バベルの塔」執政者たちはミノルフとペガサスの行動から、彼らが何を考えているか理解していた。

 しかし、その方法が確実であることも分かっていた。


「無駄死にだけはしないで欲しい。」


「「カエサル」、それはこれからの我々の行動にかかってる。」


「スサノオ」は静かに言った。


「天の恵み」回収運搬車はゆっくりと動いている。




 小型飛翔機は上空からツインネック・モンストラムの記録を開始していた。


 上空から見るツインネック・モンストラムの姿は、まさしく異形そのものだった。


 巨大な体、二つの長い首、大きな鎧のような体を包む甲羅、長い尻尾、8本の太い脚。


 その全体が蒼黒く、所狭しと赤い線がある。

 この化け物が最盛期の時はこの赤い線は赤い目として開いていたはずである。

 今は周りの「テレム」を奪われ、その巨体を維持できないでいるはずだ。

 だが、攻撃する意志がある。「魔物」とは生存本能の塊のはずだ。


 ハーノルドは壁に展開される映像に、そんな違和感を持っていた。


「大丈夫だよね、アルク姉。」


 ブルックスは小型飛翔機を細かく操作しながらそう呟いた。


 ハーノルドにもミフリダスにも、何も言えなかった。


 その化け物の周りにアルクネメとマリオネットが足元に光る円盤を発現させ、空中に浮かんでいる。その姿さえも、ブルックスには危ういものだった。


 短い金髪を帽子に隠し、その体も迷彩の野戦服に包まれている。

 その右手にブルックスが渡した「魔導剣」を右手に、だが楯も背嚢も持っていなかった。

 これが完全突撃型にシフトした形であることをハーノルドはブルックスに説明した。


 その映像の中、ミノルフがやけにツインネック・モンストラムの首の周りを飛んでいた。


「あの飛び方って、なんかおかしくないかな。まるで煽ってるみたいだけど。」


 ブルックスが誰に言うでもなく呟く。


「話では、あの口から攻撃がされたようだが…。自分に向くようにしてる?」


「いや、煽るというより、口が開くタイミングを見てるように思うが…。」


 ハーノルドの言葉にミフリダスが意見をはさんだ。


 首が動き出し、口が開き始めた。


 3人に緊張が走る。


 映像にいる4人がその攻撃配置についたように感じたときに、ミノルフがツインネック・モンストラムから距離を取るように離れ、そしてそこから急旋回する飛竜ペガサス。


 皆、一斉に動く出したが、明らかにオオネスカの様子がおかしい。

 敵を見ずに、その視線はミノルフに向かってる。

 不安そうに…。


「まずい、ブルックス!ミノルフ殿はあの口に突っ込むつもりだ!」


 ペガサスが加速を開始。口を開ける化け物に向かっていく。

 ミノルフは左手で手綱を握りしめて、右手で剣を構えてそのままペガサスと共に疾走する。


 ブルックスは小型飛翔機を静止モードから動作モードに変更。

 最大の加速を与えるために、握っている制御棒を力いっぱい握りしめた。


 最大加速。


「間に合ってくれ!」


 ブルックスは叫んで、ミノルフが突っ込んでいくツインネック・モンストラムの口に向け、小型飛翔機を高速で飛ばした。



 

ツインネック・モンストラムの首で爆発が起こった。


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