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賢者の哀しみはより深く   作者: 新竹芳
序曲 第5章 「天の恵み」攻防戦 Ⅳ
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第53話 「テレム」発生器

「作戦を変更する。」


 この言葉にクリフォント少将は、何か言おうとしたが「スサノオ」の碧い目を向けられ言葉を発することが出来なかった。


「先程のクリフォント少将の作戦は廃する。事情が変わった。ミノルフ卿、君の持っているその装置は他に誰が持っているか?」


 指名されたミノルフが一歩前に出る。


「私の「テレム」発生器は剣の柄に装着されていますが、ほかは円形の装置と聞いております。持っている人物は、学生でオオネスカのチームのメンバー6人です。全部で7個になります。」


「よろしい。今回の作戦を行う上では足りる数字であることが分かった。さて、諸君。」


 そう言って、「スサノオ」はここにいる今回の軍事行動の幹部を見る。


「小型の機械を飛ばしてまで伝えられたブルックス・ハスケル君の情報は非常に重大な意味を我々に教えてくれた。彼らの作った「テレム」発生器はその構成成分があればテレムリウムの力を使い「テレム」を発生できるということだ。」


 この言葉に納得するものと、不思議そうに「スサノオ」を見るもの。

 後者は国軍の軍人である。


「つまり、シールドで分解された「テレム」を再生し、力として利用できるということだ。」


 この言葉に、八方ふさがりに見えた「天の恵み」を回収するこの作戦を成功に導く確率が上がったということだ。


「シールドを切ることなく、作戦を遂行できる、ということですか?」


 先の一件で屈辱を受け、意気消沈していたバイエルが控えめに発言した。


「少数精鋭のチームになるがな。」


 バイエルの言葉に「スサノオ」はそう返した。

「現在、ミノルフ卿のものを含めて7個。そのうち一つは「探索士」として超一流であろうオービットに任せる。あとはオオネスカ、アルクネメ、マリオネット、そして飛竜のペガサスとエンジェルに配備してもらう。」


 先のツインネック攻略のメンバーである。


「了解しました。このメンバーでミーティングをして、作戦に向かいます。」


「ミノルフ卿、細かい作戦の指示は貴君に任せる。いいね、クリフォント少将。」


 「スサノオ」が憮然とした少将にそう言葉を向けた。


「承知しております。」


 クリフォントはそう言うと席を立ちあがった。


「時間がありません、賢者「スサノオ」。計画が決まったら、すぐに行動を。」


「少将の言うとおりだ。ただちにこの発生器と各種機材の同調、並びに観測機器を対ツインネック・モンストラムに合わせよ。それと、さっきの飛翔体も使わせてもらう。「カエサル」「サルトル」、いけるか?」


「当然です。すでに改造設計図をクラウドにアップして、「バベルの塔」からのバックアップ取っています。」


「よし、他の者はこの「天の恵み」を全力で防御して、退避行動。全員行動を開始せよ。」


 全員が立ち上がり、敬礼。


「了解!」


 ほとんどの兵士が、各場所に散る。


 クリフォント少将がミノルフに近づいてきた。


「頼んだぞ、ミノルフ卿!私は何も部下の死を見たいわけじゃないんだ。」


「承知しております。」


 ミノルフがクリフォントがただの傲慢な将官ではないことを今更ながら気づいた。


 そのあとからバイエル准将がミノルフに声をかける。


「とりあえず、勝機が見えてよかった。犠牲者を極力出さないように頼む、ミノルフ司令。貴君も含めてな。」


「ありがとうございます。」


 皆、あの化け物に対して無力感があったのだ。

 だが、勝率が100%あるわけではない。

 よく言って40%くらいだろう。

 だが、つい先ほどまでは限りなく0に近かったのだから。


 ミノルフも野戦テントを出て、オオネスカのチームに向かった。


 アルクネメが飛翔体と照れながら話していた。


「盛り上がっているところ申し訳ない。作戦が決定した。」


 笑顔の面々の表情が引き締まる。


「ブルックス君、聞こえるか。」


「はい。」


「我々の「テレム」発生器と各種戦闘用入出力機との同調方法を「探索士」のオービットに説明してくれ。オービット、こっちに来てくれ。」


 呼ばれて少し遠くからブルックスとアルクネメの話を聞いていたオービットが飛翔機の前に来た。


 ブルックスからは見えるが、オービットは声しか聞こえない。


「オオネスカチームの「探索士」オービットだ、よろしくブルックス。」


「よろしくお願いしますオービットさん。」


 プロジェクターに映るオービットの肢体は見ている3人を緊張させた。

 とてもではないが直視できない。


 オービットはそんなことは気付かず、言葉を続ける。


「オーブでいい。こちらもブルと呼ばせてもらう。」


「は、はい、オーブさん。では、実際の接続法ですが、この機械の中がわかると思いますが、接続用発信機がついてるの、解りますか?」


「ああ、はっきりと通信波を出しているのは解る。」


「同じものが、「テレム」発生器にもついてます。それをそちらの接続できる表示機に同調してくれれば大丈夫です。」


「了解した。うん、こいつか。」


 しばしオービックの動きが止まった。と同時にアルクネメたちのアイ・シートに新しいマークが浮かぶ。


「できたぞ、ブル。この切り替え方法はどうすればいい?」


「今までと同じように、イメージを切り替えてください。新機構は視野の「テレム」濃度を三次元に可視化するものです。濃淡を色で表現しているはずです。」


「確認した。青が濃いほど濃度が高いということだな。」


「はい。それと赤い濃度もあると思いますが、それは「魔物」に取り込まれている「テレム」の濃度です。あの化け物を見てください。」


 ミノルフや、オオネスカたちもその言葉に従い、ツインネック・モンストラムを見る。


 ツインネック・モンストラムをの体の中の赤の濃度が徐々に首のほうに集まっていることが分かり、ミノルフの背中に冷たい汗が流れる。


 時間がない。


「続いて、イメージで「テレム」を形作る部品を考えてください。うまくいけば緑色の濃淡が表示されるはずです。」


 マリオネットはブルックスの言うイメージがうまくつかめない。

 試しに自分の武具が作られるところをイメージすると、緑色の表示が現れた。


「これが、「テレム」が壊された後の成分ということでいいのか。」


 ミノルフのアイ・シートに対「魔物」シールド発生器の周りに濃い緑が出現した。


「こちらからモニターできないので、完全に同意はできませんが、そのシールドの周りに緑色が出てきたのであれば、間違いありません。その場所で「テレム」発生器を使用してくれれば、「テレム」の供給は可能です。」


 ミノルフはしばし目をつむり、そして開いた。


「オオネスカチームのメンバーに告げる。これからツインネック・モンストラムに対抗する手段を説明する。」


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