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賢者の哀しみはより深く   作者: 新竹芳
序曲 第4章 「天の恵み」攻防戦 Ⅲ
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第45話 ツインネック・モンストラムの攻撃 Ⅰ

「既に指令のあった通り、あの化け物、正式呼称「ツインネック・モンストラム」に対して反攻に転ずる。アクエリアス別動隊の使用していた対「魔物」シールドをツインネックの周囲に設置。この装置の起動により奴をあの場に足止めする。このシールドは周囲の「テレム」を無効化するため、ツインネックは動けなくなる公算が強いが、我々も同様である。シールド起動後は近づかないように厳に命ずる。当然他の「魔物」たちの襲撃も考慮に入れて行動するように。先に定めたとおり、飛竜隊は各2名ずつで行動してくれ。決して単騎で動かぬように!何か質問は?」


 シリウス別動隊とアクエリアス別動隊に加え、マルス騎士団、ウラヌス騎士団の飛竜隊も参加し、計108騎の飛竜と飛竜のりを集めた。

 機材は50余り。

 これを2騎1チームで作業に当たる。

 残りは上空より監視、および他の「魔物」の掃討である。


 ミノルフとオオネスカは上空監視組である。


 二人の強大な「魔導力」は事が起こったときに一番信用ができるためである。


 ミノルフの作戦説明には誰も異議を通さなかった。


「よし、時間だ。作戦開始!」


 ミノルフの合図で108の飛竜が力強く舞い上がる。

 各々飛竜の尾の根元に対「魔物」シールド発生器が括られている。

 ツインネックの周囲100mにその装置を設置するのだが、基本的には置くだけで、簡易的に地面に固定するためのアンカーを打ち込む程度。

 

 ツインネックが活発に動かれでもしたら、すぐに役立たずになるが、今の動きを見る限り、その心配はなさそうだった。


 「天の恵み」運搬車は、目的の地点までもう1時間もかからないらしい。


 運搬車到着後、「天の恵み」をその運搬車の荷台に移動、固定して、あとはひたすらクワイヨンの外壁まで走り通すだけである。


 言葉では簡単だが、ツインネック・モンストラムを筆頭に、「魔物」達は手を緩めず攻撃してくるだろう。

 その攻撃から「天の恵み」と運搬車を傷一つない姿で送り届けなければならない。

 もし攻撃で破損した場合、その場所に放置するしかない。


 来るまでに1時間、固定作業に1時間、そしてガンジルク山を脱出するのに1時間。

 計3時間を足止めしたいところだ。

 ただしツインネックの遠距離攻撃をさせなければの話だ。


 遠距離攻撃の前兆がわかれば、対応もできるのだが…。


 基本的には、あれだけのエネルギーを貯めるためには「テレム」を多量に必要としている筈である。

 この作戦が成功すれば、あの攻撃を封じ込めるかもしれない。


 ミノルフはあの攻撃をさせない一縷の望みを、この作戦に託していた。


 だが、考え方を変えた場合、違う答えも出てくる。

 ツインネックのこの歩みの遅さは、今まさにその攻撃のために、身体の「テレム」を貯めている最中で、他に「テレム」をまわせなくなっている可能性…。


 飛竜隊の騎士が次々と地上に降り、自分の配置地点に対「魔物」シールド発生器を設置していく。

 そのパートナーとなった騎士はその設置を行っている騎士の近くで、警戒飛行をしている。

 皆、遅滞なく作業を進める。

 騎士たちも、飛竜たちもここで死なせるわけにはいかない。


 ミノルフはそんな彼らに近づこうとする様々な「魔物」、タイガー級、ベア級、パイソン級、リノセロス級を次々と葬る。

 この時点で焼却処分までは対応できなかったが、とりあえずの無力化をしていく。

 オオネスカもミノルフ同様、周りの「魔物」をエンジェルと見事に連携して葬っていった。


 だが、そんな他の「魔物」ではなく、封じ込めようとしているツインネック・モンストラム自身が気付いたようだ。

 重たげに自らの尾を振ろうとし始めた。

 やはり、速さはどうという事はないが、設置されているシールド発生器に触れれば破壊は免れない。


 ミノルフはツインネックの前方に出て、正面から左側の蛇の口元に接近し、ギリギリでペガサスを上昇させた。

 尻尾の動きが止まり、その蛇のような顔がミノルフを追いかけるように上を向く。

 ミノルフは、そこから下降を開始、また蛇の首の前を上方から下方に通過した。


 その瞬間、ミノルフは視界の端で、口の中の赤い石の光が強くなってきていることを察知した。


 それが何を意味するのか?考えるまでもなかった。


「オオネスカ、頼む!やばい!」


 今この時、一番頼りになる騎士の名前を叫んだ。


「はい、ミノルフ司令!」


 すぐさまエンジェルが下降を開始、ミノルフとペガサスのいるツインネックの蛇の近くにぎりぎりのところまで寄った。


「俺と合わせてこいつの下から剣を掬い上げろ。」


 エンジェルがペガサスと息を合わせて蛇首の下にかいくぐるように動く。


 蛇首は二人を完全に無視するように、その首を完全に「天の恵み」に合わせる。


 大きく口を開いた。


「今だ!」


 ミノルフが叫ぶのに合わせて、ミノルフの剣とオオネスカの剣が光る。

 そのまま二人の剣が蛇首の下から打ち付けられた。


「くそ、硬い!」


 二人の剣はかろうじて蛇首の表面に食い込んだだけで、それ以上切り込めない。


 二人はさらに剣に力を込める。


 ペガサスとエンジェルもその二人を押し上げるように上昇しようとした。


 オオネスカは下からの押し上げを感じ、さらに剣に力を流し込む。


 二人の剣がさらにその光の輝きを増す。


 その刹那、二人の剣が蛇首の口の方向を上空に変えるように、掬い上げた。


 ミノルフは剣を上方に上げながら、蛇首の口の中が赤く光ったのを確かに目撃した。


 耳をつんざくような悲鳴にも似た音がミノルフ、オオネスカ、ペガサス、エンジェルを襲った。


 上方に点在した雲が瞬時に消えたのを、驚きの目でオオネスカは見た。


 やはりツインネックの謎の攻撃が「天の恵み」を狙っていたのだ。


 まずい。2射目が放たれる。


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